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歯を残したいならやめて! 歯科医師で歯学博士に聞いた「自律神経が整うと歯周病リスクが減少する!?」

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歯ぎしり、タバコNGのイメージイラスト

日本人の成人約8割が歯周病、またはその予備軍であるといわれている口腔内の病気。進行すると全身病、がんの発症リスクを高めてしまう可能性も…。前回は「冷えと歯周病のリスク」をお届けしました。4回目の今回は「自律神経と歯科の関係」、「歯を残すために、やめること」について歯科医師で歯学博士の石川佳和先生に伺いました。

監修 : FYTTE 編集部

ダイエット専門誌として1989年に雑誌創刊し、2016年よりWEBメディアに。ダイエットはもちろんのこと、ヘルスケア、ビューティなど体の内側からも外側からも美しくかつ健康でいるための体づくりのノウハウを、専門家への取材とともに紹介。“もっと、ずっと、ヘルシーな私”のキャッチフレーズとともに、編集部員も自らさまざまなヘルシーネタを日々お試し中!

Contents 目次

歯周病を遠ざけて、免疫力を上げる、生活習慣パート4

自律神経は体と心の機能を維持している神経で私たちのバランスを保つのにとても大切な機能。自律神経が乱れると調子が崩れて、だるさや頭痛、不眠などの不調を引き起こしますよね。この自律神経は歯科とも関係があるそうです。

そこで今回のテーマは、「自律神経を整えて歯周病の悪化を防止」についてです。

自律神経と歯科の関係性とは? 自律神経を整えると歯周病によいのはなぜ?

歯ぎしりする女性のイラスト

早速ですが、自律神経と歯科の関係性について教えてください。

「2018年に『自律神経のバランスがブラキシズムと睡眠に及ぼす影響』という演題で私が発表した論文があります。自律神経のバランスを整えることで、不眠症を改善し、顎関節症(がくかんせつしょう)の予防法を考察したものです。

自律神経のバランスが乱れると、ストレスの改善ができなくなります。その結果、不眠症に陥り、ストレスを緩和するために歯ぎしり(ブラキシズム)を頻繁に行うようになります。歯ぎしりは寝ている間に、自分の体重の80~100%以上の力を4時間以上継続させるという論文があります。その力は、歯やあご関節に直接作用するので、歯周病を悪化させ、口が開かなくなる顎関節症になります。また、ご存じのように過度なストレスは、全身病の原因でもあるのでストレスの緩和法がとても重要です。

この研究は簡易睡眠計を使用して7日間×各条件ごとに、自律神経の状態と睡眠の状況を測定しました。胃腸ケアをして睡眠ホルモンを生成する食事・運動指導で、自律神経のバランスが整いノンレム睡眠(脳や交感神経、体が休息している状態の眠り)の時間が増加し、あごを保護するスプリント(マウスピース)を装着することであご関節の保護ができたというものです。

ここからわかるのは、自律神経の安定には、胃腸ケアが欠かせないということです。
脳内ホルモンの中でも幸せホルモン(セロトニン)と睡眠ホルモン(メラトニン)は、睡眠に深く関与するのですが、睡眠導入に関与する必須アミノ酸のひとつ(トリプトファン)は、食事から摂取するしかありません。主に食品のたんぱく質に含まれ、体内に入って脳に運ばれたあと、脳内で幸せホルモンに変化し、夜になると睡眠ホルモンに変わり、眠りをサポートします。

この2つの脳内ホルモンを分泌させるための必須アミノ酸を含む食品は、肉類(牛レバー、豚ロースなど)、魚介類(カツオ、マグロなど)豆類(ごま、納豆など)、野菜(ほうれん草、大根など)、果物(バナナ、いちごなど)です。

また、運動をすることでも2つの脳内ホルモンが生成されるので、朝日を浴びてのウォーキングやジョギングが効果的です。1日のリズムを適正に保つための生活を心がけることで、十分に生成されることになります。

この2つの脳内ホルモンの働きは精神を安定させ、間接的に夜の安眠にも関係してくるのです。このホルモンが分泌されると人は眠くなり、自然な眠りがもたらされます。しかし、腸内環境が悪化すると脳内ホルモンの生成に影響を与えるので、睡眠の質が悪くなったり不眠症になったりします。

それに対し、良好な腸内環境では、十分な脳内ホルモンが生成され、眠りの質がよくなります。眠りの質が向上すると、ストレスが緩和され自律神経のバランスがとれるようになります。自律神経を整え、ストレスを緩和するためには運動に加え、正しい食生活による胃腸ケアが大切なのです」(石川先生、以下同略)

自律神経を整えるイメージイラスト

なぜ自律神経を整えると歯周病によいのでしょうか。

「自律神経は、呼吸、心拍、血圧、体温、消化などの体の生命活動を自分の意思とは関係なく自動的にコントロールしている神経系のことで、交感神経と副交感神経に分けられます。交感神経は、活動時に優位に働き、副交感神経は安静時に優位に働くので、それぞれのバランスをとりながら体を最適な状態に保っています。

ストレスなどで交感神経が優位に働くと唾液の分泌が抑制され粘液性(ネバネバした)の唾液を分泌します。そして、口が乾燥した状態になります。これは、体を緊張させることで、口の中を保護するためです。

ところが、この状態が長く続くと歯周病菌にとっては絶好の状態で、唾液が減ることで歯周病菌が増殖しやすくなり、歯周病が悪化します。唾液には、口腔内の清浄を保つ、細菌の活動を抑える、歯ぐきの炎症を抑えるなどの働きがあるため、その機能が低下すると歯周病リスクが高まります。そのため自律神経のバランスをとることで歯周病リスクを減少させることができます」

歯を残すために「タバコ」をやめる!

タバコが歯に悪いイメージイラスト

最後に、歯を失わないためにやめたほうがいいこと、「タバコ」について教えてください。タバコは体の劣化を早め、よくないことと理解していますが、歯や口腔内環境にどのような影響を与えているのでしょうか。

「喫煙は、全身の血管を収縮させ血液の巡りを悪くするので、酸素不足を引き起こし免疫力が低下します。当然、歯肉の血流も悪化させて酸素不足になるとともにネバネバした有害物質が歯につくので歯周病菌が増殖しやすくなります。しかも喫煙により免疫力が低下しているため、歯周病をさらに悪化させ、がんをはじめとした生活習慣病のリスクを増大させます。少量であってもニコチンを含む電子タバコもやめたほうがいいでしょう」

ありがとうございました!
自律神経と歯科の関係性については意外でした。自律神経の役割や機能を紐解いていくと、いろんな臓器との深い関わりがあることが理解できました。唾液分泌が減る理由には、加齢や更年期やホルモンの影響があるのは知っていましたが、自律神経の乱れも関与しているのですね。また、タバコについては、シニア世代まで喫煙しているとなかなかやめることができなくなります。病気を発症する前に、そういった人たちへ禁煙を呼びかけていきたいです。

著書:『歯周病ががんの原因だった 』歯ぐきの腫れに注意! 歯周病菌が全身に病気をつくる仕組みと自宅でできる回復法 /ユサブル

■取材協力/監修者:石川佳和(いしかわ よしかず)先生
歯科医師、歯学博士、日本補綴歯科学会専門医・指導医 鶴見大学歯学部卒業、同大学大学院修了 鶴見大学歯学部助手(現:助教)医療法人愛和会桜川歯科医院理事長
Manaka Dental Clinic副医院長
鶴見大学歯学部口腔リハビリテーション補綴学講座非常勤講師 すべての人があたり前に口から食事ができ健康で楽しく長生きできる『健康寿命130歳プロジェクト』主催
1)インプラントと同程度にかめて美しい入れ歯「ミリングアタッチメント金属床義歯」、
2)分子栄養学と血液検査を応用した再発の少ない歯周病治療、歯周統合医療を開発 国際学会でアワード受賞、鶴見大学同窓会論文奨励賞受賞など多くの賞受賞
TOKYO MXTV ドクターズアイほかメディア出演 医科と歯科が協力して治療を行う本来の医科歯科連携を模索して活動中 

取材・文/FYTTE編集部

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