風邪でクリニックを受診すると、薬を処方される人も多いことでしょう。そうしたときにもらう薬のひとつとして、抗菌薬(いわゆる抗生物質)があります。抗菌薬は細菌を殺す薬ですが、気軽に飲むのは控えたほうがよい可能性があります。このたび米国の研究グループが、結腸がんのリスクを高める可能性があると報告したのです。
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抗菌薬と大腸がんの関係は腸内細菌?
日本でもがんはますます身近な病気になってきています。男女合わせると最も多いのは大腸がんです。女性では乳がんに次ぐ2番目に多いがんで、がんの死亡率で見ると、女性のがん死の中で最も多くなっています。このように大腸がんが多い理由としては、食習慣などが関係するとされています。
今回、国際的知名度がある米国ジョンズホプキンス大学の研究グループは、大腸がんと腸内細菌との関係に注目しました。これまでの研究から、腸内細菌の状態が変化することで、大腸がんが起こりやすくなるという結果が判明しており、抗菌薬の使用により腸内細菌が変化すると、大腸がんの発生にどのような影響が及ぶのかを調べました。つまり、細菌を殺す薬である抗菌薬が悪影響を及ぼす可能性があると考えたのです。
2万8980人の大腸がんの患者、13万7077人の大腸がんではない人を対象にして、抗菌薬の使用と大腸がんの危険性との間に関係性があるのかを分析しました。
大腸がんの危険性が高まる
こうしてわかったのは、抗菌薬の使用によって大腸がんのリスクが高まるということでした。大腸は十二指腸に加えて結腸と直腸から成り、肛門へとつながっていますが、リスクが高まったのは、結腸のがんでした。ただし、肛門に近い直腸のがんは、抗菌薬を使う人のほうが少ないことがわかりました。
抗菌薬のなかでも、ペニシリンと呼ばれるタイプの薬であるアンピシリンやアモキシシリンを使うと、結腸がんのリスクは9%高まるという結果になっていました。一方で、テトラサイクリンと呼ばれる薬では、直腸がんのリスクが10%低下しました。また、がんと診断されるよりもはるか以前(10年超)の使用であっても、大腸がんの発生につながることが確認されました。
研究グループは結腸がんと直腸がんとの間での差については、腸内細菌の影響やがんの発生の仕方が、肛門に近くなると異なる可能性があると推測しています。
2017年に、日本の厚生労働省も抗菌薬の使い過ぎを控えるように注意を促しています。薬の使い過ぎには思わぬマイナスもあるようですから、ふだんから気をつけることが肝要です。
<参考文献>
国立がん研究センター「最新がん統計」
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
Oral antibiotic use and risk of colorectal cancer in the United Kingdom, 1989–2012: a matched case–control study
https://gut.bmj.com/content/early/2019/07/11/gutjnl-2019-318593
Antibiotics exposure linked to increased colon cancer risk
https://www.hopkinsmedicine.org/news/newsroom/news-releases/antibiotics-exposure-linked-to-increased-colon-cancer-risk
「抗微生物薬適正使用の手引き 第一版(ダイジェスト版)」を作成しました
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000179192.html