「腸活」の基本を学ぶ最終回は、腸内環境を整え、腸の働きをよくする生活習慣とエクササイズをご紹介します。毎日の食事だけでなく、生活そのものを見直すことで、効果的に腸にアプローチすることができます。腸を整えるための習慣が、生活全体の改善につながるかも? 腸内環境を整えて便秘を防ぐ方法を、おおたけ消化器内科クリニック院長の大竹真一郎先生に伺いました。
Contents 目次
腸を整える生活習慣
朝、うがいのあとに水を飲む
朝起きたら、まずうがいをし、それからコップ1杯の水を飲むと、腸の活動が活発になり、お通じがスムーズになります。うがいをするのは、体内に悪い菌をとりこまないため。睡眠中は唾液の分泌量が落ち、歯周病菌など体にとってよくない菌が口内に繁殖します。それらをうがいで洗い流し、口の中をキレイにしてから水を飲むのがポイントです。
水を飲み、胃に水分が入ると、腸が刺激されて腸の活動が活発になります。また、水を飲むことで腸内の便に水分がもたらされ、便秘を解消しやすくなります。水分不足は腸内環境を乱す原因になるので、朝の1杯だけでなく、1日に1〜1.5リットルを目標に水を飲むと、腸内環境が整えられます。
朝食をきちんと食べる
腸の働きを活発にするには、1日3食、規則正しく食事をすることも重要。適切なタイミングで食事をすると、腸が便通につながる大ぜん動が促され、お通じがよくなります。特に、大ぜん動が起こりやすい朝、朝食をしっかり食べると、便秘の改善に役立ちます。朝食をゆっくり食べる時間がないときは「コップ1杯の炭酸水+手のひら分のアーモンド」のカンタンメニューが、大竹先生のおすすめ。
「炭酸水の炭酸ガスが胃を刺激し、腸のぜん動運動を促進します。便通をよくするので、便秘がちな人には炭酸水が有効です。また、アーモンドなどのナッツ類は食物繊維が豊富で、腸の働きをサポートする作用があります。そのうえ不飽和脂肪酸や抗酸化作用を持つ栄養素も多く含まれているので、腸のためにはもちろん、全身の健康にもつながります」(大竹先生)
食事面で気をつけたいのは、就寝前の食事。寝る前に食事をすると、交感神経が優位な状態のまま寝ることになります。ところが就寝中は本来、副交感神経が優位になり、その働きによって腸の消化吸収が行われるもの。交感神経が優位なまま寝ると、腸の活動が滞り、便秘を招きやすくなってしまうのです。夕食後は、少なくとも4時間あけて、眠りにつくようにしましょう。
腸を活発にするエクササイズ
ウォーキングで善玉菌を増やす
腸の働きをよくするには、ウォーキングが最適。歩くことで血液の循環がよくなり、腸が温まります。腸が温まると腸内細菌の善玉菌が増え、腸内環境が整えられるのです。また、歩く振動によって、腸のぜん動運動が活発になり、便意が自然ともよおされるように。1日8000歩以上、時間では1時間、距離では5kmほど歩くことを目標に。歩くときには姿勢を意識し、背すじをまっすぐ伸ばし、脚を大きく開いて歩くと効果的です。
「ただし『ウォーキングをしよう!』と意気込んで、ウォーキングシューズやウエアをそろえたり、スポーツクラブに通い始めたりする必要はありません。目標歩数や時間、距離は1日のトータルの数字なので、毎日の生活の中で1駅多く歩いたり、いつもより遠くへランチに出かけたり、エレベーターやエスカレーターではなく階段を使うなど、こまめに実践することが大切です」(大竹先生)
腸管マッサージで便秘解消!
便秘の改善には、腸に直接働きかけるマッサージも効果的。腸は緊張すると動きが鈍くなるので、リラックスした状態で行いましょう。入浴中や入浴後など体が温まった状態で行うのもベター。マッサージ中は腹式呼吸をゆっくりくり返し、お腹から息を吐き、じんわりと押すようにマッサージをすると、腸にアプローチしやすくなります。
●効果的なやり方
1)あお向けになり、ひざを曲げる。お腹の力を抜いてリラックス。
2)大腸の流れにそって、右半身の下の角→右半身の上の角→左半身の上の角→左半身の下の角の順に、時計回りに手を移動させてマッサージ。反対回りにマッサージをすると、便を押し戻すことになるので注意。
腸のぜん動運動を促す腹筋運動
便は、お腹まわりの筋肉の力によって押し出されます。そのため、腹筋力が落ちると便秘がちに。便秘の予防には、ふだんから腹筋を鍛えることが大切。腹筋運動を行うと腹筋の強化に加え、腹部の血行がよくなり、腸の活動が活発になる効果も得られます。
●やり方
1)あお向けになり、ひざを曲げ、頭の下で両手を組む。
2)息を吐きながら、おへそを見るように上半身をゆっくり起こし、息を吸いながらもとの位置に戻す。これを、呼吸とともに10回くり返して。腹筋の力がついてきたら、20回を目標にトライ!
腸にいい生活習慣編とエクササイズ編、いかがでしたか? この機会に生活を見直し、できそうなことを日常生活に取り入れて、健康で元気な腸を目指しましょう!
取材・文/野口美奈子 イラスト/黒川ゆかり
【参考文献】
『恥ずかしがらずに便の話をしよう』佐藤満春:著 大竹真一郎:監修(マイナビ新書)
『腸の「吸収と排出」が健康の10割』大竹真一郎:著(ワニブックス)