スギ花粉が舞う季節になりました。くしゃみ、鼻水、鼻づまりに、目や肌のかゆみ……つらいですよね。それにしても、どうして毎年、毎年、同じように症状が出てくるのでしょうか。花粉症のしくみについて、アレルギー専門医で花粉症に詳しい、ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック院長の永倉仁史先生に伺いました。
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花粉を“敵”とみなして、免疫システムが作動するのが花粉症
花粉症は、アレルギー疾患の一つ。免疫という体の働きが引き起こすものです。
「免疫は本来体内に侵入した病原菌などの“外敵”を撃退しようとする“体を守る働き”ですが、無害であるはずの侵入者を“外敵”とみなして攻撃してしまうことがあり、それがアレルギー反応です。花粉症でくしゃみや鼻水といった症状が出るのは、免疫が花粉を“外敵”として、攻撃を加えて追い出しているからなのです」(永倉先生)
外敵を攻撃するときに、免疫は「抗体」という専用の武器を作りだします。アレルギーに関わる武器は「IgE抗体」というもので、花粉に対する武器もIgE抗体です。
「IgE抗体は、“肥満細胞”というアレルギー細胞にくっついて、ヒスタミンといったアレルギー物質を作りだします。このヒスタミンが、くしゃみや鼻水、鼻づまりを引き起こします。肥満細胞は、粘膜に多く存在するため、花粉症になると、鼻やのど、目などに症状が出やすいのです」(永倉先生)
(ちなみに、肥満細胞は、肥満や脂肪細胞とは関係がありません。ヒスタミンなどを蓄えた姿が肥満したように見えるため、この名がつけられたといわれています。)
一度、花粉に対するIgE抗体という武器が作られると、いつでも戦闘OKの状態になります。花粉が入ってくる限り、攻撃が続くため、シーズン中はもちろん、また来年、再来年……と症状が続くわけです。
しかし、花粉という外敵が侵入してこなくなれば、IgE抗体という武器の出番もなくなるため、花粉の飛散が収まれば、症状もなくなります。
最近では、この免疫システムにアプローチしてアレルギーを改善しという「舌下免疫療法」という治療法が行われるようになっています。
花粉症はなりやすい体質がある!?
花粉に対するIgE抗体がなければ、花粉症にはなりません。しかし、花粉に対するIgE抗体ができただけでは、花粉症を発症するとは限りません。
「花粉症の発症には、IgE抗体のほかに、ストレス、食生活、清潔すぎる環境、そして花粉の量も関係。これらが許容量を超えたときに発症します。
人によって、生まれ持った体質があり、それはコップに例えることができます。発症に関わる要因が水だとすると、コップが小さく、すぐに水があふれてしまう人は花粉症になりやすく、一方、コップが大きく、水があふれにくい人は花粉症にもなりにくいといえます」(永倉先生)
スギ、ヒノキ以外の花粉にも注意が必要
花粉症を引き起こすのは、スギ・ヒノキ花粉だけではありません。花粉の飛散は、地域によって異なりますが、スギが2月中旬~5月中旬、ヒノキが3月~6月です。もしも、症状がスギ・ヒノキの飛散時期と重ならないようであれば、ほかの花粉が影響している可能性もあります。シラカンバが4月~6月、ブタクサ・ヨモギが8月~10月、イネ科が2月~11月です。いずれにしても、花粉が飛散している時期だけ症状が出るのが花粉症の特徴です。
「アレルギーの原因は、ダニ(ハウスダウスト)など花粉以外にもあります。ダニアレルギーであれば、一年を通して影響を受けます。また、ダニなどほかのアレルギーを持っていると、花粉症を発症しやすいといわれています」(永倉先生)
くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみといった症状があるときには、耳鼻咽喉科などで、血液検査(IgE抗体検査)でアレルギーの原因となる物質を特定し、適切な治療を受けましょう。
取材・文/海老根祐子