力んだり、息を止めたりして、無意識に乱れてしまう呼吸。それが習慣化するとやがて不調を引き寄せることになってしまいます。呼吸に意識を傾け、体の声を聞いてみましょう。「症状が出る前に気づけること、そういう養生思考が大切です」と呼吸整体師の森田愛子さんは話します。前回に引き続き、森田さんの新著『養生思考を身につける』から、養生思考にブレーキをかけてしまう行動や習慣をみていきます。
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呼吸が乱れてしまうと生きるための機能が弱くなる
呼吸が生きる上で必要な酸素を体じゅうに送ってくれていることは、多くの人が知っていますよね。でも、じつは呼吸がもたらしてくれるものは、それだけではありません。
呼吸は、呼吸によるふくらむ、しぼむという力で、体にある200以上の関節をめぐって、血流や体液、リンパ液を循環させてくれています。
息が止まれば、その力が止まり、その循環が滞ってしまうわけですから大変。筋肉や血流、免疫、自律神経など、生きるために必要な機能が弱くなってしまいます。
呼吸が乱れてしまうと、ふくらむ&しぼむのリズムがくずれてしまい、呼吸や血流、体液の循環がうまくいかなくなってしまうのです。
私はよく、呼吸のことを、人に備わっているすばらしい自然治癒力だと表現します。それは先のような背景があるからです。力む、止まる…という呼吸の誤作動が体にいかに負荷をかけるか、おわかりいただけたでしょうか。
ブレーキとなる行動を見直す
深く心地よい呼吸を日常のものにできたら、本当に素晴らしいです。
それにブレーキをかけるものがあります。それは私たちの思い込みです。
養生思考を邪魔してしまうこんな習慣、行動をよくしていませんか。
1 健康情報にふりまわされている
毎日のようにテレビや雑誌は健康をテーマに特集を組み、サプリメントや健康グッズもたくさん手に入れることができますね。
もちろん、自分に合ったものを選んで、それらを利用することを否定しようとは思いません。流行りの健康グッズを試してみてもいいでしょう。ただ、私はもうひとつのことを心がけたほうがよいと思います。
それは、「何をするか」ではなく、「それを通して自分と、体と対話できているかどうか」ということです。
部屋の中でできる自転車のトレーニングの器械(エアロバイク)を購入した方に、こういうアドバイスをしたことがあります。「エアロバイクの効果は脚の筋力をつけたり、心肺機能を上げたりというもの。でもそれだけではなく、毎日やる中で、今日はきついな、今日はなかなかリズムに乗れない。今日は軽く感じる、というように、自分のそのときの状態を把握するためにも使ってください」と。
前者は治療思考、後者は養生思考です。効果だけではなく、こういう視点がとても大切なのです。
2 真面目にしないといけないという思い込み
真面目な方や力みグセの強い方は、頑張って遊ぼうとする、頑張って充実させようとする傾向があります。ごろごろしている自分に罪悪感を持ち、何かしなければという衝動にかられることも少なくありません。
私自身もそういう類の人間ですが、体の求めるままに過ごす日、体の声を従う日を定期的に必ず作ることにしています。
「ここまでやろう」 「これだけはやらなくちゃ」 。
その強い意思が体の声をかき消してしまいます。
3 忙しさに依存している
今、私はがんばっている、充実している・・・と気持ちを高ぶらせる、いわゆるがんばり屋さんタイプです。
がんばるのはいいことですが、この高揚感は意外と危険です。
態度が荒っぽくなるのは力んでいる証拠。
食事のとり方が雑な人もそう。箸やフォークをすごい力で握りしめているかもしれませんし、早食いは呼吸を浅くします。
ただ、当人たちは力んでいることに気づかないかもしれません。よく言うテンションが上がっている状態なのですから。
その興奮が冷めたときに、突然不調が症状としてあらわれるということもよくある話。
自分の呼吸を感じる機会をつくることは、不調を未然に防ぐためにも大切なことです。うまくいっていると感じているときほど、立ち止まって、今の呼吸を感じてみましょう。
心がけひとつでできる呼吸。呼吸に意識を傾け、体の声を聞きましょう。
それが人生の後半戦を健やかに過ごすことにつながっていきます。
文/庄司真紀
参考書籍
森田 愛子 (著)『養生思考を身につける – 呼吸のプロが伝える「健康ながいき」のコツ』ワニブックス