肩こりで悩んでいる人は、とっても多いですよね。最近は子どもでも肩こりに悩むというから、まさに日本人の国民病といえるはず。光伸メディカルクリニック院長・医学博士の中村光伸先生の著書『わたしはリバースエイジングドクター』(平成出版)より、肩こりの原因や、肩こりが全身老化を招く理由などをチェックしていきましょう。
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どうして肩こりになるの?
パソコンやスマホを眺める時間が多くなった現代人は、若い人でも首や肩にこりを感じています。放っておくとこりがより強固になって、肩甲骨までガチガチに硬く固まってしまうのだと、中村先生。
「マッサージでほぐしてもすぐに戻ってしまう、こりによって頭まで痛くなってくる…といった自覚があるなら、かなり要注意レベルです。そのとき、肩や首だけでなく全身も悲鳴を上げています。こりは、全身老化を痛みで知らせてくれるひとつのアラームだととらえてください。『湿布でも貼っておこうかな』とのんきに構えている場合ではありません。
肩こりというのは、体の一部が固くなる現象ですが、その原因は全身からきているのです。いくら症状のあるところをもんだり温めたりしても、原因そのものを改善しない限り、根本解決にはならないのです」(中村光伸先生)
それでは、筋肉のしくみや肩こりになる原因を教えていただきましょう。
<ポイント1>筋肉は単体ではなくセットで動く
筋肉というものは伸びたり縮んだりすることで体を動かしています。そして筋肉は、シングルでは動きません。必ずペア(もしくはそれ以上の数)で連動して動くのです。
イメージとして、バレリーナやダンサーが、舞台の上でスッと立っているような姿勢を想像してポーズをとってみてください。美しいデコルテを最後列の観客にまで見せつけるように胸を張り、背すじをスッと伸ばします。
肩の力みを抜いて、なるべく首が長く見えるよう、頭の上から1本の糸でつられているようにしてみてください。
そうすると、胸の筋肉がストレッチされてデコルテにハリが出るのを感じるでしょう。このとき、胸の前面にある「大胸筋」は適切に伸びています。一方で、背中側は、二つの肩甲骨がキュッと寄るように引き締まるのを感じるはずです。そう、前面が伸びれば、背面が収縮する。このようにセットで筋肉は動くのです。そして、ある程度胸が張っていて背中が適度に締まっているこの姿勢のときに、肩も首も正しいポジションに収まります。
<ポイント2>胸と肩、対になる筋肉のバランス悪化で肩こりが起こる
次に肩こりを引き起こす悪い例を挙げます。
スマホを取り出して着信をチェックするポーズをとってみてください。手元をのぞき込むために、少し前かがみの姿勢になります。
そうすると、背中が丸まり、本来体の側面にあるべき肩が、前に入り込むような形になります。そのときの胸の筋肉をチェックしてみてください。力を入れることができず、ゆるんでハリのない状態になっているはずです。当然ながら、その姿勢だとバストは下がって見えます。
さらに、背中や首の背面は緊張して固くなるはずです。胸がゆるみ、背中が固くなる。先ほどのバレリーナやダンサーの場合とは逆のパターンで筋肉が動きます。このとき、首が前に突き出るような形になるので、5kg以上ある頭部の重みが、首や背中にかかってきます。固く張りつめた筋肉に重い負荷がかかり続け、過緊張状態になります。これが肩こりを引き起こします。
<ポイント3>肩こりのある人は、骨盤が後傾する
頭部が前に落ちて不安定になった状態を支えるために、下半身もポジションを変えなければいけなくなるのです。骨盤がうしろに倒れて、上体の重さを支えます。本来、上半身は骨盤の上にまっすぐ乗るようにできているのに、骨盤がうしろに倒れてしまうと、腰も必要以上にカーブしてしまいます。その結果、腰の筋肉が過緊張状態になり、腰痛の原因に。一方で、腰とセットで働いているお腹まわりの筋肉はゆるんでしまうため、お腹がぽっこりと出てしまいます。
<ポイント4>骨盤が後傾すると、下半身がうまく使えず老化する
骨盤の股関節からは、二本の脚がつながっています。骨盤がうしろに倒れてしまうと、脚の裏側の筋肉群(ハムストリングス)がゆるんでしまって働かなくなります。脚をうまく蹴り出せないということは、大股でスタスタと歩いたり、早く走ったりすることができないということです。早く移動しようと気持ちは焦るのに、小走りでしか走れないという人は、骨盤が後傾している確率が高いと考えられます。
そして、大股で歩くときに使う脚やお尻まわりの筋肉は、全身の中でも一番ボリュームのある筋肉群です。うまく歩けないということは、この筋肉群が使えなくなるということ。そもそも、人間の体は加齢によって筋肉がボリュームダウンしていく傾向があるのに、姿勢が悪い人は、それに加速がついて顕著に老けやすくなってしまうのです。
さらには、ひざも曲がる、お尻の位置も下がる、足首もスナップを効かせにくくなるから太くなる、など下半身のプロポーションも変わってきてしまいます。
現代人に必要なのは「ストレッチ」
ひとつの筋肉が縮めば、対になっている筋肉は伸びる。このように、筋肉は、連動して動いています。ところがデスクワークの多い現代人は、胸や前ももなど、体の前面の筋肉が固まってしまって動かない状態になっています。そうすると、対になっている肩や背中、腰の筋肉も緊張しています。
痛みやこりが出やすいのは背面側なので、肩をもんだり、腰を伸ばしたりという対策をとる人が多いのではないでしょうか? まず必要なのは、固まっている部分を伸ばすことです。胸や前ももを伸ばすストレッチを行ってみてください。肩や腰をもむのはそのあとに。マッサージでもみほぐしてもらってもすぐに元に戻ってしまうという人も、ストレッチを習慣にすると、いい状態を保ちやすくなります。
肩こりや腰の痛みに悩んでいる人は、ふだんの姿勢を気にかけながら、ストレッチをとり入れて、全身老化を防いで若々しく健康的な体を目指してみてくださいね。
『わたしはリバースエイジングドクター』(平成出版)
著者:中村光伸
文/FYTTE編集部