高い目標があったり、締め切りがあったりするときは、気持ちが張りつめて、ストレスにもなります。ストレスは、気分が落ち込んだり、不安でふさぎ込んだりするときに感じる一方で、大きな仕事を成し遂げるときなどは、よい効果をもたらしてくれるとも考えられます。米国の心理学会で、著名な心理学者が、そんなストレスの持つメリットについて解説しています。
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ストレスは必ずしも悪いわけではない
米国心理学会の年次大会で、著名心理学者であるリサ・ダムール博士がストレスの効用について発表しています。この中で、ダムール博士は、「ストレスはネガティブだととらえられがちだけれども、必ずしもそうとばかりはいえない」と指摘。ストレスは、その人が能力の限界近くにきているときに働くとして、「自分を一段上に伸ばしてくれるものだ」と解説しました。
さらに、ストレスは悪いできごとと、よいできごとのいずれのシチュエーションでも起こってくるものだと知っておくことが重要だと指摘。ストレスというと、仕事や日常生活のつらいできごとによって起こると考えられがちですが、友人が赤ちゃんを連れてくるようなハッピーなできごとでもストレスになると説明しました。
要するにストレスは、ふだん自分が対応していないような、新しい状況に対応していくときなど、自分をより高いレベルに引き上げるために欠かせないものというわけです。
不安な気持ちも大切
さらに、ダムール博士は、「ストレスと同じように不安も必要以上に悪くとらえられがちなのは問題だ」と説明しています。というのも、ストレスと同じように、不安があるからこそ、自分の内と外の危険に備えられるというのです。
不安は、生きるために欠かせない心の仕組みといいます。「不安を感じることで、自分を守ることができる」とダムール博士。
そのうえで、ストレスも不安も長く続いてしまうときこそ問題になると説明。回復の見込みがなくなったり、あまりに強く心が傷つけられたりした場合、その人が対処しきれなくなってくるといいます。
ダムール博士は、ストレスや不安に対処する方法を身につけるよう推奨。「マインドフルネスのテクニックは有効」と説明しました。
一方で、常にハッピーであるように誘導するようなビジネスの存在について「問題」と指摘。「人は常にハッピーであるべきだと考えるべきではない。そうした考えは不必要であり、危険」と言います。
ストレスと不安は必要なものということを前提にしたうえで、心の問題と向き合うのが大切といえそうです。
<参考文献>
Why Stress and Anxiety Aren’t Always Bad
https://www.apa.org/news/press/releases/2019/08/stress-anxiety