頭痛が起こったときに、市販の鎮痛薬を飲んでやり過ごすという人も多いことでしょう。しかし、片頭痛や緊張型頭痛が起こるたびに鎮痛薬を飲むことで、頭痛がひどくなる場合があります。これを『薬物乱用頭痛』といいます。薬物乱用頭痛について、富士通クリニック頭痛外来の五十嵐久佳先生に伺いました。
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1か月に10日以上、頭痛薬を服用していたら要注意
頭痛が起こる回数が増えている。頭痛薬を飲んでも効かないことが多くなっている……しつこい頭痛の原因は、頭痛薬の飲み過ぎによる「薬物乱用頭痛」かもしれません。
下記の項目にひとつでも当てはまることがあれば、注意が必要です。
□頭痛が1か月に15日以上ある
□頭痛のために頭痛薬を3か月以上定期的に服用している
□早朝に頭痛が起こるなど、頭痛の頻度が増えている
□片頭痛発作が起こる不安から、予防的に頭痛薬を服用している
薬物乱用頭痛は、もともと片頭痛や緊張型頭痛などを抱えている人にみられます。月に10日以上、市販の鎮痛薬、片頭痛の治療薬トリプタン製剤などを服用している場合はハイリスクです。
「特に、片頭痛持ちの人は、大事な日に、『頭痛が起きたらどうしよう』という強い不安感から、予防的に頭痛薬を飲んでしまいがち。その結果、頭痛薬を飲み過ぎてしまう傾向にあります。それを続けていると、頭痛薬が効かなくなり、また頭痛薬を頻繁に飲むことで頭痛が起こりやすくなります。そこで頭痛への不安感が強くなり、さらに薬を飲む回数が増えるという悪循環にも陥りがちです」(五十嵐先生)
頭痛薬を飲みすぎると、痛みに敏感になってしまう
なぜ、頭痛薬の飲み過ぎで、頭痛が悪化してしまうのでしょうか。
「脳が痛みに敏感になるためです。以前までなら何ともなかった少しの刺激でも、痛みを感じるようになってしまい、慢性的に頭痛が起こるようになるのです」(五十嵐先生)
月に15日以上頭痛があり、そのうち8日間は片頭痛の痛み方であれば、『慢性片頭痛』と診断されますが、その多くは頭痛薬の飲み過ぎが原因といわれています。
薬物乱用頭痛かもしれないと思ったら、頭痛外来や脳神経内科などを受診しましょう。治療には、頭痛薬を止めようという「気持ち」が大事だといいます。
「治療の基本は、自分の頭痛が頭痛薬の飲み過ぎが原因であると気づくことです。そして、薬物乱用頭痛を治そうという意思を持つこと。頭痛薬の服用を1週間止めただけで軽快した患者さんもいます。頭痛薬を止めることに不安を感じる場合は、ぜひ専門医を受診してください。薬物乱用頭痛の患者さんには、原因となった薬剤はやめていただきますが、それと同時に予防薬を処方します。予防薬には、痛みに敏感になった脳の状態を元に戻す効果があり、数か月間毎日予防薬を服用することで頭痛の回数が減っていきます」(五十嵐先生)
薬物乱用頭痛は、未然に防げます。頭痛薬を飲む回数は月10日以内にして、予防的に飲むことは避けるようにしましょう。
取材・文/海老根祐子