治療の前の予防が重視される時代。体に起きた不調に早く気づき、その芽を摘みとることが大切です。呼吸整体師の森田愛子さんの“養生思考”は、呼吸を使って体のSOSを察知し対応する健康法。養生思考は呼吸から始まります。まずはあなたの呼吸の状態を観察してみましょう。森田さんの新著『養生思考を身につける』からお伝えしていきます。
Contents 目次
今の呼吸を確かめてみよう
日常の中で、小さな不調の芽に気づいて摘みとる、それが「養生思考」です。
養生思考を身につけるために私は「呼吸」を使っています。
私が呼吸を使って「養生思考」を身につけようと提案する理由は、呼吸は誰もが1日に3万回もくり返し、文字通り死ぬまでやり続ける活動であり、今の自分の体を反映する鏡のような存在だからです。
呼吸から自分を見つめ直し、そして変えていく。それが可能なのです。
試しに今、椅子に座った状態で体を前屈して、戻ってきてみましょう。
【今の呼吸を確認する】
1 椅子に浅く腰かけて、リラックスします。
2 そのまま力を抜いて上半身をだらりと前に倒します。
できる範囲で前に体を倒せばいいので、 無理に力を入れないようにしましょう。
3 体をもとに戻して 最初の形になります。
このとき、呼吸は自然にどうなっていましたか?
次の3つの中からいちばん近いと思うものを選んでください。
1 前に倒れたとき: 息が止まった
体をもとに戻したとき:息が止まるのがおさまった
2 前に倒れたとき:息を吸った
体をもとに戻したとき:息を吐いた
3 前に倒れたとき:息を吐いた
体をもとに戻したとき:息を吸った
さて、どうでしたか?
じつはこれは呼吸の乱れを簡単にチェックする方法です。
答え合わせをしてみましょう。
1の人は、力み体質
2の人は、かなりひどい力み体質
3の人は、正常
1のように息が止まってしまうというのは、自然の働きが機能しなくなっている状態です。
2は逆転してしまっています。3は自然の働きのままです。
前屈という簡単な動きでしたし、ある程度の方は、3になったのではないでしょうか。この動きで1、2だった人は相当に力み体質がひどいです。
3の場合でも、いついかなるときもそのように自然な働きができているか、ということが大切なのです。たとえば家事をしているとき、人と話しているとき、仕事をしているとき、掃除をしているときは?
それができている割合が高ければ高いほど、不調リスクは減っていきます。
養生思考と治療思考
世の中では、「病気にならないために○○をする」「体に効くから○○を食べる」という考え方がほとんどです。
もちろん不調に悩んでいる状態であれば無理もないですが、私がおすすめするのは、もっと自分の体を知って、自分の体と仲よくするために、呼吸を使うこと。それが私の考える養生思考です。
養生思考でどう体が変わっていくのか、流れをわかりやすくまとめてみました。
1 呼吸を使って、毎日体と対話する (自然な働きの呼吸ができているかどうか)
2 力んだり、息を止めている自分に気づけるようになる
3 体からのSOSを察知して、対応できるようになる
4 力みと息を止める回数が減って、体の負担が減る
5 不調になりにくく、なっても回復しやすい体になる
養生思考とは別に、治療思考という考え方もあります。
その中身と流れを追ってみますので、養生思考とどう異なるか見てみてください。
1 不調や痛みを感じる
2 それに対しての対処のケアをしたり、治療を受ける
3 改善し、再発しないように注意する
4 やがて再発させないための注意を忘れてしまう。もしくは仕事や日々の忙しさの中で気遣うことを忘れてしまう
5 再びケアや治療を受ける
養生思考と治療思考は、どちらが正しくてどちらが間違っているということではありません。
ただ治療思考だけでは、限界を感じることもあるでしょう。日常の中で、不調を大事に至らないうちに解消するには、養生思考を土台に置くことが大切だと私は考えています。
小さな体の変化は、最初のうちは不調として症状にはあらわれません。けれど、それに気づけなかったり、気づいても見て見ぬふりをしてそのまま長く放っておいたらどうなるでしょう。
あるいは、気づくのが遅すぎたら? やがて痛みやこりなどの不調を引き起こしたり、ひいては病につながってしまうかもしれません。
そうなるずっと手前で、日常を変えていこうという考え方が養生思考。
そして、自分の体の小さな変化に気づくために、いちばん確実で頼りになるのが呼吸です。
文/庄司真紀
参考書籍
森田 愛子 (著)『養生思考を身につける – 呼吸のプロが伝える「健康ながいき」のコツ』ワニブックス