CATEGORY : ヘルスケア |不調
長引く風邪や息切れは肺が弱っているから? 肺を守り、自律神経にも関係する呼吸の重要性を呼吸コンサルタントが解説
咳やのどの痛みが治らない、階段ですぐに息切れする……。そんなとき肺が弱っているのではと心配になりませんか。じつはその原因、「呼吸」が大きく関係しています。空気が乾燥して呼吸器系に不調が出やすいこの季節に、呼吸の重要性と正しい呼吸がもたらす効果について、呼吸コンサルタントの大貫崇(おおぬき たかし)先生に語っていただきました。
Contents 目次
季節が変わってもゆらぎにくい体作りが大切
東洋医学では秋になると空気の乾燥に影響を受けて、肺に変調をきたし咳やのどの痛みなどが現れやすくなると言われています。呼吸の専門家である大貫先生は、肺のダメージと季節的な要因をどのように捉えているでしょうか。
「体と季節は連動しているという考え方もありますが、その関係性を意識しすぎるとむしろストレスになってしまいます。秋だから呼吸器系に不調が現れるのは仕方ないと季節のせいにしないで、季節が変わり気温や湿度がゆらいでも環境の変化に引っ張られない体を作ることが大切です」(大貫崇先生/以下同略)
またコロナ以降、感染から時間が経っても咳が止まらない、疲れやすくなったなどの訴えが増えています。こうした不調と肺の機能低下は関係があるのでしょうか。
「ウイルスなどの異物が肺に到達するまでにはさまざまな”免疫の関門”があり、侵入してきた異物がそこで死滅すれば大事に至りません。肺は免疫組織に守られた臓器なので肺自体の機能低下より、免疫を使えていない状態に問題があると考えています。たとえば鼻呼吸では、吸い込んだ空気は鼻毛、鼻腔や咽頭の粘膜によってウイルスが除去され、さらに空気が体温に近い温度に加温・加湿されて肺に届きます。
一方、口呼吸ではフィルター機能を介さないばかりか、空気が冷たいまま肺に送られるので免疫力が低下して感染症にかかりやすく、なおかつ治りにくくなります。ですから、口呼吸をしない、というのが、環境や季節の変化に引っ張られない体を作る第一歩となります。
もうひとつお伝えしたいことがあります。
コロナ禍ではマスクのおかげで目立たなかったのですが、今では口が空いたまま歩いていたり自転車を漕いでいる人をよく見かけます。また、しゃべっているときの“息継ぎ”が口呼吸になっている人はすごく多いです。ちょっとしたことでも口呼吸になってしまっていたら、体調の変化が起こりやすいですよね。
体調はゆらぐものですが、なるべく限界から離れたところ、ゆらぎの少ない状態で生活できると風邪などのリスクを抑えられます。そのために必要なのが『きほんの呼吸』です」
きほんの呼吸」ができると自律神経が整い、体がラクに!
免疫力がアップする!?
大貫先生が言う「きほんの呼吸」とは、「横隔膜を上下させて息を吸って吐き切る呼吸」です。それは、赤ちゃんのときに誰もが自然に行っていた呼吸のこと。
「最近はさまざまな呼吸メソッドがありますが、効果を感じられないのは、自分のふだんの呼吸がわかっていないからで、じつはそういった基本ができていない人の割合は9割にも上ります。基本ができなければ、アレンジされた呼吸法ができないのは当然。まずは赤ちゃんのころに誰でもできていた、きほんの呼吸に立ち返ることから始めてみましょう」
「きほんの呼吸」ができるようになると、体はどのように変化しますか。
「たとえば、呼吸は自律神経と深く関係しています。自律神経は活動時に働く交感神経とリラックス時に働く副交感神経があり、適切に切り替わることで心身のバランスが保たれています。文字通り自律して働くので自分の意思で働きをコントロールできませんが、呼吸だけは唯一自分の意志でもアプローチできるのです。息を吸うときに交感神経、吐くときに副交感神経が優位に働きます。
現代社会では交感神経が優位になりやすいですが、日中、優位になった交感神経に偏ったままで寝るのではなく、自分で副交感神経を優位な状態にスイッチできるニュートラリティーを持つことがベストです。副交感神経にスイッチさせるポイントは、息を吐く時間を長くして呼吸回数を減らすこと。副交感神経が優位になると免疫力が高まり呼吸器疾患の発症リスクも減らせるでしょう。また、口呼吸では吸い込んだ空気で口の中やのどが乾燥し炎症が起きるので、鼻呼吸に切り替えることをおすすめします」
肺を守り秋冬を元気に過ごす第一歩として、ふだん何気なく行っている呼吸に意識を向けてみましょう。次回は「きほんの呼吸」について詳しく解説します!
取材・文/北林あい