日々忙しくしていたり、年をとったりすると、「目が悪くなったかも」と感じることがありませんか? また、小さなころから目が決してよくはないという人もいるでしょう。このたび米国の研究グループが、近視に効果的な薬の発見につながる研究を発表しました。視力に悩みがある人にとっては朗報といえるかもしれません。
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目をよくしてくれる薬?
目が見えづらいという悩みは誰しも経験したことがあるでしょう。ふだん視力がよい人であっても、仕事や勉強などで目を酷使してしまうと、見えづらくなることがあります。
視力の低下はどれくらい問題なのでしょうか。日本の統計としてよく引用される学校保健統計調査報告書によると、近視や近視性乱視と考えられる「裸眼視力0.3未満」の子どもは、小学生では9.28%、中学生では25.54%、高校生では39.34%で年々増加。成人ではやはり4割近くが近視とみられています。
近視のなりやすさは、遺伝子レベルの違いも関係していることがわかっています。そこで、近視と関係する遺伝子に働きかけることにより、視力が悪くなってしまうことを防げないか。米国コロンビア大学の研究グループはそうしたアプローチから、薬の可能性を探りました。まだ研究はごく初期の段階ではあるものの、このたび120を超える薬の候補を見つけるに至ったのです。
900の近視に関係する遺伝子を発見
研究グループが注目したのは、眼球の長さが長くなってしまう近視を引き起こす原因のひとつです。このためにうまくピントを合わせることができなくなるのです。めがねやコンタクトレンズなどは、ピントを調節する役割を果たします。研究グループは、眼球の長さの変化をうまく抑えることで近視の進行を防げないかと考えました。また、近視になると緑内障や白内障、網膜の病気にもなりやすくなるので、関連した病気の予防にも薬が効かないかを考えています。
研究から判明したのは、近視を止める薬につながる900もの遺伝子が見つかったというもの。この発見に基づいて、すでに存在している薬のなかから、有望なものを選抜。近視の遺伝子に働きかける可能性のある120を超える薬の候補が特定できたのです。
今後は、まずは動物実験からとなりますが、近視の進行を止める薬として使えそうかが検証されることに。研究グループは、近視の薬が実現できる可能性があると指摘しています。もしかしたら、将来有効な薬がお目見えする日が来るかもしれません。
<参考文献>
Drugs to Stop Nearsightedness May Soon Come into Focus
https://www.cuimc.columbia.edu/news/drugs-stop-nearsightedness-may-soon-come-focus
Trends Pharmacol Sci. 2019 Nov;40(11):833-852. doi: 10.1016/j.tips.2019.09.009. Epub 2019 Oct 30.
https://www.cell.com/trends/pharmacological-sciences/fulltext/S0165-6147(19)30227-5
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31676152
学校保健統計調査報告書
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa05/hoken/kekka/k_detail/1411711.htm
日本近視学会『近視とは?』
https://www.myopiasociety.jp/general/about/index.html