毎日の歯ブラシは、歯をキレイにして、美しい笑顔を保つために欠かせないもの。もちろん虫歯や歯周病にならないためにも大切。そんな歯磨きが、さらにある病気を防ぐためにも効果があることがわかって注目されています。ノルウェーの研究グループがこのたび発表しました。
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日本でも大きな問題になる歯周病
歯磨きは歯をキレイにするのはもちろん、歯の病気でもある虫歯、歯ぐきの病気である歯周病を防ぐためにも大切です。虫歯も歯周病も、歯や歯ぐきで細菌が増えることで起こる病気。日本でも虫歯や歯周病は大きな問題です。たとえば、日本のデータでも年を重ねるにつれて歯周病を抱える人は増えているとされ、高齢になると半数近くの人が歯周病になっていると見られています。歯を磨くことで、そうした細菌を減らして、歯や歯ぐきが傷むのを防ぐことができるのです。
一方で、このたび研究で対象になったのは、口の中の病気ではありません。ノルウェーの研究グループが注目したのは、一見歯磨きとはまったく関係ないようにも見えるアルツハイマー病。口の中の病気である歯周病とアルツハイマー病との間に関係があるのではないかというのです。
歯周病の影響が脳にも
研究グループは、口の中で増える歯周病の細菌が、脳や神経に悪影響を及ぼしていることを研究により解き明かしたのです。アルツハイマー病になって亡くなった53人の脳を調べたところ、96%の人で脳の中にあるはずのない「酵素」の存在を確認しました。この酵素は脳にダメージを及ぼす作用をもち、歯周病を引き起こす細菌によって作られているもので、歯周病の原因となる細菌が脳にまで行ってしまっている証拠とされています。「この酵素のために、アルツハイマー病の原因とされる異常なたんぱく質が脳に蓄積してしまう可能性がある」と研究グループは考えました。
そのうえで、研究グループは「歯周病を防ぐことによって、アルツハイマー病も避けられる可能性があるのではないか」と説明しています。また、この歯周病の酵素を止めるような薬がアルツハイマー病をブロックする効果を発揮する可能性もあると見ています。まだ研究は続きそうですが、歯磨きをきちんとすることで歯周病を防ぐと、年を重ねて頭の健康にもつながる可能性もあるようです。
<参考文献>
Brush your teeth – Postpone Alzheimer´s
https://www.uib.no/en/med/127507/brush-your-teeth-%E2%80%93-postpone-alzheimer%C2%B4s
Sci Adv. 2019 Jan 23;5(1):eaau3333. doi: 10.1126/sciadv.aau3333. eCollection 2019 Jan.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30746447
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6357742/
文/星良孝