
女性ホルモンが低下すると起こる、さまざまな不調。とくに40代以降の更年期世代は気をつけたい。日ごろから意識して予防対策を行っていないと、いつの間にか骨がもろく、骨折しやすい状態に…! そこで整形外科医の矢吹 有里(やぶき ゆり)先生に、女性の骨の健康「骨活」について伺いました。今回は「女性ホルモンと骨密度の関係」についてです。
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女性ホルモンは骨密度を保つカギ!
早速ですが、骨の健康において、女性ホルモンと骨密度の関係について詳しく教えてください。
「生理が始まりホルモンのバランスが整うと、骨は“古い骨を壊す(骨吸収)”と“新しい骨を作る(骨形成)”をくり返すサイクル=骨リモデリングが、女性ホルモン・エストロゲンによってバランスよく保たれます。この状態はおおよそ40歳前後まで続きます。
ところが、加齢とともにエストロゲンの分泌が減少すると、このバランスが崩れ、骨を壊すスピードが速くなり、作るスピードが追いつかなくなってきます。その結果、徐々に骨密度が低下してしまうのです。
とくに閉経前後(日本人女性では平均50歳、その前後10年)に骨密度の減少は加速し、この時期に約20%もの骨量を失うといわれています。つまり、何も対策をしなければ、1年に1~2%ずつ骨密度が減少してしまうのが現実です」(矢吹先生、以下同略)
骨密度の低下を防ぐ対策はあるのでしょうか?
「閉経後に起こる骨粗しょう症の大きな原因は、女性ホルモン(エストロゲン)の減少です。そのため、ホルモン補充療法(HRT)は最も理にかなった治療法のひとつです。ただし、持病や体質によって適応が限られるため、すべての方が受けられるわけではありません。
HRTが難しい場合には、エストロゲンの骨への作用だけを薬にしたもの(SERMと呼ばれる薬剤)や、骨の代謝に直接作用する骨粗しょう症治療薬が選択されます。また、サプリメントとして注目されているエクオール(大豆イソフラボンが腸内細菌によって変換された成分)も、エストロゲンに似た働きを持つとされています。
一方で、治療が必要になる前の“予防”がとても重要です。骨を丈夫に保つためには、適度な運動、カルシウムやたんぱく質を意識した食生活、そして日焼けしない程度に太陽の光を浴びてビタミンDを作ることが基本になります」
更年期・閉経後の骨はどうなる? 骨粗しょう症になやすい人・なりにくい人の特徴
年齢がさらに上がったときの話かもしれませんが、更年期・閉経後は骨や関節にどんな影響がありますか? 起こりやすい症状についてやリスクの高い人の特徴なども教えてください。
「そうですね。骨そのものが大きく変形するのは高齢期になってからですが、更年期や閉経後にまず現れやすいのは関節や筋肉の不調です。エストロゲンには筋肉をしなやかに保ち、軟骨をうるおす作用があるため、その分泌が減ると手のこわばり、関節痛、動かしにくさ、さらには四十肩・五十肩と呼ばれる肩の炎症などが増えてきます。
骨粗しょう症のリスクが高い人の特徴としては、まず遺伝の影響があり、家族に骨粗しょう症の人がいる場合は注意が必要です。また、体格的にはやせ型で筋力が少ない人のほうがリスクが高いとされています。さらに、運動習慣が乏しい人、偏食のある人、そして喫煙や過度の飲酒は重大な危険因子といわれています」
ありがとうございました!
私自身も最近、以前より運動習慣が減ってしまったので、筋力の低下を感じています。骨の健康やアンチエイジングのためにも続けないといけませんね。
続いては、「骨の老化と変形、骨の再生プロセス」や「男性と女性の骨の違い」について教えていただきます!
取材・文/FYTTE編集部