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年齢で違う「子宮がん」発症のリスクと種類。婦人科検診の重要性について産婦人科医師が解説
一般社団法人日本フェムテック協会(以下、日本フェムテック協会)が、フェムテックやフェムテラシーをテーマにした「ランチタイムウェビナー」を毎週火曜12:00~12:30に定例開催中。今回は、「かかりつけ医をもつことは自分らしく生きる第一歩 ~がん検診のこと、不妊治療や女性特有保険について知ろう~」をピックアップ。
日本フェムテック協会理事の山田奈央子さんを進行役に、同協会理事で産婦人科医師の池袋真さん、保険営業のエキスパート、三浦祐介さんが登壇し、最新事情をふまえた話を聞かせてくれました。前編は池袋さんのお話を紹介します。
Contents 目次
20代から気をつけて!年齢で違う子宮がん。自分のリスクを知ることが大切
山田:まずは池袋先生から、がん検診のことについてお話していただきたいと思います。
池袋:みなさん、市町村のがん検診の項目についてご存じでしょうか? この表は厚生労働省がWebサイトで公開しているものですが、「この年齢の人はこのがん検診を受けてください」というのが決まっています。「この年齢になったらこの病気が増えてくるので注意が必要ですよ」というお知らせになっているんです。
「私は子宮がん検診を受けています」という言葉をときどき聞きますが、子宮がんはおもに子宮頸がんと子宮体がんがあり、一般的に子宮がん検診といわれるのは子宮頸がん検診です。
子宮頸がん検診は、子宮の出口の細胞を採取して行う検査で、図の青い矢印のところをこすって細胞を採取する検査です。それに対して、子宮体がん検診は、子宮の内膜の検査です。不正出血があるような場合に行う検査で、定期的に行う必要はない検査といわれています。ですので子宮がん検診といったら、一般的には子宮頸がん検診だと思ってください。
また、市町村の検診の場合、超音波検査はオプションになっていることが多いので、自分がどんな検査を受けたのか確認しておくといいですね。
この表のように、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんは、かかりやすい年齢が違うので、自分のリスクを考えることが大切です。
子宮頸がんは、基本的に、性交渉後のヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスによる感染が多いといわれ、20~30代くらいが多いんです。
子宮体がんが多いのは40~60代。生理と生理の間に出血があった、閉経かなと思っていたのにまた出血したといった場合には受診するといいですね。
卵巣がんは40代以降に多いといわれています。あまり痛みなどがなく、がんが大きくなってからわかることもあるので、経腟超音波検査というエコーの検査を受けておくと早期発見できるといわれています。
リスクの高い人もそれぞれ違います。
子宮体がんは、妊娠・出産歴がない人、少し体重がある人、高血圧・糖尿病の人、また、乳がんや大腸がんにかかった近親者がいる人はリスクが高くなります。
卵巣がんは、子宮内膜症から悪性転化することがあります。また最近は、初潮年齢が早かったり、出産しなかったりするために昔に比べて生理の回数が増えていて、そのために卵巣がんのリスクが少し上がってきています。
最近は子宮頸がんを予防するワクチンの話を聞くことも多いのではないかと思います。この表は「みんパピ!」というWebサイトのものですが、日本はワクチン接種が少し遅れていて、接種率は1%未満。それに対して先進国では接種率が高く、子宮頸がんの予防が進んできています。海外では男女ともに接種する国もあるんです。男性が接種するようになってきたのは、女性に移さないようにということもあるのですが、男性に罹患が多い中咽頭がん、肛門がん、尖圭コンジローマ(陰部にできものができる性感染症)の予防にもつながるからです。感染前であればワクチンで予防できるので、男女ともに早い段階でワクチン接種するといいですね。
婦人科は怖くない! かかりつけ医をもっておくと安心
そもそも「婦人科に行くのが怖い」という人もいると思うのですが、最近は内診台に乗らない方法もあって、ベッドに寝て診察できることもあります。また、すぐに内診ということはなくて、「今日は問診して、次回、診察しましょうか」といったこともできるので、臆せずに受診してもらいたいですね。
やはり、かかりつけ医がいると安心感がありますよね。ふだんから相談していれば、不調があるときに適切な検査なども提案してもらえますし、それが早期発見につながることもあります。
山田:生理の回数が増えることによって、がんのリスクが高くなるんですね。そういったことを知らない女性も多いのではないでしょうか?
池袋:そうですね。それと、妊娠してはじめて産婦人科を受診するという人が少なくないんです。つまり、妊娠・出産をしない人は、なかなか婦人科を受診するタイミングがないということなんですよね。
山田:女性からすると「何か症状がないと受診しづらい」というのもあります。
池袋:そうですね。最近は、親子で受診されるケースもありますね。それで、お母さんから「娘の生理がちょっと重いみたいで」といった相談を受けたり。ほかには、健康診断の結果を持参されるケースなどもあって、その数値を見て、気をつけたほうがいい点をアドバイスしたり、追加の検査をしたりということもあります。
山田:すごくいいですね。海外では健康診断を受けたり、婦人科を受診したりする人が多いようですが、日本は少ないですよね?
池袋:海外では10代の子どもたちが相談しやすいユースクリニックのようなものがあったり、性教育が早かったりするんですよね。日本はそういう話がタブー視されていた時代もありましたから。欧米では、小さいころから性についての教育を受けたり、家族で話し合う機会が多かったりしますよね。お父さんが生理用品を買ってくるという家庭があったりして、家族みんなが気持ちよく過ごせるようにディスカッションするのも日常的なので、健康のリスクも自覚しやすいんじゃないかなと思います。
山田:どうしたら日本の家庭もそういう話ができるようになると思いますか?
池袋:最近は、性の健康をテーマにしたテレビ番組なども見るようになりましたが、お父さんなんかはちょっとはずかしさもあると思うんです。自分の娘を見て「今日はちょっと体がつらいのかな」と思ったとき、何をしてあげたらいいかわからなかったら、少しおしゃべりして最初のきっかけを作ってみるのがいいんじゃないかなと思います。
できる範囲のことをお互いに助け合っていく。それをまず家族にすると、友だちにもできるようになって、職場でもできるようになる。社会でもできるようになって、というふうに広がっていくと、性別にかかわらずみんなが過ごしやすくなるんじゃないかなと思います。
山田:ピルについても、うかがっていいですか? 池袋先生は低用量ピルについてはどう思われますか?
池袋:比較的よく処方しますね。ピルを使いづらい体質の人もいるので事前に検査なども必要ですが、最近は、高校生が、最初は家族と受診して、そのあとはひとりでピルをもらいにくるということもめずらしくありません。私はいい薬だと思っています。ピルは、種類も値段もいろいろなものがあるんですよ。なので、年齢をはじめ、スポーツ選手、PMSなど患者さんの背景を考えて処方しています。
山田:そうなんですね。先日、大学生から「ピルを使ってみたいけれど費用が心配」「母に相談したら『なんでピルなんて飲むの』と言われてしまった」という話を聞いたんです。でも、年齢や状況に合わせて提案してもらえるならいいですよね。そういうことも、かかりつけ医がいると相談しやすいですね。
前編は、ここまで。後編は、保険営業のエキスパートの三浦祐介さんによる女性特有の保険についての話をうかがいます。後編もお楽しみに!
【登壇者】
池袋真 日本フェムテック協会理事、女性医療クリニックLUNAグループ産婦人科医師。
三浦祐介 保険代理店・株式会社ホロスプランニング。ファイナンシャルプランナー。
山田奈央子 日本フェムテック協会代表理事、シルキースタイル代表取締役。
【クレジット/協力】
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文/小高 希久恵