“風邪は万病のもと”といわれるように、風邪を引いて体の抵抗力が落ちると、細菌などに二次感染を起こすことがあります。注意したい症状について、感染症に詳しい医療法人社団鉄医会理事長・ナビタスクリニック立川の久住英二医師に伺いました。
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4~5日経過して風邪の症状が改善しないときは要注意
「風邪の場合、4~5日で症状が軽快しますが、なかなかよくならない、もしくは悪化しているようなら細菌などの二次感染の可能性があるので、すぐに病院を受診しましょう」とナビタスクリニック立川の久住英二医師は話します。
次のような症状には注意が必要です。
●のどが痛い
→扁桃周囲炎
のどの奥の左右両側にある扁桃がブドウ球菌などの細菌に感染して起こります。のどが腫れ、痛みが強くなり、唾をのみ込むのもつらくなります。こじれると、扁桃の奥に膿がたまり「扁桃周囲膿瘍」の状態になります。想定した起炎菌に効く抗生物質(抗菌剤)で治療します。
●頭痛や歯痛がある、頬が痛む
→副鼻腔炎
鼻の周りの顔の骨の内部には、鼻の穴と繋がった“副鼻腔”という空洞があり、炎症が起こり、膿がたまることがあります。「風邪を引いた後に、上あごの歯が痛んだり、どことはいえないが頭痛がしたり、頬にも痛みを感じたら、副鼻腔炎かもしれません。歯痛がするからといって歯科医院へ行っても原因がわからず、耳鼻科で診断がつくことも多いです」(久住医師)。適切な抗生物質(抗菌剤)で治療します。
●咳が止まらない
→咳ぜん息
細菌による二次感染ではありませんが、風邪によって一過性の気管支炎が起こると、咳ぜん息になる場合があります。「特徴は、昼間より夜眠りについてから咳が強く出ること。咳止めの薬を飲んでも止まらないことが多いです。気管支拡張剤やぜん息の薬で治療します」(久住医師)。
細菌感染症には抗生物質を。でも、風邪で抗生物質を服用してはダメ!
細菌による感染症は、抗生物質(抗菌剤)で治療します。「風邪のときに、細菌による二次感染対策として抗生物質を処方されることもありますが、必要どころか、害悪です。ウイルスには抗生物質は効きません。したがって、風邪のときは抗生物質を服用する必要はない」と久住医師は話します。
「必要のないときに抗生物質を使い過ぎたせいで、近年は耐性菌が増え、本来、治療に抗生物質が必要な感染症に、効く薬がなくなっているのです。肺炎を起こす原因のナンバーワンは肺炎球菌という菌で、本来はペニシリン系の抗生剤がよく効く菌です。この菌もペニシリン耐性菌が増えています。病院にかかったときは、診断名をしっかり聞いて、治療に抗生物質が必要なのかどうかを確かめるようにしましょう」(久住医師)
医師から薬の説明を受けることも、これからは大切かもしれませんね。また、風邪を引いているときは、二次感染を起こさないように、無理をせずに、栄養バランスのとれた食事をして、しっかり眠るように心がけましょう。
取材・文/海老根祐子