ヒトパピローマウイルス(HPV)は、子宮頸がんの原因として重要です。性感染症であるため、感染予防のためにワクチン接種が大切だとされています。このたび英国北部のスコットランドで、12〜13歳の少女に対するヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種により子宮頸部の病変を劇的に減らせるという報告がありました。子宮頸がんの予防につながると考えられています。
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2008年にワクチン接種プログラムを導入
HPV感染は性感染症で、後の子宮頸がんをはじめとしたがんにつながる恐れがあることから、日本も含めて世界中で感染を防ぐためのワクチン接種が行われています。
ワクチン接種は、子宮頸がんの70%を占める最も発がん性の高い「HPV 16」と「HPV18」というタイプのウイルスに対して予防効果があると以前の研究で証明されています。
今回、スコットランドのエジンバラ大学などの研究グループは、スコットランドのデータを使って、子宮頸部の病変を予防する効果について調べました。研究グループによれば、効果についてのデータは多くあるわけではないといいます。スコットランドでは、子宮頸部の検診プログラムを全国的に実施。2008年には12歳と13歳の女子向けのHPVワクチンを定期接種、それを受けられなかった人向けの18歳までの接種の制度を導入していました。
調べられたのは、一般的に行われているワクチンの定期接種(「2価HPVワクチン(HPV 16と18に効果)の接種)による、子宮頸部の異常な細胞と病変(「子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)」と呼ばれます)の数に与える影響です。
ちなみに、がんの一歩手前となる病変の「CIN」にはCIN1、2+、3+の3つの段階があります。数字が高いほど異常細胞または病変が多くなります。この異常が進むと、周囲の組織に広がるがん(浸潤性のがん)になるリスクが高くなってきます。ワクチンによってこうした異常をどれくらい食い止められるかが注目されました。
若いうちのワクチン接種で大きな効果
研究グループは、1988〜1996年に生まれた女性13万8692人のワクチン接種状況と20歳時の検診の記録を調べました。
ワクチン接種プログラムの導入が2008年だったため、1988〜90年に生まれた女性はワクチン接種を受けていませんでした。一方、1991〜1994年に生まれた女性は14〜17歳に接種を受けています。1995〜96年に生まれた女性は12〜13歳に接種を受けていました。
分析の結果、12~13歳に定期接種を受けた女性は受けていない女性に比べて、20歳検診時にCIN 3+の人が89%減少(0.59%に対して0.06%)、CIN 2+は88%減少(1.44%に対して0.17%)、CIN 1は79%減少(0.69%に対して0.15%)となり、全般的に子宮頸部の異常が激減するとわかりました。
若いうちにワクチン接種を受けるほうが、ワクチンの有効性が高いという結果です。12〜13歳にワクチン接種を受けた場合はCIN 3+を予防する効果が86%に対して、17歳にワクチン接種を受けた場合は45%でした。
興味深いのは、ワクチン接種をしていない女性でも病気が減ったこと。感染する人が減ったために、そもそも感染しづらくなったものと見られました。
研究グループは、HPVワクチン接種をすすめる根拠になりそうだとまとめています。日本でもこうした情報は参考となりそうです。
<参考文献>
BMJ. 2019 Apr 3;365:l1161. doi: 10.1136/bmj.l1161.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30944092
Routine HPV vaccination linked to dramatic reduction in cervical disease among young women
https://www.bmj.com/company/newsroom/routine-hpv-vaccination-linked-to-dramatic-reduction-in-cervical-disease-among-young-women/