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キャリア形成とヘルスケアは人生の両輪! 重要性と関りについてキャリアコンサルタントと医師がトーク
一般社団法人日本フェムテック協会(以下、日本フェムテック協会)が、フェムテックやフェムテラシーをテーマにした「ランチタイムウェビナー」を毎週火曜12:00~12:30に定例開催中。今回は、そのアーカイブの中から、「ヘルスケアはキャリア形成の鍵!~医師とキャリアコンサルタントから学ぶ~」に注目! 女性のキャリアと健康問題について、日本フェムテック協会理事の市川美和さんと、同じく日本フェムテック協会理事で女性泌尿器科医の関口由紀さんによるトークがくり広げられました。
Contents 目次
時代の変化とともにキャリアに対する考え方も大きく変化
関口:市川さんはキャリアコンサルタントですが、どういうことをする仕事なんですか?
市川:働く人たちを支援する仕事です。具体的には、働く人の職業の選択や、どうやって自分の仕事を作っていくか、どうやってスキルアップしていったらいいのかといったことについて相談に乗り、助言やバックアップを行います。
関口:仕事=キャリアということなんですか?
市川:キャリアというと、キャリアアップとか、バリバリ働くことをイメージされることが多いんですけれど、そうではなくて、「働くことを通じて得られるあらゆる経験のすべてがキャリア」という考え方なんです。なので、自分らしい働き方について考えることはもちろん、それを達成するためにどんなスキルや経験が必要か、会社や家族とどううまくやっていくか、人脈や仲間をどう広げていくかといったところも含めてキャリアと考えます。単に仕事だけを考えていたのではうまくいかないということなんです。
関口:最近、その「キャリア」に注目が集まっていると聞きました。
市川:いまだかつてないほどキャリアに注目が集まっているといえますね。それは、時代の変化がすごくて、会社に自分のキャリアを預けておけば安心、という時代ではなくなってきたというところが大きいですね。現代は「VUCA(ブーカ)」だといわれているんですけど、正解がないし、過去の成功体験は通用しないし、世界レベルで未経験なことが起きるし、AIのような変化も起きてくる。そんななかでよりよく働くというのはなかなか難しいですよね。これは働く人を支援する人が必要だよねということでキャリアコンサルタントを増やそうという流れになっています。
もう少し具体的にキャリアに対する考え方がどう変わってきているかということをお話しすると、働く個人なら、会社の中で役職を上げていくことだけを目指すのではなく、達成感ややりがいを感じられる、自分らしい働き方を目指す自律型キャリアへと変わってきています。
企業のほうも、社員に自社の中だけで活躍してもらうだけでなく、各社員の可能性を広げて、それによって会社の価値も上げていこうという考え方に変わってきています。世界に目を向けると、アメリカでは、企業の評価には経営の数字だけでなく、その会社で働く人たちの能力も重要だということで、人材に関する情報の開示が義務化されています。そんなふうに、とにかく労働者の能力を最大化すること、企業はそれを支援していきましょうという世の中になってきているんです。
関口:そういう話を聞くと、「ぼーっとしていないで集中して働け」と言われているような気もしてしまうけれど(笑)。そうではなくて、基本的に人間は楽しいことをすると労働生産性が上がるし集中もできるから、それを企業が支援しようという動き、ということですね。
市川:そのとおりです。最近は「好き」「得意」「需要がある」「お金になる(稼げる)」、この4つが重なるものこそが生きがいであるという「イキガイチャート」という考え方があります。その重なりを目指していこう、重ならないなら重なるように工夫していこうというのが今のキャリア支援の形だと思っています。
働く女性として健康について気になることを関口医師に質問
市川:いろいろ仕事をしてきたなかで、健康について気になっていることを質問させてください。ひとつ目は、婦人科と女性泌尿器科、どちらに行けばいいのかということ。働く女性は、かかりつけというか、相談に行く先を持ったほうがいいと思うのですが、どういうときにどちらに行けばいいのでしょうか?
関口:もともと婦人科は子宮と卵巣、泌尿器科は膀胱と腎臓を診てきました。女性が閉経したあたりから起こる尿もれや頻尿といったトラブルは、多くは骨盤底という臓器の不具合から起こるのですが、昔は寿命が短かったので悩む人があまりいなかったんです。それと、尿もれや頻尿で命を落とす人はまずいないので放置されていたというところもあります。なので新しく、女性泌尿器科ができたのは人間が長生きするようになったからといっても過言ではありません。
また、時代とともに、生命だけでなく生活の質(QOL)も重要視されるようになってきて、積極的に治療が行われるようになったからともいえますね。そういった経緯があるので、泌尿器科のほうが患者さんの年齢が高い傾向があります。私のクリニックは婦人科も女性泌尿器科もあるので、最初は50歳未満の閉経前の人たちは婦人科、50歳以上の人は泌尿器科が診て、症状しだいで適した科にまわすことが多いですね。
市川:ということは、どちらが入り口でもいいということですよね。
関口:どちらでもいいんだけれど、「QOLは非常に重要だ」という発想を持たない医者もまだまだいるので、「そんなの病気じゃないよ」なんて言われて傷ついたりするケースもあるんですよ。私は、そこであきめずに2か所め、3か所めに行ってほしいと思いますね。それと、医療に関する情報をつかむ力、その情報の正誤を認識する能力も必要ですね。先ほどのキャリアの話と同じで、健康に関しても自分が生きるために何を選んでいくかということが重要。健康もキャリアも人生の両輪として大切だと思います。
市川:もうひとつの質問は、体調の悪そうな相手への伝え方です。私が会社で自分のチームを持っていたとき、体調が悪そうな部下がいたんです。更年期症状なんじゃないかな、病院に行ってみたらいいんじゃないかなと思って、面談のときにちょっと言ったら、「えっ、私が病気だというんですか」と泣かれてしまったことがあって。それこそ更年期症状だと思ったのですが、伝えるのは難しいと痛感しました。うまく伝えるにはどうしたらいいと思いますか?
関口:更年期やうつ状態のときは過敏性が大きくなって、ネガティブになりがちなので、なかなか難しい。なので、「あなたは」ではなくて、一般論として話すのがいいんじゃないかと思います。一般論も1回では伝わらないので、何度もくり返して相手の頭に残すしかないんです。もともと若いときに女性ホルモンが高めで元気だった人は、女性ホルモンが減るとガクッと元気がなくなって、「こんなの私じゃない」と思ってしまう傾向があります。また、痛いのに痛み止めを飲まない、疲れているのに休まない、冷えているのに温めない、この3つに陥っている人も多いですね。
市川:それは「自分は元気だから」と過信しているということですか?
関口:自分の体の声を聞けていないということですね。歳を重ねると、昔と同じようにはできなくなるんですよ。それを受け入れることが大切。私がおすすめしたいのは、「仕事は量より質」「私は私」と思うようにすること。「やりたいことをやる」「いったん引いてみる」というのもいいですよね。
市川:本当にそうですね。好きなこと、得意なことをやって。
関口:そう。さっき言っていたように、それが、需要があって、お金になることであれば、なおいい。「好きで、得意で、需要があって、お金になる」ってすばらしいですよね。忘れないようにメモしておきます(笑)。今日は私もすごく勉強になりました。
ランチタイムウェビナーは毎週火曜のランチタイムに開催されています。30分間ですがフェムテックやフェムテラシーのヒントになる内容が満載なので要チェック! FYTTEでのレポートも続けていきますのでお楽しみに。
【登壇者】
市川美和 日本フェムテック協会理事、国家資格キャリアコンサルタント。
関口由紀 日本フェムテック協会代表理事、女性医療クリニックLUNAグループ理事長、女性泌尿器科医師。
【クレジット/協力】
一般社団法人 日本フェムテック協会 スペシャルコンテンツ
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文/小高 希久恵