女性の病気として忘れてならないのが、乳がんや子宮がん、卵巣がんなど。なかでも予防の手段としてワクチン接種が行える点で重要なのが子宮頸がんです。主な原因がウイルス感染で、ワクチンによりウイルスの定着を防ぎます。こうしたなか、思わぬ薬が予防につながる可能性があると報告されました。
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薬が子宮頸がんの予防と関係?
日本の女性にとって子宮がんは、乳がん、大腸がん、胃がん、肺がんに続いて多いがんです。子宮がんは2つに分かれており、ひとつは、妊娠したときに赤ちゃんが入る子宮体の「子宮体がん」あるいは「子宮内膜がん」。もうひとつが、子宮からの出口に当たる頸部にできる「子宮頸がん」です。国立がん研究センターの統計によると、日本の女性のうち、生涯で子宮頸がんにかかるのは、73人に1人、死亡する女性は332人に1人となり、注意すべきがんとなっています。
このたび米国ヒューストン大学の研究グループが、この子宮頸がんの予防に、避妊薬が有効である可能性を報告しました。子宮頸がんの原因となるのはウイルスで、その定着を防ぐためのワクチン接種が行われています。しかし、ワクチンは高価であるなどの理由から世界的には十分に普及していないこともあり、研究グループは「ワクチン接種とは異なる予防の選択肢が必要ではないか」と指摘。子宮頸がんの一歩手前に当たる前がん状態を治す方法として、避妊薬に注目しました。
そこで、動物実験による前がん状態の治療を試してみることに。なお、研究グループが使ったのは、日本で一般的に使われている経口薬ではなく、注射で使うタイプの避妊薬です。
動物実験で効果を確認
そうしてわかったのは、避妊薬を使うことで、前がん状態の部分を縮小させることができるということ。顕微鏡を使って調べたところ、避妊薬の効果によって、前がん状態の部分にある細胞の増殖を抑え込む変化が起きていたほか、がんにつながる細胞を死に導く変化が起きていることがわかったのです。薬が効いたのは、女性ホルモンであるプロゲステロンの受容体をもっている細胞でした。
研究グループは、人においてもこうした効果が発揮される可能性があると考えています。いわゆる飲むタイプのピルですぐに今回のような効果が期待されるわけではありませんが、今後、避妊薬が思わぬ脚光を浴びることになるかもしれません。
<参考文献>
Contraceptive drug shows promise for preventing and regressing cervical cancer
https://www.elsevier.com/about/press-releases/research-and-journals/contraceptive-drug-shows-promise-for-preventing-and-regressing-cervical-cancer
国立がん研究センター『最新がん統計』
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html