リアルな人と人とのつながりは生活を楽しくしてくれますが、また一方でケンカをしたりすることもあります。ただ、全体的に言えば、やはり人とつながっていることは人生を豊かにするうえでは欠かせないと言っていいのかもしれません。では、ソーシャルメディアが普及した現在、インターネットでのつながりはどのような影響があるのでしょう? 最近の研究によると、全体的に見てSNSをたくさん利用している人は健康状態がよくなく、幸福度も低くなる傾向があるという研究が出てきており、要注意なのです。
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個人のサイトに実際にアクセスして調査
私たちが幸福に暮らすためには、人とのつながりが大切だと証明している研究はたくさんあります。社会的なつながりが強いと、うつ病などの精神的な病気のリスクが下がり、過度の飲酒といった健康によくない行動が減って、健康によい行動をとる傾向が強くなり、病気や死亡のリスクが全体的に低下することが知られています。
しかし、ソーシャルメディアが普及し、多くの人がそこにかなりの時間を費やすようになった結果、インターネット上のつながりは私たちの幸福にどのような影響を及ぼすようになったのでしょうか。
その影響を調べた研究は数多くありますが、残念ながら結果が一致していません。精神的な問題が増える、現実の人とのつながりが減る、ソーシャルメディア上でほかの人が見せているいい面だけを自分と比べて自尊心が下がり、うつ病につながるなどとする結果があります。一方で、ソーシャルメディアとうつ病に関連性はないとか、逆に社会的支援や現実のつながりが強化されるとする結果も出ています。
そこで、アメリカのカリフォルニア大学などの研究グループは今回、全国を代表する一定の調査パネルを対象として3回(2013〜2015年の毎年)のソーシャルネットワーク調査を行い(5000人以上)、自己申告の身体的および精神的な健康度、人生の満足度、BMIについて、Facebookの利用状況(許可を得て、個人のサイトのデータを調べて客観的に評価しました)と現実の社会的つながりを比較しました。
利用するほど大きな影響
体や心の健康度については1(低)〜4(最高)で点数をつけたほか、生活の満足度は0(最低)〜10(最高)で自己申告の点数をつけてもらいました。
現実の人とのつながりについては友だちとの関係をやはり点数にしています。大切な事柄を話し合う友人を4人まで、自由時間を一緒に過ごす友人を4人まで挙げてもらい、それぞれについて「近さ」を10段階で点数づけするのです。さらに、過去1年間に個人的に会った回数を5段階(毎日〜一度もない)で評価してもらいました。
その上で、Facebookの個人ページからデータを取得。友だちの数、これまでに「いいね」をクリックした回数、リンクをクリックした回数、アップデートの回数などを調べています。
分析した結果、全体的に見て、現実の社会的なつながりは健康度や幸福度にプラスに働いていた一方で、Facebookの利用はマイナスの影響を与えていることがわかったのです。
マイナスに働くポイントは、「いいね」や「ほかのサイトや記事へのリンク」のクリックの数。さらに、自分のFacebookの投稿の回数でした。
例えば、投稿回数は平均的には1週間に1回ほどですが、それが2~3回になると、心の健康度は平均よりも5%ほど低いことがわかりました。
このマイナスの影響の大きさは、現実の社会的つながりによるプラスの影響とほぼ同じかそれより大きいレベルでした。分析結果の確実性も高いことから、ソーシャルメディアの利用を減らして、現実の人とのつながりにもっと力を入れるほうがよいかもしれません。
<参考文献>
Shakya HB, Christakis NA. Association of Facebook Use With Compromised Well-Being: A Longitudinal Study. Am J Epidemiol. 2017;185:203-211. doi: 10.1093/aje/kww189.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28093386
翻訳・執筆/ステラ・メディックス
ステラ・メディックス 専門分野特化型のコンテンツ創出を事業として、医療や健康、食品、美容、アニマルヘルスの領域の執筆・編集・審査監修をサポートしている。代表取締役の星良孝は、東京大学農学部獣医学課程を卒業後、出版社やインターネット企業で医療系コンテンツ事業に従事。2017年に会社設立。
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