片頭痛の場合、誘発因子も症状も、人によってさまざまです。片頭痛に対処できるように、もっと片頭痛への理解を深めましょう。富士通クリニック頭痛外来の五十嵐久佳先生に伺いました。
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「頭痛」だけではない片頭痛の症状
片頭痛の症状は「頭痛」だけではありません。吐き気・おう吐、光・音過敏など、さまざまな症状が出ます。その症状には、いくつかのステージがあり、頭痛の前に「前兆」「予兆」を感じる人もいます。
■キラキラが見える(前兆)
「稲妻のような光が見え、そのキラキラが拡大して、視野の一部が欠けることがあります。これは閃輝暗点(せんきあんてん)と呼ばれ、片頭痛の前兆の代表的なものです。脳の後頭葉の血流の低下が原因です。初めて体験するとびっくりするかもしれませんが、片頭痛の一部で、これ自体は深刻な症状ではありません」(五十嵐先生)
注意しなければならないのは、ピルの服用です。
「閃輝暗点のほか、手足のしびれ、言葉が出にくいなどの前兆がある人は、ピルを飲むと脳梗塞の危険が高まります。さらに、喫煙者は危険性が10倍になるといわれています」(五十嵐先生)。
避妊や婦人科系の病気の治療でピルが必要になった場合は、必ず処方してもらう前に医師に前兆があることを報告しましょう。
■甘いものが食べたくなる(予兆)
「頭痛が起こる前に、甘いものが食べたくなるという人も多いです。チョコレートは片頭痛の誘発因子のひとつですが、じつは、甘いものが食べたくなるという“予兆”のせいで、チョコレートを食べてしまい、その後、片頭痛に移行しているだけではないか、という考え方もあります。つまり、チョコレートが片頭痛を誘発するのではなく、すでにチョコレートを食べているときには、片頭痛が始まっているとも考えられます」(五十嵐先生)
■頭以外の場所が痛む
「予兆として、首の痛みを感じることがあります。これは、片頭痛を起こす三叉神経が頸髄とつながっているためです。また、頭痛に伴い、三叉神経が感覚をつかさどる目の奥や歯も痛むことがあります」(五十嵐先生)
そのほかに、生あくびが出る、イライラする、手足がむくむ、肩がこるといった予兆を感じる人もいます。
「これらの症状は、女性ホルモン、睡眠、食欲、自律神経などをコントロールする脳の視床下部が影響を受けているため。月経前の症状にもよく似ています。こうしたことからも、片頭痛は、視床下部からスタートしているのではないかとも考えられています」(五十嵐先生)
え? これも片頭痛だったの?
「風邪で頭が痛い」「二日酔いで頭が痛い」……誰にでも起こることだと思って受け入れていたことも、じつは、片頭痛持ちの特性かもしれません。
■二日酔いは片頭痛のせい!?
アルコールを飲み過ぎた翌朝、頭が痛くて起きられない……という経験はあるでしょうか。テレビや映画でもおなじみのシーンですが、片頭痛の人は、片頭痛を持たない人よりアルコールで頭痛が起こりやすいと考えられます。
「片頭痛を誘発する食品のナンバーワンがアルコールです。片頭痛の人は飲酒後すぐに頭痛が起こることが多いのですが、二日酔いのときにも頭痛を伴いやすくなります。ウイスキー、焼酎、ウォッカ等の蒸留酒より、ワインや日本酒などの醸造酒のほうが頭痛を起こしやすいとされています。月経前や月経中は、誘発因子が重なってより頭痛を起こしやすい傾向があるようです。
チラミンという物質を含む赤ワインは片頭痛を引き起こすとして知られていますが、誘発因子は、人それぞれ。白ワインで片頭痛が起こる人もいます」(五十嵐先生)
一方、肩こりや首こりが原因の緊張型頭痛は、アルコールでリラックスすると痛みが軽くなることがあるようです。
■胃腸炎でも頭痛。体調不良が「頭痛」になって現れやすい
片頭痛持ちの人は、風邪やウイルス性胃腸炎などでも頭痛が起こることがあります。
「片頭痛持ちの人にとって、頭痛はいわば体調のセンサー。そのため、のど痛やくしゃみ・鼻水が主な症状の風邪や、お腹をこわすウイルス性胃腸炎でも、頭痛が起こる傾向があります」(五十嵐先生)
取材・文/海老根祐子