これまで2回にわたり体にとって最も自然で効果的な「きほんの呼吸」について解説してきました。今回は適切な呼吸をとり戻す練習、「呼吸エクササイズ」に入る前に、呼吸をするときに気をつけるポイントを呼吸コンサルタントの大貫崇(おおぬき たかし)先生にうかがいました。併せて自分の呼吸の状態も確認しておきましょう。
記事の最後では、酸素カプセルと呼吸についての疑問を紹介!
Contents 目次
呼吸で意識するべき4つのポイント
前回の記事『健康はイイ呼吸から! 横隔膜の動きはそもそもわからない!? 呼吸コンサルタントに聞く「きほんの呼吸」の基礎知識』では、呼吸を見直すと、免疫力が高まり風邪を引きにくくなることや、腰痛や肩こりにも関係していたり、姿勢の変化も期待できたりするとうお話でした。
ここでは「イイ呼吸(適切な呼吸)」に必要な4つのポイントを紹介します。
肺の動きを助けるメインの呼吸筋、横隔膜をちゃんと上下させて吸って吐く。これが本来あるべき呼吸のしかたです。早速実践してみましょう。
最初はできているのか体感するのが難しいかもしれませんが、呼吸に意識してみたり、イメージ、できることから始めてみてください。
1.呼吸数は1分間に10回以下
高齢者を対象に就寝中の呼吸数を測定した研究では、16回以上/1分間になると死亡率が高まることがわかっています。自分の呼吸数を知るには、座位かあお向けになりタイマーをかけて1分間、呼吸数をカウントします。
練習するなら、吐く時間と吸う時間の割合を2:1ぐらいにして、1分間に10回(10秒で1呼吸)を目安にしてみましょう。クリアできたら次は1分間に6回以下を目指してみましょう。
2.ろっ骨を「下げて」息を吐き切る
腹式呼吸と胸式呼吸はどっちが正解? 「息を吐いたらお腹と胸の両方がしぼみ、吸ったら両方ふくらむ」が本来あるべき状態です。あお向けになりお腹と胸に手を置いてまずは胸とお腹が同時にしぼんでいくように息を吐いてみましょう。
3.息を吸ったらお腹と胸は同時に同じだけふくらむ
しっかりと吐き切れていたら、次に吸ったときは胸もお腹も同じようにふくらむはずです。このとき、お腹がぽっこりと前にふくらむのではなく、うしろと横もふくらむのが正解です。
4.口呼吸はNG!鼻呼吸が正解
鼻呼吸では鼻毛や鼻粘膜、免疫機能を持つ上咽頭(鼻の奥、のどの上部にある)でウイルスや細菌がブロックされるほか、吸い込んだ冷たい空気は体温程度に加温されて肺に届けられます。さらに鼻呼吸は口呼吸より圧力をかけて空気を気道に送り込めるため、横隔膜が下がりやすいというメリットがあります。
ろっ骨を見れば横隔膜の動きがわかる!?
次は自分の呼吸の状態、つまり横隔膜がしっかりと上下しているかをチェックしていきます。しかし横隔膜には受容体と呼ばれるセンサーが少なく、伸びているか縮んでいるか自覚するのは難しいといいます。では、どうすればいいのでしょうか。
「横隔膜の動きを見るには、ろっ骨の状態を確認するのが近道です。ろっ骨は息を吸うと上や外側方向に「開いて」、息を吐くと下や内側方向に「閉じて」いきます。ろっ骨と横隔膜はつながっているので、ろっ骨が動かないと横隔膜の機能を制限していることになります」(大貫崇先生/以下同略)
では、自分のろっ骨の状態をチェックする方法を教えてください!
「やり方は簡単です。あお向けになり左右のろっ骨に両手を当てます。ろっ骨がポコッと浮いている、またはみぞおちの三角形の角度が90度以上広がっていたらろっ骨が外側に開いたまま固まっている証拠。この場合、横隔膜が緊張して吸ったままな状態にあるので十分に息を吐き切れない、という状態に陥ってしまいます」
ろっ骨が開いて横隔膜がうまく機能していない人は、次回紹介する「呼吸エクササイズ」にトライしてみましょう。
教えて! 酸素カプセルと呼吸の関係とは?
空気圧を高めた酸素カプセルに入ると、血中酸素濃度が上がり疲労回復やリラックス効果が期待できるといいます。酸素を細胞に運ぶのは赤血球に含まれるヘモグロビンという成分です。注目したいのは、血中の酸素濃度が上がっても二酸化炭素濃度が低いと赤血球と結合した酸素を細胞に引き渡せないということ。
「つまり効率よく酸素を細胞に届けるには、二酸化炭素の耐性を高めることが大切」と大貫先生。
耐性が低いとすぐに二酸化炭素濃度が上がったと判断して、呼吸をして二酸化炭素を排出しようとします。浅く速い呼吸の人は耐性が低い証拠。
「ゆっくりとした呼吸になり二酸化炭素の耐性が上がると、酸素が十分に行き渡り酸素カプセルの効果を実感しやすくなるはずです」
取材・文/北林あい