歯周病を遠ざけて、免疫力を上げる、生活習慣パート２

前回は、歯周病が咀嚼や食事と関係があることや、免疫力を上げる食事やとり方、避けたほうがいい食べものなどを教えていただきました。パート２では「腸内環境を整えて免疫力を高める方法」について伺いました。

腸内環境を整えて免疫力を高める「バクテリオセラピー」

バクテリオセラピーという治療法について、あまり聞きなれないという人もいるかもしれません。私自身は聞いたことがあるけれど実際どんな治療をするのか気になっていました。教えてください。

「バクテリオセラピーとは、善玉菌を補給することで体の中の菌バランスを整える医療技術で、病院での治療を妨げることなく、治療効果を高め、病気の再発を防ぐといったメリットがあります。スウェーデンのカロリンスカ医科大学が中心となって開発され、虫歯や歯周病など、口腔内の悪玉菌を抑えるために善玉菌であるLロイテリ菌などのプロバイオティクスを摂取します。これは体質改善を目的とした、手術や投薬に頼らない体にやさしいアプローチです。

プロバイオティクスとは、善玉菌を増やすこと。
十分な量を摂取したときに、ヒトの健康に有益な作用をもたらす生きた微生物のことで、代表的なものに乳酸菌やビフィズス菌があります。
プレバイオティクスとは、善玉菌のエサになるもの。
胃酸で消化されずに大腸に届き、善玉菌（ビフィズス菌など）の栄養源となって、それらの増殖を助ける難消化性の食品成分のことです。オリゴ糖や特定の食物繊維が含まれ、腸内環境を整えるほか、ミネラル吸収促進などの健康効果が期待されます」（石川先生、以下同略）

自宅でも簡単にとり入れることができるのでしょうか。方法を教えてください。

「セルフケアで行う方法としては、善玉菌であるLロイテリ菌のヨーグルトの摂取や薬局、歯科医院などにタブレットタイプや液体、カプセルなどのロイテリ菌が置いてあるので、それらをとり入れるのがおすすめです。

Lロイテリ菌は胃酸や胆汁に強く、毎日摂取することで口から胃・小腸や大腸などすべての消化管に生きたまま定着して集団を作ることが確認されています。ヒトの体にとって有害な悪玉菌を感知したときだけ天然の抗菌物質を産生します。そのため、ヒトにとって有益な菌（ビフィズス菌など）に対しては影響を与えず、特定の悪玉菌だけに反応する性質があります。定着菌をそのまま維持しながら腸内の善玉菌と悪玉菌のバランスを整えることができます。ロイテリ菌がその力を発揮するには「生きている」ことがとても大切です。

また、ロイテリ菌は、カビ菌を除去するだけでなく、リーキーガット修復にも効果があるということが立証されています。このバクテリオセラピーを歯周病治療に用いることは口の中のディスバイオーシスを改善するとともに、腸内のディスバイオーシスをも是正して免疫力をもとに戻してくれるので、効果的な歯周病治療が可能となります」

腸内環境を整えて免疫力を高める「サプリメントの選び方」

続いてはサプリメントについてです。活用している人は多いと思うのですが、いろいろな種類が増えるなか、何をとり入れたらいいのでしょうか。自分に足りない栄養素や効果を期待して選びがちです。選び方のポイントも教えてください。

「現代人は新型栄養失調であるということを知っていますか？
新型栄養失調とは、カロリーは足りているのに、ビタミン、ミネラル（亜鉛、マグネシウム、鉄など）、たんぱく質などの特定の栄養素、とくにビタミンとミネラルが極端に不足している状態のことです。これは、ダイエットによる過激な食事制限、加工食品へのかたより、忙しさからくる手軽な食事への依存など、間違った食生活によって引き起こされます。結果として、疲れやすさ、免疫力の低下、肌荒れ、肩こりなどの体調不良につながります。とくに免疫力の低下により、歯周病が進行するだけでなく全身病やがんになる確率が高くなります。

そこで、基本はマルチビタミン＆ミネラルです。マルチビタミン＆ミネラルで一通り補ってそれでも足りない栄養素を加えて行くというやり方が理にかなっています。
そのあとは、栄養療法を専門に行っている医師、歯科医師、薬剤師、栄養士さんに検査をしてもらい、足りない栄養素を補うことが必要であると思います。

サプリメントは、食事内容を変えるための手助けとして活用することです。ただし、サプリメントに頼りすぎると、長期的には栄養摂取のバランスが崩れることがあります。状況によって短期間にサプリメントを効果的に使って腸内環境を整えるのが正しい使い方です。

例えば、ビフィズス菌や乳酸菌などの人の腸に存在する善玉菌（有用菌）そのものを摂取することで、腸内細菌の相互作用で腸内を善玉菌が住みやすい環境に改善したり、直接善玉菌を増やす効果があります。 同様に、食物繊維やオリゴ糖など、有用菌の“エサ”となるものを摂取することで腸の中の有用菌を元気にして育てる働きがあります。

腸内細菌は、親からもらった細菌なので、サプリメントでとった菌と一致することはほとんどあり得ません。ただし自分のもつ善玉菌のエサになることで、善玉菌を増やしてくれるのでとても効果的に免疫力を回復することができます。

以下のサプリメントの選び方を参考にしてください。
1.信頼できる会社のサプリメントを選ぶ
2.サプリメントでアレルギーになることがあるので注意
3.外国製のサプリメントは要注意（虚偽表示のサプリメントに注意）
4.パッケージ表示を確認して天然成分の多いものを選択する
5.輸入サプリメントは、信頼性のあるサプリメント会社のものを選択する
6.肝臓の悪い人は「ウコン」の大量摂取に気をつける
7.ヒアルロン酸サプリメントは排泄しやすい成分のため、分子量の大きさを確認する
8.サプリメントは、無害ではないことを知っておく
9.ビタミンC、ビタミンDサプリメントで免疫力強化
10.第一選択のサプリメントは、マルチビタミン＆ミネラル

サプリメントの効果は、６か月以上～１年程度の継続が大事です」

ありがとうございました！
バクテリアセラピーは、歯科医院での通院が必要な治療法と思っていましたが、手軽にとり入れられる方法もあるんですね。サプリメントも足りない栄養素や疲労回復効果など目的別に選びたくなりますが、基本となる栄養素にプラスして足りない栄養素を追加するという考えで選ぶことが大切ですね。

次回も、「自宅でできる改善法９つ」パート３についてお届けします。

著書：『歯周病ががんの原因だった 』歯ぐきの腫れに注意！ 歯周病菌が全身に病気をつくる仕組みと自宅でできる回復法 /ユサブル

■取材協力/監修者：石川佳和（いしかわ よしかず）先生
歯科医師、歯学博士、日本補綴歯科学会専門医・指導医 鶴見大学歯学部卒業、同大学大学院修了 鶴見大学歯学部助手（現：助教） 医療法人愛和会桜川歯科医院理事長
Manaka Dental Clinic副医院長
鶴見大学歯学部口腔リハビリテーション補綴学講座非常勤講師 すべての人があたり前に口から食事ができ健康で楽しく長生きできる『健康寿命130歳プロジェクト』主催
１）インプラントと同程度にかめて美しい入れ歯「ミリングアタッチメント金属床義歯」、
２）分子栄養学と血液検査を応用した再発の少ない歯周病治療、歯周統合医療を開発 国際学会でアワード受賞、鶴見大学同窓会論文奨励賞受賞など多くの賞受賞
TOKYO MXTV ドクターズアイほかメディア出演 医科と歯科が協力して治療を行う本来の医科歯科連携を模索して活動中 

取材・文／FYTTE編集部