毎日おいしくご飯をいただき、毎朝すっきり排便できてとどこおり知らず♪ そんな日々を送れたらいいけれど、なかなかうまくいきませんよね。何日も便が出なかったりお腹が張ったりいいタイミングでトイレに行けなかったり。食べた分を気持ちよく出すにはどうしたらいい? 「腸活 基本のキ」1回目の今回は、口から入った食べ物が便となって体の外へ出るまでの仕組みについて。おおたけ消化器内科クリニック院長の大竹真一郎先生に伺いました。
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個人差大! 口から入った食べ物が便として出されるまでの時間は30~100時間
口から肛門までは全長約9m、消化管と呼ばれる1本の管でつながっています。口から入った食べ物は、まず歯でかみ砕かれ、食道を通り、胃に運ばれます。この間、1分ほど。
胃に食べ物が入ると、胃酸が分泌されます。胃の収縮活動によって胃酸と食べ物が混ざり合い、食べ物はお粥のようなドロドロの状態に形を変えます。食べ物が胃に入り、なくなるまでの時間は1〜4時間ほど。
次に、食べ物は十二指腸へ運ばれます。十二指腸は25cmほどの長さで、ここにつながる胆嚢や膵臓から分泌された胆汁や膵液が流れこみ、さらなる消化が行われます。
続いて、空腸→回腸へと運ばれていきます。十二指腸、空腸、回腸で構成される小腸では、胃で消化された食べ物を、さらに細かく消化分解し、栄養素を吸収します。小腸は、体の中で最も長い臓器で全長約6m。小腸での消化時間は2〜8時間ほどです。
栄養が吸収されたあとの食べ物のカスは、小腸の外壁にある筋肉の収縮、弛緩によって大腸へ運ばれます。大腸は、盲腸、結腸、直腸で構成され、長さ1.5mほど。ここで水分やミネラルが吸収され、便やガスが作られます。大腸での消化時間は10〜40時間。便が直腸まで下り、いっぱいになると、腸の一部や腹部の筋肉が収縮すると同時に、肛門の筋肉が開いて排出されます。
こうした道のりを経て、口から入った食べ物が体の外へと排出されるわけですが、所用時間トータルで30〜100時間。個人差がとても大きく、便秘がちな人は、体内に5日ほど便がとどまっていることもあります。
腸だけが食べ物の栄養を吸収できる
消化管の中で腸だけが、食べ物の栄養素を吸収する役割を担っています。口から胃までで行われるのは、ほぼ消化まで。これは腸で栄養を吸収しやすいように準備をしているともいえます。
では、腸では、どのように栄養素が吸収されるのでしょう?
「小腸の内側の壁は、500万個ともいわれる絨毛(じゅうもう)でおおわれています。ここから食べ物の栄養素が吸収され、血管を通って全身へ運ばれます。小腸で吸収されなかった食べ物は大腸へ送られますが、大腸にはたくさんの腸内細菌が棲みつき、食物繊維などを消化しながら、その過程で、健康に関わるさまざまな代謝物質を生成。それらを血液にとりこみ、全身に送ることで、健康な体が作られるのです」(大竹先生)
毎日の食事のいちばんの目的は、生命維持に欠かせない栄養を体内に取り入れることです。食べ物の最終消化と栄養の吸収を行う腸は、人が生きていくうえで決して欠かすことのできない、とても重要な器官といえます。
次回は、腸の働きを助ける「腸内細菌」について、大竹先生に詳しく教えてもらいます。
取材・文/野口美奈子 イラスト/黒川ゆかり