
今年の夏は暑くて長い! 厳しい残暑で「蓄積型熱中症・残暑バテ・夏冷え」による不調が起こりやすく、感染症にもかかりやすい状態。そんなときは、水分保持力のある「ヨーグルト」がおすすめなのだそう。そこで、熱中症や栄養管理に詳しい医師の谷口 英喜先生に対策法を教えてもらいました。ヨーグルトのアレンジレシピもご紹介。
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長引く残暑「蓄積型熱中症・残暑バテ・夏冷え」による不調に要注意
気象庁の3か月予報によると、地球温暖化の影響などもあり、10月上旬ころまでは全国的に暖かい空気に覆われやすく、気温の高い状態が続く予報。
また、残暑が厳しい今の時期は、暑さに加えて変わりやすい天気にも注意が必要になります。
長引く残暑に、天気の影響も加わると、体にかかる負担もより過酷になり、引き続き体調管理などの対策が必要ですね。
今回は、猛暑対策や栄養管理に詳しい医師 谷口英喜先生にこの時期に気をつけたい3つの不調と、その対策法について教えていただきました。
「蓄積型熱中症」「残暑バテ」「夏冷え」に気をつけて!
「残暑が厳しい時期は、蓄積型熱中症・残暑バテ・夏冷えに注意が必要です。さらに体力低下と免疫力低下により感染症を引き起こす可能性もあります」(谷口先生)
●蓄積型熱中症とは?
暑さによる疲労や水分不足などの原因が「蓄積」すると発症します。体の熱感(ほてり)が数日間続く、全身のだるさや疲労感・頭痛・食欲不振・不眠・めまいなどの症状が出たら「蓄積型熱中症」かもしれません。通常の熱中症と比べ、気づかずに重症化するケースも多いため、日ごろから対策をとっておくことが重要です。
【対策】体内の水分保持効果を高めることが予防のカギ!
「蓄積型熱中症」には、こまめな水分補給に加え、十分な栄養と睡眠、シャワーで済まさず湯船につかり発汗を促すことで、体温調節の力を高めることが大切です。
ただし、水分補給をしても、すぐに尿として排出されてしまうため、補給した水分を保持する“体内の水分保持力”をふだんから高めておくことも重要。
つまり、水分保持効果の高い食品を食べることが、蓄積型熱中症の予防になります。 水分保持効果の高い食品として、ヨーグルトがおすすめです。
ヨーグルトは80%※1以上が水分なので、食べるだけで水分補給効果があることに加え、ヨーグルトに含まれる「乳たんぱく質」を糖質などの炭水化物と一緒にとると、血管中の水分を保持する「アルブミン」というたんぱく質の合成を促進します。「アルブミン」が増えることで、血管内に水分を多く蓄えることができ、長引く残暑の熱中症や脱水症の予防にも効果的です ※2。
●残暑バテ
これまで蓄積した暑さによる脱水症・消化機能の低下・食欲不振など、夏の暑さに慣れたころに起こる不調を「残暑バテ」と言います。残暑バテには気象状況とも関連があり、季節の変わり目に発生する「台風」による気圧の乱れなど、急激な気候の変化を伴うため、自律神経やホルモンバランスが乱れやすく「残暑バテ」が起こりやすくなります。
対策をせず放置すると、免疫機能も低下し、感染症にかかりやすい状態に。
【対策】腸内環境を整えて、自律神経の乱れを改善!
ヨーグルトに含まれる乳酸菌が腸内環境を整え、善玉菌が増えることによって免疫機能の維持・向上につながります。 自律神経を整えるための適度な発汗が促され、体温調節機能が高まることで体内に熱がこもりにくくなります。
風邪やインフルエンザが流行する冬に向けて「残暑バテ」を放置せず、しっかりとリセットして体調を整え、冬に備えましょう!
●夏冷え
「エアコン病」とも呼ばれるのが「夏冷え」。エアコンの効いた環境下で長時間過ごすことで、血流が悪くなり、お腹や手足の指先が急激に冷えてしまいます。また、日光を浴びる機会が減り、外気にあまりふれなくなるため、1日の変化や季節を感じにくくなり、自律神経やホルモンバランスにも悪影響を及ぼす可能性があります。
【対策】血流の改善、体温を上げる!
ヨーグルトに含まれる「乳たんぱく質」を糖質などの炭水化物と一緒にとると、体内で「アルブミン」というたんぱく質が増加。「アルブミン」が増えることで、血流が増え、手足の指先まで血流が行き渡り、体温も上げるため、※2 末端の冷えとり効果も期待できます。
ただし、「アルブミン」はすぐには合成されず、たんぱく質を摂取してから数日かかります。従って、継続的にヨーグルトをとることをおすすめします。
※1 文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」よりヨーグルト100g中の水分
※2 出典:「Goto et al., JAP, 2010」、「Okazaki et al., JAP, 2009」
ヨーグルトで対策。毎日継続して食べよう!
「蓄積型熱中症」「残暑バテ」「夏冷え」の3つ不調を防ぐには、体内の水分保持効果を高めることが予防のカギ。そこでおすすめなのが「ヨーグルト」! 80%以上が水分であるヨーグルトは、体内の水分保持力にもすぐれています。また、血管中の水分を保持するたんぱく質「アルブミン」を合成することで、血流改善効果も期待できます。
食べるタイミングは、朝夜の2回。
食べきりサイズ1パック(100g程度)を、1日に1~2パック継続して食べるのが理想的です。
そのまま食べるもよし、料理にアレンジしてほかの栄養素と一緒にいただくのもおすすめです。
残暑バテにおすすめ。ヨーグルトのアレンジレシピ3つ
【りんごのケーキ ~ヨーグルトクリーム~】
<栄養価 1/6切れ分>
エネルギー 208kcal/たんぱく質 4.0g/カルシウム 72mg/食塩相当量 0.2g/コレステロール 55mg/脂質 8.8g
<材料 1枚分>
りんご 小1個
レモン汁 大さじ1
【A】
薄力粉 80g
スキムミルク 大さじ3
ベーキングパウダー 小さじ1/2
バター(生地用) 10g
卵 1個
砂糖 40g
バニラエッセンス 少々
サラダ油 小さじ1
バター 10g
生クリーム 50ml
砂糖 大さじ1 1/2
プレーンヨーグルト 100g
<作り方>
1.(下準備)りんごは皮と芯を除き、6つ割にして2~3mm厚さのいちょう切りにし、レモン汁をかける。【A】を混ぜ合わせておく。
2.バター(生地用)は湯煎で溶かす。ボウルに卵を割りほぐし、砂糖を加えて白っぽくなるまで混ぜ合わせ、【A】と溶かしたバター、バニラエッセンスを加えてさっくり混ぜ、りんごを加えてさらに混ぜる。
3.フライパンを熱し、サラダ油、バター10gを溶かす。2の生地を流し入れ、表面を平らにしてふたをし、焦げやすいので弱火にして10分焼く。表面が乾いてきたら裏返して5分ぐらい焼く。
4.生クリームに砂糖を加え、とろみがつくまで泡立て、ヨーグルトを混ぜてなめらかなソースにする。切り分けた3にかけて完成。
※「日本乳業協会レシピ 」より
【夏野菜とフルーツのサラダ 水切りヨーグルト添え】
調理時間:15分
<栄養価 1人分>
エネルギー 69kcal/たんぱく質 2.4g/カルシウム 73mg/食塩相当量 1.3g
<材料 4人分>
ヨーグルト 200g
塩 小さじ1/2
リーフレタス 2~3枚程度
トマト 70g
きゅうり 70g
グレープフルーツ(ホワイト) 150g
【A】
ホエイ(ヨーグルトの水切り時に出たもの) 大さじ1
グレープフルーツ果汁(皮をむいたときに出たもの) 大さじ2
はちみつ 小さじ1
オリーブ油 大さじ1/2
塩 小さじ1/3
こしょう 小さじ1/4
<作り方>
1.(下準備)ヨーグルトは塩小さじ1/2をよく混ぜてから、冷蔵庫で約1日かけてしっかりと水切りをします。出てきた水分(ホエイ)は捨てずにとっておきましょう。
2.リーフレタスは食べやすいサイズにカットし、きゅうりはななめに薄く切り、トマトも食べやすいサイズにカットする。グレープフルーツは皮をむいてから、ボウルや皿などの上で薄皮を除いてひと房ずつに切り分けます。出てきた果汁はとり分けておきます。
3.【A】を混ぜ合わせてドレッシングを作ります。
4.器に1と2を彩りよく盛りつけます。食べる直前に3をもう一度混ぜ合わせてサラダに回しかけ、水切りヨーグルトを添えて完成。
※「明治の食育 おすすめレシピ 」より
【かんたん♪マシュマロヨーグルトのマンゴーソース】
調理時間:15分
<栄養価 1人分>
エネルギー 255kcal/たんぱく質 5.5g/カルシウム 163mg/食塩相当量 0.2g
*ダイエット中やカロリーが気になる人は、アイスクリームはお好みで。
<材料 4人分>
ドライマンゴー 30g
マシュマロ(ミニタイプ) 60g
ヨーグルト 400g
【A】
冷凍マンゴー 100g
グラニュー糖 小さじ2
レモン汁 小さじ1
バニラアイスクリーム 1個(お好みで/ダイエット中やカロリーを意識している人は控えめに…)
冷凍マンゴー(飾り用) 適量
ミント、またはチャービルなど 適宜
<作り方>
1.(下準備)ドライマンゴーを1cm角に切り、マシュマロと一緒にヨーグルトと混ぜ合わせ、冷蔵庫でひと晩おきます。器は料理を盛りつける前に冷やしておきます。
2.【A】を小鍋に入れて中火にかけます。沸騰してアクが出てきたら取り除き、冷凍マンゴーを木べらなどでつぶしながらとろりとするまで煮詰めたあと、冷ましてから冷蔵庫で冷やしてきます。
3.冷えた器に、1のひと晩おいておいたヨーグルトを具材ごと入れます。
4.3の上に2をのせ、(お好みでアイスをのせて)飾り用の冷凍マンゴーとミントなどを飾って完成。
※「明治の食育 おすすめレシピ 」より
日常生活ではどんな対策をすればいい? 谷口先生に教えてもらいました!
日常生活では、どんな対策を行ったらいいのでしょうか。
谷口先生に教えてもらいました。
エアコン漬けの生活をリセット!
「エアコンの効いた室内で過ごす時間が長いオフィスワーカーやリモートワークの人は、外に出たとき、室内と室外の寒暖差の影響を大きく受けるため、残暑バテになりやすい傾向にあります。また、長時間エアコンに当たり続けていると、夏冷えになる可能性も。
暑さが和らぎ、夏の最盛期ほどエアコンを使わなくて済むようになったら、設定温度を今までよりも2~3度上げてみましょう。(基本、外気よりも3~5度下げるとよいと言われているので、それを目安に温度調整を)また、朝の比較的涼しい時間帯は、外に出て朝日を浴びる・散歩をするなど、外気をとり入れた生活を心がけましょう。外気にふれることで自律神経が刺激され、体の組織の働きが活発化します」
白湯を飲んで自律神経の働きを改善!
「起床後や就寝前に1杯の白湯を飲むと、自律神経の副交感神経が優位になり、リラックス効果が得られます。ほかにも、血流や食欲の改善などにも役立ちます」
仙骨シャワー!
「42度くらいの熱めのシャワーで、お尻にある仙骨(尾骨の上あたり)を強めに1~2分ほど刺激します。交感神経と副交感神経のバランスが整い、手足やお腹の冷え改善にも役立ち、下半身全体が温まり、便秘解消にも効果的です。
旅先で湯船に浸かれない人や、なかなか湯船に浸かる時間がとれない人はぜひ試してみてください。38~40度のぬるめのお湯に10分ほど浸かって、じわっと汗をかくのもおすすめ」
残暑バテや夏冷えによる疲労を長引かせないように、日ごろからいろいろと対策をしておくのが体調管理のコツ。今回ご紹介したヨーグルトは身近な食材でとり入れやすいですね。また、不調が長引く場合は、別の病気がかくれている可能性も…。心配な人は早めに医療機関を受診することをおすすめします。
■監修者:谷口 英喜先生
済生会横浜市東部病院 患者支援センター長/栄養部担当部長
2016年 済生会横浜市東部病院患者支援センター長に就任。現在は、東京医療保健大学大学院客員教授、慶應義塾大学麻醉科学教室非常勤講師を兼任。専門は麻酔・集中治療、経口補水療法、体液管理、臨床栄養、周術期体液・栄養管理など。脱水症・熱中症・周術期管理の専門家として、テレビ・ラジオなどを中心に多数出演。著書に『熱中症からいのちを守る(2024年、評言社)』などがある。
■協力:一般社団法人日本乳業協会 https://www.nyukyou.jp/
文/FYTTE編集部