ゆううつな気分が続くとき、自然と立ち直ることができればいいですが、そうもいかないこともあります。あまりに何日も続くなら、うつの症状かもしれません。うつ症状になったとき、心の問題ばかりではなく、体の健康にも悪い影響がありそうだと、最近わかってきています。米国の研究グループによると、脳卒中と関係がありそうなのです。
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うつの症状が多かったのは18%
これまでにも、うつ病の人は高血圧、心臓の病気になりやすく、心臓病や脳卒中で亡くなる人が多いとされてきました。ですが、本当にうつ病だとそうした病気になりやすいのかは、まだはっきりとわかっていませんでした。
そんな中で、今年5月、米国フィラデルフィアで開催された第71回米国神経学会議(AAN)で、マイアミ大学などの研究グループがその関係性について発表しました。
研究グループは14年間にわたって米国ニューヨーク州の1104人の男女の追跡調査を行い、うつ病と脳卒中との関係を分析したのです。
研究の最初に、参加者に「うつ病の自己評価尺度(CES-D)」を使って検査をして、うつの症状が多いかどうかを調べました。たとえば、「先週何回くらい悲しくなりましたか」「何をするのも億劫になりましたか」「食欲がなくなることがありましたか」などの質問に答える形で、最大で60点となる点数づけをしたのです。16点以上の場合には「うつ症状が多い」と判定したところ、当てはまったのは18%(198人)でした。
症状が多いほどリスクもアップ
1104人もの対象者は14年以上にわたって追跡されましたが、この間に脳卒中となったのは101人でした。このうち87人は出血のない、血管の中が詰まってしまうタイプの脳卒中(脳梗塞)でした。そのほかの14人は出血するなどして起こるタイプ(脳出血やクモ膜下出血)でした。
こうした結果を分析した結果、研究の最初に「うつ症状が多い」と判定された人は、そうした症状がなかった人に比べて、虚血性脳卒中になるリスクが高くなっていることがわかったのです。計算によると、このタイプの脳卒中を起こす確率が1.75倍になるとわかったのです。
今回の研究では、最初にうつの症状を調べたときに、60点中16点以上で「うつ症状が多い」と判定していますが、このスコアが5ポイント上がるごとに、虚血性脳卒中の確率は12%ずつ高まることもわかりました。うつ症状が悪化するほど、脳卒中につながる可能性があると心配されるのです。
研究グループも指摘しているのですが、うつ病だから必ずしも脳卒中になるわけではありませんが、うつの症状が増えるほどに、脳卒中の危険につながるという結果は見過ごせません。うつの症状があるのではと思うときには、心の健康を保てるようにしたいですが、そればかりではなく、医療機関に相談するなど体の健康にも注意しておくとよさそうです。
<参考文献>
71st AAN ANNUAL MEETING ABSTRACT. Abstract Title: The Association between Elevated Depressive Symptoms and Risk of Incident Ischemic Stroke: the Northern Manhattan Study (NOMAS).
https://www.aan.com/PressRoom/Home/GetDigitalAsset/12897.
Press Release Title: High Number of Depression Symptoms Linked to Increased Risk of Stroke. EMBARGOED FOR RELEASE UNTIL 4 P.M. ET, WEDNESDAY, MARCH 6, 2019. https://www.aan.com/PressRoom/Home/PressRelease/2702.