風疹が流行しています。2013年の流行以降、感染者は減少していましたが、2018年9月以降、再び増加。アメリカ疾病管理予防センター(CDC)から、日本での風疹流行に対して、渡航注意を呼びかける「Alert Level2」が出される事態にもなっています。
風疹は、基本的には予後のよい感染症ですが、妊婦さんが感染すると、お腹の赤ちゃんにさまざまな影響があることがわかっています。風疹の症状、治療、そして流行を広げないために、私たちにできることを医療法人社団鉄医会理事長・ナビタスクリニック立川の久住英二医師に伺いました。
Contents 目次
風疹はどんな感染症? 妊婦さんへの影響は?
風疹は、風疹ウイルスの感染によって発症します。
●感染経路は?
感染者の咳やくしゃみなどの飛沫を吸い込む飛沫感染、ウイルスがついた手で口や鼻をさわる接触感染です。
●症状は?治療は?
感染後、14~21日間の潜伏期間を経て、発熱、全身に発疹(赤く小さなポツポツ)やリンパ節の腫れといった症状が現れます。発疹は数日で消えますが、子どもに比べて大人のほうが発熱、発疹の時期は長く、関節痛がみられることも多いようです。特効薬はなく、症状をやわらげる対症療法が基本です。
また、妊娠20週頃までの妊婦さんが感染すると、「先天性風疹症候群」といって、お腹の赤ちゃんにさまざまな影響が出ます。今、風疹の流行が問題になっているのは、このためです。
妊婦さんが感染した場合、お腹の赤ちゃんにはどのような影響が出るのでしょうか。
●先天性風疹症候群とは?
先天性心疾患、難聴、白内障が3大症状といわれています。そのほかに、網膜症、小眼球、肝脾腫、血小板減少、糖尿病、発育遅延、精神発達遅延といった症状が出ることもあります。
先天性心疾患、白内障は妊娠3カ月以内で感染すると起こりやすく、難聴の場合は妊娠6か月以内でも起こるとされています。
30~50代の男性は積極的にワクチン接種を
風疹を予防するには、十分な抗体を持っていることが大切です。それにはワクチンを打つことです。妊娠後はワクチン接種を受けられないので、妊活を考える女性は特に早めの対策が重要です。一度、風疹にかかった人はワクチンを接種すれば、抗体ができます。
ウイルスに感染しても、15~30%の割合で症状が出ないこともあり、オフィスや満員電車など、どこで感染するかわからないのが現状です。
「2013年に流行したときは、お母さんは抗体を持っていたけれど、お腹の赤ちゃんが感染していたというケースもありました。妊婦さんや胎児の感染を防ぐには、抗体を持っていない人たちみんながワクチンを打つことが大切です」(久住医師)
今、感染が広がっているのは、妊娠可能年齢の女性のパートナーとなる30~50代の男性。予防接種施策の空白ゾーンで、風疹ワクチンを接種していない人が多いからです。パートナーによって風疹ウイルスが家庭に持ち込まれ、妊婦さんが感染するという事例もあります。
「30~50代男性には、抗体検査の費用を助成している自治体もあるようですが、検査を受けるより、ワクチン接種をしたほうが話は早いですよね。検査を受けて、結果を聞いて、ワクチンを打つとなると3回の通院が必要になり、仕事で多忙な人にはハードルが高い。抗体検査というステップを踏まずに、ワクチン接種のために病院へ行けば1回ですみます」(久住医師)。
せめて妊娠を考えている女性のパートナーや妊婦さんと接する機会が多い人は、ワクチン未接種であれば、積極的に受けたいものです。
そして、感染症対策の基本は、手洗いです。人が集まるところから帰ったら、石けんでの手洗いを徹底しましょう。ウイルスや細菌への抵抗力を高めるためには、バランスの良い食事と十分な睡眠も大切です。