20代から40代女性の鉄分不足が増えている理由は？ 日本人の鉄分不足の状況

ーはじめにー
2025年 厚生労働省による、「日本人の食事摂取基準 2025年版」の改定を受け、栄養のとり方・栄養素について注目されることが増えつつあります。
糖質制限やプロテインブームなどを経た今、ひとつの栄養素だけを意識するのではなく、個人個人が今の自分に不足し補うべき栄養、過剰な栄養を知ったうえで、栄養のとり方を考えてコーディネートしていくことが大事になるでしょう。

そこで、『FYTTEヘルスケアトレンド2025』のひとつとして「栄養コーディネーション」という新スタイル・キーワードを掲げました。
「鉄分」も大事な栄養素のひとつです。そこで今回、「なんとなく不調」を訴えている女性が年々増えていて、いろいろな要因がある中で「鉄分不足」も影響しているのではないかと考え「鉄」企画を立案。また、鉄入り商品も多く見かけるようになりました。数回に分けて鉄分摂取の基礎知識や新常識についてお届けしていきます！

【日本人の鉄分不足の状況】
日本人女性はほとんどの世代で鉄分が慢性的に不足しがち。なんとなく不調…という女性が増えているようですが、日本人の鉄分不足の状況について教えてください。

「鉄分摂取量については、年齢によって基準とする上限がありましたが、年代限らず、ずいぶん前から鉄分不足の状態が続いている現状があります。

国民の健康の維持・増進、生活習慣病の予防、健康障害の予防を目的とし、エネルギー及び各栄養素の摂取量の基準を示す「日本人の食事摂取基準」が2025年４月から改定され、鉄分摂取量の許容上限量を設定しないことになりました。推奨量を大きく超える鉄の摂取は、貧血の治療などを目的とした場合を除き控えるべきである」としています。

しかし、日本人の現状は、鉄摂取量が慢性的に不足している状況です。考えられる理由として日本人の鉄摂取に関しての意識不足や鉄摂取率が最も多い植物性の食材は、育てる土壌に鉄が少なく、鉄含有量の少ないことなど鉄分をとりにくい状況にあります。

たとえば、諸外国（アメリカなど）では小麦粉に鉄を入れるなどをして鉄分補給を行っているのです（小麦粉強化を義務付けている国の数は2004年の33か国から2007年には54か国に増加）が、日本はそのような対応を行っていないため、鉄不足が多いのが現状です」（川口先生、以下同略）

【20代から40代女性の鉄分不足が増えている理由は？】
最近「なんとなく不調」を感じている女性が多いように感じています。だるいなどの不調と鉄分不足には関係があるのでしょうか？　月経のある女性やスポーツ（運動）を行う際の鉄分の重要性などについても教えてください。

「女性の20～40代は月経で鉄を排泄してしまいます（約30mg/月）。その分の量を食事から摂取するのは意識してとろうとしなければ難しいです。また、意識して食品から鉄を摂取しようとしても、野菜や海藻類に含まれている鉄の吸収率は低く、体内で使われる量が多いので、どうしても日本人は鉄不足になりやすいんです。

さらに、近年では温暖化で汗をかくことが増えていますよね。ミネラル（鉄）は汗によって流れてしまいます。汗をかくときは、ビタミンやミネラルを補給するためスポーツドリンクなどをとりますが、その中に鉄が含まれている商品は少ないので補いにくいですね。

学校では、女性は月経があるから気をつけましょうとか、スポーツをしている人はパフォーマンスが落ちるからとりましょう、と学びますが、普通の人は鉄に関する知識と意識が低いため、積極的に鉄をとるのは難しい状況だと思います」

「隠れ貧血」になるとどうなるの？ 症状やリスクを教えて！

とくに女性は毎月の月経により鉄分不足になりやすいと思うのですが、鉄分が不足するとは、どのような状況なのでしょうか。「隠れ貧血」についても教えてください。

「鉄分が足りていない状況＝鉄欠乏になっても、自覚症状がないことがほとんどです。日常生活の中で少しずつ鉄分が足りていない状況が続き、変化した体を敏感に感じにくく、今の状態に慣れてしまうために気づきにくいのが特徴です。気付いたとき（自覚したとき）には、機能している鉄や体内で貯蔵されている鉄（フェリチン鉄）も欠乏した状態です。そうなると、病院に行って鉄剤を処方してもらう必要があります。貧血を自覚したときに、ようやく異常に気づくことが多いのですが、その時点では体に中に鉄の貯蔵が底をついて欠乏症と診断されます。

“隠れ貧血”とは、機能している鉄（ヘモグロビン/酸素を運ぶ鉄）は働いているものの、摂取量や吸収率の低下、排泄の増加により貯蔵鉄（フェリチン鉄）が不足している状態をいいます。

銀行の預金に例えて考えるとわかりやすいです。お財布にお金があるからと知らない間に使い続けているうちに、じつは少しずつ鉄貯金を削りながら生活していて、気づいたら空になっているイメージです。そうなると、注射や薬の処方など外部からのサポートが必要になります。

そのまま生活を続けていると機能している鉄（ヘモグロビンの量）も少しずつ減ってしまい、不調として症状が現れることがあります。鉄は意識しないと摂取できない栄養素ですので、鉄分摂取の重要性を知って、自覚症状が出る前に対策していただきたいです」

日常生活の中で「疲れやすい、だるい、イライラする、めまいがする…」といった漠然とした不調を感じるなら、「隠れ貧血」かもしれませんね！　このような自覚症状がなくても女性は月経により圧倒的に鉄が不足しがちなので、意識してとる必要がありそうです！

次回は、「女性の悩み（冷えや体がだるい、イライラなど）と鉄の関係や具体的な症状」について川口先生に教えていただきます。

取材・文／FYTTE編集部