年齢を重ねるに連れて、つい増えてしまいがちな体重。でも早めにダイエットして肥満を防ぐことはやっぱり大事。米国の研究グループが、60代の時点で太っている人は、その後の脳の老化が早いことを突き止めたのです。ダイエットをサボると、脳の老化が通常より10年分も進むという結果に。早めの対処が賢明です。
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脳をMRIで調べてみたところ…
日ごろ運動に取り組む理由は、健康のため、体力を高めるため、運動不足解消、気晴らしなど人によって少しずつ違うのでしょう。たしかに運動を続けると、美容やダイエットのためになりますし、心臓や血管など全身の病気を予防することにもつながってきます。そうした中に、脳の健康を高める効果もあることが少しずつわかってきています。
今回、米国マイアミ大学などの研究グループが肥満の度合いと脳の変化に関係があるのかを調べました。分析のために使ったのは、ニューヨーク州マンハッタン北部の住民を対象にした1289人分の研究のデータ。ウエストやBMIに加えて、脳については、平均およそ6年を空けて、MRI検査による大脳皮質の厚さや脳の体積の変化を測定したのです。
太っているほど灰白質が薄くなる
分析の結果、研究開始時にBMIが高かった人ほど、脳の表面の神経細胞が集まっている「灰白質」が薄くなることがわかりました。こうした影響は、高血圧、飲酒、喫煙など、大脳皮質に影響を与えると考えられている条件によらず、変わりません。つまり、BMIが増えるほどに、灰白質が薄くなっていくという比例の関係が確認されたのです。
灰白質が薄くなると、アルツハイマー病になるリスクが高くなると考えられています。よって肥満によって認知症につながる可能性も高まるといえるかもしれません。ウエストも、灰白質の厚さと同様な関連性が確認されました。
研究グループによると、標準的な老化では、灰白質は10年で0.01〜0.10 mmごとに薄くなるという割合から計算すると、太っていると老化が少なくとも10年分加速することになるといいます。こうした関連性は、65歳未満の人にはっきりと現れていました。
研究グループは、「太っているから大脳皮質が薄くなるという因果関係の証明まではできないが、体重を減らすことで、脳の老化に伴う記憶力や思考力の低下を遅くできるかもしれない」と説明しています。
ダイエットをサボらず、肥満体型から早めに脱出するのは脳の健康の点からも意味がありそうです。
<参考文献>
EXTRA WEIGHT IN 60S MAY BE LINKED TO BRAIN THINNING YEARS LATER
https://www.aan.com/PressRoom/Home/PressRelease/2737
Neurology. 2019 Aug 20;93(8):e791-e803. doi: 10.1212/WNL.0000000000007966. Epub 2019 Jul 24.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31341005
https://n.neurology.org/content/early/2019/07/24/WNL.0000000000007966
文/星良孝