長時間、同じ姿勢で座りっぱなしでいると健康に悪いのは、みなさんご存じかもしれません。「座りっぱなしのデスクワークが寿命を縮める?」などと気になっている人もいるでしょう。最新研究で、同じ座りっぱなしの状態でも、状況が異なればその健康リスクも変わる可能性があるようです。健康にいちばん悪い「座りっぱなし」は、いったいどの状況なのでしょうか?
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テレビの前と仕事の座りっぱなし、健康との関係は…?
これまで多くの研究で、長時間、同じ姿勢で座りっぱなしでいると、健康に悪影響をおよぼすことが示されてきました。
ただし、これまでの研究では、研究後の健康状態に関するフォローアップが行われていませんでした。また、こうした研究では、身体の活動量を測るためにウェアラブルの活動モニターが使われていますが、どんな状況で過ごしていたかといった詳細な区別ができていませんでした。
このたび新たに、米国の複数の研究機関によって、心臓疾患が多いとされるアフリカ系米国人を対象とした最新の研究が行われ、じつは同じ座りっぱなしの状態でも、状況によって健康リスクが異なるという考え方が新たに提案されました。
約8年6か月もの長い期間行われた、このアフリカ系米国人のみを対象とした今回の研究では、3592人の被験者らに、テレビの前で座りっぱなしだった時間と仕事でデスクに座りっぱなしだった時間、それから運動時間について報告してもらい、ここから異なる状況下での座りっぱなしの状態がもたらす健康リスクについて調べたのです。
同じ座りっぱなしの状態なのに、何が違うの?
するとわかったのは、同じ座っている状態でも、状況によって健康リスクの度合いが異なるということです。テレビの視聴時間が1日4時間以上の被験者は、心疾患の発症や早期死亡のリスクが、視聴時間が2時間以下の被験者より50%も高まっていたのでした。それとは対照的に、1日中デスクに座りっぱなしであった被験者は、それでもテレビの視聴時間が2時間以下の被験者と同じくらいの健康リスクだったそうです。
さらに、テレビの視聴時間が非常に長い被験者も、1日に適度な運動をしている場合、早歩きやエアロビクスなど、適度に心拍数が上がるような運動で、心臓発作や脳卒中、早期死亡のリスクが減っていました。テレビの視聴時間が1日に4時間以上と非常に長い被験者でも、1週間に150分以上運動をしていた場合、心臓発作、脳溢血、または早期死亡の健康リスクは上昇しませんでした。
では、こうした結果はなぜ出たのでしょうか。今回の調査を行った研究チームは、これはおそらく、人がテレビを見るときにはまったく動かないことが多く、一方で、仕事の場合は長時間座っていてもその間あいだで立ち上がって動き回っている、とその違いを指摘しています。
これについての結論を出すには、さらに研究を進める必要性があるそう。でも、テレビを見るのを一旦休憩して、軽く外を散歩したりするだけでも、座りっぱなしの状態から受ける可能性のある健康リスクを減らせる、と研究グループは主張しています。
そしてこれは、テレビだけでなく、仕事に関しても同じだそう。今回のこの研究は、アフリカ系米国人のみを対象としていましたが、人種に関係なく、座りっぱなしになりがちな職業につく人は、意識的に休憩をとり、体を十分に動かすと、やはり健康にメリットがあるといえるようです。
<参考文献>
Heart Risk Raised By Sitting in Front of the TV, Not By Sitting at Work, Study Suggests
https://www.cuimc.columbia.edu/news/heart-risk-raised-sitting-front-tv-not-sitting-work-study-suggests
J Am Heart Assoc. 2019 Jul 2;8(13):e010406. doi: 10.1161/JAHA.118.010406. Epub 2019 Jun 26.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31238767
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/JAHA.118.010406
文/星良孝