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健康はイイ呼吸から! 横隔膜の動きはそもそもわからない!? 呼吸コンサルタントに聞く「きほんの呼吸」の基礎知識
自分はちゃんと息を吐いて、吸えている? 自分の呼吸は浅い、深い? そう聞かれてピンとくる人は少ないかもしれません。今回は当たり前にしている呼吸を深堀してそのしくみを知り、現代人に多い呼吸の問題点もクローズアップ。呼吸コンサルタントの大貫崇(おおぬき たかし)先生が解説します。
記事の最後では、呼吸や肺についての疑問を「コラム」で紹介!
Contents 目次
現代人の約9割が間違った呼吸!? 呼吸はどのように行われる? 適切な呼吸を理解しよう
大貫先生が提唱する「きほんの呼吸」、それは赤ちゃんのころに自然に行っていた呼吸です。しかし大人になる過程で体にさまざまなクセがつき、できなくなってしまうそう。人が本来行うべき呼吸とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。
「肺には筋肉がないので自力では動かせず、周りにある複数の呼吸筋の力を借りて活動します。メインに働くのがドーム状をした横隔膜という呼吸筋。横隔膜は胸膜を通して肺とつながっています。息を吸うときに横隔膜は収縮して下がり、空気が入ってくることで肺がふくらみます。息を吐くときは、横隔膜がリラックスして上がることで、肺に入っていた空気が押し出されていきます」(大貫崇先生/以下同略)
呼吸の約7割を担っていると言われる横隔膜。そのほかに体の前面には胸まわりの大胸筋と小胸筋、お腹の腹直筋、内腹斜筋、腹横筋などが呼吸時に働き、背中の広背筋や脊柱起立筋なども呼吸筋に含まれます。
「横隔膜以外の呼吸筋の立ち位置は、本来であれば呼吸のサポート役です。しかし運動不足や緊張により横隔膜が動きにくいポジションにいたままになると、サポート役の呼吸筋が主役になってしまうくらい稼働してしまいます。そうなるときほんの呼吸に戻ろうとしてもサポート役ががんばってしまい、横隔膜がきちんと機能できる状態に戻れなくなる可能性があります」
呼吸が変わると姿勢も血圧も改善する!?
大貫先生曰く、現代人の約9割は「きほんの呼吸」ができていないといいます。現代人の呼吸の傾向について聞いてみました。
「息を吸いすぎて吐けていない人、が多いですね。横隔膜がずっと吸ったままで下がった状態が続くようになると、息を吐いているつもりでも横隔膜を上げられず吐き切れません。次に吸おうとしても横隔膜は下がったままなのでちょっとしか吸えない。だから浅い呼吸を何度もくり返し、呼吸回数が増えます。この呼吸の人は反り腰、ハト胸になり、反対に猫背、ストレートネックで頭が前に出ている人も多いです。
姿勢の乱れが要因で呼吸の乱れを引き起こしていると考えがちですが、じつは問題のある呼吸に対応するために反り腰や猫背になっているのです。つまり肺に空気が入るスペースを確保しようとした結果、腰を反って胸を引き上げるなどの悪い姿勢になったと考えられます」
長年クセづいた姿勢を直すのは難しいですが、呼吸が改善するとそれにともない姿勢がよくなり腰痛や肩こりも改善の兆しが見えてくるといいます。呼吸がもたらす健康効果はほかにもあるそう。
「横隔膜がきちんと上下するきほんの呼吸に戻り、常に息が吐けている状態になると副交感神経を優位にスイッチできます。すると体の免疫力が上がり風邪を引きにくくなります。また、ゆっくりとした呼吸になることで血圧や心拍数の低下も確認されています。しかし、呼吸が浅くて速い人は口呼吸が多く、その影響で口内が乾燥し、菌の増殖を抑制する唾液が不足するので歯周病になりやすい。症状が悪化すれば心臓疾患や呼吸器疾患を発症するリスクが高まると想像できますよね」
間違った呼吸は万病のもと、といっても過言ではありませんね。次回はイイ呼吸(適切な呼吸)を習得するためのポイントを紹介します。
最後に呼吸に関する疑問を教えてもらいました!
教えて! 肺活量を鍛えると体力や寿命にメリットあるの?
肺活量は息を最大限に吸ったあと、肺にためた息をどれだけ早く強く吐き出せるかで決まります。スパイロメーターという機器を使って測定しますが、「体にとって重要なのは、肺にどれだけ多く空気をためられるかではなく、どれだけ呼吸数を減らせるか」だと大貫先生。
そのためにはろっ骨を下げて横隔膜がリラックスする状態を作り、横隔膜を動かして深くゆっくりと吸って、吐けているかがポイント。肺活量の測定値にとらわれるより、横隔膜以外の呼吸筋を使って浅い呼吸をくり返していないかに注目しましょう。
取材・文/北林あい