睡眠の質や量の低下が問題視されている昨今、会社や学校の始業時間と個人の体内時計が一致していない“ソーシャル・ジェットラグ”が健康面に悪影響を及ぼすことがわかってきました。今回は、『目覚め方改革プロジェクト』のメンバーである明治薬科大学 リベラルアーツ 准教授 駒田陽子先生と、東京家政大学 人文学部 心理カウンセリング学科 准教授 岡島義先生が『目覚めスッキリコラム』で紹介する、ソーシャル・ジェットラグについてチェックしていきましょう。
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■眠くても会社に行かなければいけない…「社会的時差ボケ」
朝型の人と夜型の人、睡眠時間が少ない人、長めの人もいますが、会社や学校の始業時間などは一律なのが通常です。
「それぞれの人に合った睡眠時間帯と、社会が求める時間帯には、往々にしてズレがあります。例えば、本当は朝8時くらいまで寝ていたいけど、会社や学校に遅刻しないように目覚まし時計を使って6時に起床しなくてはいけないとか。こうした社会的なスケジュールと個人の体内時計の不一致を、“ソーシャル・ジェットラグ”といいます」(駒田先生)
ジェットラグは旅行の際に時差のある地域に移動したときに生じる不調、いわゆる“時差ボケ”です。ソーシャル・ジェットラグは、社会的なスケジュールによって体内のリズムが乱れてしまうことを指します。ドイツの研究者・ローネベルグ博士が2006年に提案した新しい概念ですが、当てはまる人は少なくありません。
「ヨーロッパを中心とした15万人規模の調査研究によると、1時間以上のソーシャル・ジェットラグを示す人の割合は7割にのぼっています。私たちが日本人1万人を対象として調べたところ、若い人ほどソーシャル・ジェットラグを経験しており、1時間以上のソーシャル・ジェットラグを示す人の割合は、20代が6割、30代では5割となっていました」
■「ソーシャル・ジェットラグ」があらゆる機能を低下させる
ソーシャル・ジェットラグは、日中眠くなるといったことだけでなく、健康面でもさまざまな弊害があることが問題視されています。
「ニュージーランドで1,000名を対象に行われた研究によると、仕事や学校などの社会的なスケジュールと体内時計とのズレが大きい人ほど、肥満やメタボリックシンドロームになりやすいことがわかっています。この2つは、どちらも生活習慣病の前段階。休日の朝寝坊など、慢性的な体内リズムの乱れが、こうした生活習慣病を引き起こしてしまうのです」(岡島先生)
生活習慣病は深く関わるソーシャル・ジェットラグ。体内リズムの乱れはホルモンや血圧、神経など体の機能のバランスを狂わせます。
「糖尿病に関係するインスリンも、影響を受けるホルモンのひとつ。体内リズムが乱れると、ストレスに対応するホルモンのコルチゾールや成長ホルモンを分泌して血糖値を上げ、インスリンの血糖値を下げるという働きを妨げてしまいます。
また、中途覚醒や短時間睡眠で交感神経が優位になると高血圧に。覚醒や食欲を司るホルモンも乱れ、食欲が増進します。このように、体内リズムの乱れはさまざまな生活習慣病の要因になっているのです」(岡島先生)
体内リズムを整え、十分な睡眠をとることも生活習慣病予防のためには大切になってきますね。体の負担を減らすためにも体内リズムを崩さないほう日々意識してみましょう。
情報提供:目覚め方改革プロジェクト
文/庄司真紀