口腔内を清潔に保つための歯磨き。1日3回行う人も、1日1回の人も、それぞれだと思いますが、大人になってからあまり歯医者で診てもらっていない、自分の歯に自信がない、という人も多のではないでしょうか? 一生を共にする大切な歯を健康に保つためのケア方法や、食いしばりなどのクセの解消法をご紹介します。大人の予防歯科で、今年は歯から身だしなみを整えてみませんか?
Contents 目次
デカ顔も肩こりも片頭痛もすべて“食いしばり”のせい!?
食いしばりと聞くと上下の歯に力を入れてギューッとかみしめる様子をイメージするかもしれません。でも、それだけではありません。口腔内を意識したとき、上下の歯がくっついているなら、それは食いしばりグセがある証拠。アゴの筋肉や咬筋に負担をかけてデカ顔の原因になっているかもしれないのです。そこで、食いしばりグセを解消して小顔になるためのメソッドを歯科医の関有美子さんに聞きました。
「まず、口を閉じた正しい状態とは、唇は閉じていても歯と歯の間に1~3mm程度の隙間があり、舌が上あごに軽く添えられている状態のこと。上下の歯が当たっていたり、舌を歯に押し当てたりしているなら、歯科医の間で「TCH(歯列接触癖)」と呼ばれる“食いしばりクセがある人”ということになります。
自覚症状がなくても、かみしめが原因で歯の表面がすり減っていたり、下あごの内側に骨のコブのようなものがあったり、知覚過敏の歯が多かったり、頬の筋肉が張っているような感覚がある人は、食いしばりグセがあると自覚しましょう。
本来、上下の歯が触れるのは、話しているときや食事をしているときなど、1日の中でわずか20分程度が目安。それ以上、歯が接触しているということは、口腔内が必要以上に筋トレしされているということ。筋肉が発達・緊張して、エラ張り、顔のむくみを引き起こして顔を大きく見せている可能性が高いのです。
さらに、食いしばりがひどくなっていくと骨格がゆがんだり、歯並びが悪くなったりするだけでなく、顎関節症、肩・首こり、片頭痛の原因になる可能性もあります。健康面でも美容面でも放っておくわけにはいきません!」
たった1秒の「口開けメソッド」でフェイスラインが変わる
「TCHがある場合、これまでの歯科では歯や歯茎を守るためにマウスピースを作る治療やボトックス注射で筋肉の緊張をほぐす治療を行うのが一般的でしたが、これらはあくまで対処療法。根本原因である「TCH」を改善しなければ、食いしばりは治りません。
そこで、現在、歯科医の間で最も効果が期待されている治療法が1~2時間に一度、口を開けて筋肉のストレッチを行う認知行動療法。そこに、美容効果・小顔効果をフォーカスしてアレンジしたのが、今回紹介する「1秒口開けメソッド」です」
<「1秒口開けメソッド」のやり方>
やり方は、とってもカンタン。口を開けて、たった1秒「あーん」の形にするだけ。歯と歯を離すことが大切なので声を出す必要はありません。
「オフィスなど周りに人がいて口を開けることができない場合は、唇は閉じたまま口の中で歯と歯を離すだけでも大丈夫ですよ」
【応用編】動かしている筋肉を意識してプラスの効果
「筋肉は意識して動かすことで効果が変わります。「1秒口開けメソッド」でも口の周りの筋肉がどう動いているのかを確認しながら行うことで効果への期待もアップします。
例えば、頬には大きな筋肉が2つありますが、下がってくるとたるみの原因になるため、「あーん」をするときに人さし指と中指で頬の下をおさえて、下がってこないように意識します」
「また、余計な表情筋が伸びないように両手の親指を左右のあごのエラにあて、手のひらで頬をおおい「あーん」をするのも応用編のひとつ。口を開けたときに動く筋肉を意識しましょう」
家やオフィスにふせんを貼って1日20回を目標に行おう
「とてもカンタンな「1秒口開けメソッド」ですが、大切なのは1日に何回も行うことと毎日続けることです。とはいえ、仕事に集中していると、ついメソッドのことは忘れてしまいそうですよね。
そこで、多くの歯科医でも患者さんに提案しているのが、毎日何度も目にする場所にふせんを貼っておき、見たら必ず「1秒口開けメソッド」を行うという環境づくり。例えば、手帳や財布、パスケースなどアイテムに貼るのもいいですし、自宅なら玄関・トイレのドアや電気のスイッチ、鏡などに貼り、オフィスならPCの電源ボタン・デスクトップ、よく使う引き出しを開けたところなどに貼りましょう。1~2時間に1回、1日20回行うことを目標にして達成できるようにふせんを貼りまくって!
「1秒口開けメソッド」は、1日で劇的に変化が出るメソッドではありません。しかし、毎日コツコツ続けていれば、1か月後にはフェイスラインがシャープになって、体の不調もなくなっているはずです」
スマホやパソコンを見るときは姿勢と口もとを意識して
日本人の7割以上が無意識に行っている「食いしばり」。その原因のひとつが日常生活の中で無意識に行っている悪いクセです。そこで、「食いしばり」をしてしまいそうな要注意シーンや直したほうがいい習慣を関先生に聞きました。寝つきが悪い、寝起きに顔がむくむ、肩がこる、顔がゆがむなどの症状に当てはまる人は、食いしばりグセ解消トレーニングで過ごしやすい日々に変わっていくことでしょう。
「現代人の日常に欠かせないスマホやパソコン。じつは、その間も口は食いしばり状態になりがちです。しかし、移動中や空き時間のスマホも仕事中のパソコン作業も時間を減らすなんて考えられないですよね。ならば、時間短縮は考えずに、気をつけたいポイントを覚えておきましょう。
まず、ふだんスマホを見ている姿勢やデスクワーク中の姿勢を思い出してみてください。スマホやパソコン画面の高さはどの位置にありますか? もし目の高さより下の位置にある場合、目線を下げたとき、上半身が前傾姿勢になってあごに力が入っているはずです。
人間の顔は、下のほうを見るとき奥歯をかみしめたほうがあごが安定するようにできています。つまり、目より低い位置のスマホやパソコンを見ている間、口の中は上下の歯がくっついた食いしばり状態になっているのです。
しかも、パソコン作業に集中しているとき、スマホゲームに熱中しているときは、さらに力が入っているので食いしばりをしている可能性は高くなります。口もとに力が入っていないかを意識するほか、適度な休憩をとるのを忘れずに!
スマホ・PC時間の食いしばりを防ぎたいなら、スマホ画面は目の高さに持ってきましょう。そして、スマホを持っている手は反対の高さで支えて目の高さをキープしましょう」
立ち姿・歩き姿が悪いと体がゆがんでいく
「次に食いしばりだけでなく、全体的な印象を美しく見せる立ち姿・歩き姿についても考えてみましょう。
人間の頭の重さは約5kgあるといわれています。その重さをバランスよく支えるためには、耳のうしろ、肩先、骨盤、くるぶしが一直線になるように立つのが理想的です。
しかし、常に左右の同じ側でばかり荷物を持っている人は、片側にだけ負担がかかっています。そんな状態でバランスよく立とうとしても、負担がかかっている側のあごや肩甲骨に余計な力が入り続けるだけ。口の中は食いしばりになり、肩はこっていくという悪い習慣がついてしまいます。左右両側のバランスを考えるなら、両肩に均等に負担がかかるリュックにしましょう。
また、正しい歩き方は、猫背や前かがみにならず、足はかかとから着地する流れ。そのためには、猫背になりやすい歩きスマホは厳禁! 悪い姿勢のまま歩いていても肩こりや体のゆがみを引き起こすだけですよ」
眠りにつくときの姿勢と枕で不眠や肩・首こりも解消
「『寝ているときは気をつけようがないじゃない!』と思うかもしれませんが、眠りにつくときの姿勢や枕、マウスピースなどのアイテム選び方で眠りの質も食いしばりも変わっていきます。
歯科医の観点からは、あお向けで寝るのがおすすめ。うつぶせ寝や横向き寝は、ほおの片側を長時間押しつけるような寝方は、顔の筋肉がゆがんでいってしまいます。睡眠中に寝がえりをうつのは仕方がないことですが、入眠時はあお向け寝を心がけましょう。
また、あお向けで寝る場合、枕が高すぎるとあごを引いた状態になるのでほおの筋肉に力が入り、上下の歯が当たった食いしばり状態で眠ることになってしまいます。逆に枕が低すぎても頭が沈んでしまい首に負担がかかって首こりの原因になります。理想の高さは、頭を枕にのせたとき首が自然なS字カーブになる枕。ちょうどいい高さのものが見つからないときは、バスタオルを折りたたんで高さを調整しましょう。
いくら気をつけても、眠っている間の姿勢をキープし続けるのは難しいですよね。睡眠中も食いしばりをしている人は、マウスピースを歯科医院で作りましょう。歯のすり減りを防止して、歯の位置もキープできます。
日常生活の無意識の食いしばり。長い間そのままでいると食い込みがひどくなり、歯の面がだんだん平たくなってきます。今あるキレイな歯をキープするためにも、食いしばりグセ解消トレーニングを忘れずにいたいですね」
歯みがきのときに鏡を見ながら行おう
無意識のうちに行っている食いしばり。解消して小顔に導く「1秒口開けメソッド」はすでに紹介しましたが、プラスして行うことでさらに小顔へ近づけるのが、今回紹介する舌を使った3つのトレーニングです。ポイントは、一度にムリするのではなく、できることを毎日続けること。ひとつでもいいのでコツコツ続けてみましょう。
「舌を使ったトレーニングに効果があるのは、ふだんの生活では使わない舌骨筋(ぜっこつきん)を動かすからですが、筋肉は、意識しながら動かすことで効果に差が出ます。そのため、トレーニングを行うなら鏡を見ながら、こう動かしたら筋肉はこう動くというのを理解しながら行いましょう。
ほとんどの人が顔の筋肉や動きに左右差があります。トレーニングするときは、なるべく差が出ないように左右対称を意識して動かすことも効果に差をつけますよ。
鏡がある場所で行うので、ムリなく行えるタイミングは歯みがきのとき。朝と夜でも、朝昼夜でもいいので毎日行いましょう。
また、舌トレーニングは、唾液の分泌も促しますが、唾液に含まれるパロチンという成分には、美白効果やアンチエイジング効果があるといわれています。舌トレーニングは、小顔だけでなく美肌効果にも期待できそうです。口臭予防にもなりますよ」
【トレーニング1】基本の舌トレーニング
「のどの奥にあり、舌を支える骨まわりにある筋肉が「舌骨筋」。動かすことで、あごのたるみを防止してシャープなフェイスラインを目指すことができます」
<トレーニング方法>
<1>
口は“ら”を発音する形にする
鏡の前に立ち、左右の口角を上げた笑顔を作り、舌は前歯の裏側へつけます。「ら」を発音するときの口の形です。
<2>
そのまま下あごを上下に動かす
舌を上の前歯につけたまま、下あごを上下に動かします。左右の口角が下がったり、上あごが動いたりしないよう注意しながら、5回上下に動かしましょう。
【トレーニング2】舌をぐるぐる回すトレーニング
口の中で舌を大きく動かすトレーニング。こちらも舌骨筋肉が鍛えられます。頬や口まわりを動かすので、ほうれい線予防などにも効果がありそうです。
<トレーニング方法>
<1>
上の前歯を舌でなぞる
口を軽く閉じて、上の犬歯に歯の外側から舌を当てます。そのまま歯茎と歯の表面をなぞりながら反対側の犬歯まで移動します。
<2>
上から下へぐるっと移動
<1>で移動した上の犬歯から、下の奥歯に舌を移動させます。歯の外側に舌を当て、歯と歯茎を舌で押しながら、前から3番目の歯まで舌を移動させます。<1>、<2>の動きを左右とも5回ずつ行いましょう。
【トレーニング3】舌を丸めるトレーニング
舌をねじって舌骨筋を刺激するトレーニングです。最初はうまくできなくても続けているうちに動くようになっていきます。
<トレーニング方法>
<1>
口をあけて舌をねじる
口を軽く開けて、舌の先っぽで舌の裏側の根元をさわるようにします。舌が丸まった状態のまま、舌の表面が右方向を向くように舌をねじります。
<2>
左右にタッピング
<1>のように舌を丸めたまま、舌の根元部分を左右にタッピングします。リズミカルに行えるよう意識して! <1>、<2>を左右10回ずつ行いましょう。
「どのトレーニングも最初はコツをつかめなかったり、うまくできなかったりするかもしれません。でも、何もやらなければ何も変わりません。毎日、調子がいいときの自分でいられるように毎日少しずつでも続けましょう。
また、各トレーニングの回数は最低回数です。もっと増やせそうだと思ったらできる範囲で増やしていけば、写真を撮ったとき「あれ? 私って思っていたより小顔かも」なんていううれしいおどろきが待っているはずですよ」
歯が汚いと流行の血色メイクも台無しに
最近は、芸能人だけでなく一般人でも身だしなみの一環として始める人が多いホワイトニング。歯が白くなることでどんなメリットがあるのでしょうか。
「意外と知られていませんが口紅の色が赤いと歯の色は目立つようになります。リップの色が赤いほど歯は黄色く見えてしまい、最近トレンドの血色メイクのように発色がいい赤リップのメイクは、歯の色が明らかに顔の印象を変えるんですよ。
例えば、合コンで同じようなメイクをした女性が3人並ぶと、「あの子は歯が白い、あの子は黄色い」と違いが目立って見えてしまいます。まわりと差をつけて少しでもキレイに見せたいなら、ホワイトニングは欠かせません。髪の毛や肌と一緒で歯がキレイかどうかを男性はよく見ています。自分という素材のよさをアピールするためにもホワイトニングで白い歯を手に入れるのはおすすめです。
また、ホワイトニングをすると光の反射で歯の印影がやわらぎ、歯並びの悪さが目立たなくなるというメリットもありますよ」
黄色い歯のせいでオバサン顔に見えているかも!
「乳歯から生えかわったとき、永久歯にはエナメル質という透明感のあるガラスのようなものが表面を覆っています。しかし、そのエナメル質は、その後増えていくことはなくターンオーバーもせず、すり減っていきます。
さらに、エナメル質は、すり減っていくだけでなく年齢を重ねるほどすりガラスのように曇っていきます。すると結果的にエナメル質の下にある黄色い象牙質が見えるようになってしまうので年配の人ほど歯は黄色くなっていきます。
みんな、無意識のうちにおじいちゃんやおばあちゃんの歯は黄色いと思っています。そのため、ホワイトニングをせず黄色いままだと老け顔、ホワイトニングをしている白い歯は若々しい顔といった印象を持たれやすいんです」
まずは自宅で始めるお手軽印象チェンジ
「年齢によって歯が黄色くなっていったり、着色汚れがついていったりというのは、誰にでも起きることです。そのため、ホワイトニングは、ほとんどの人にすすめてもいい施術です。ただ、いきなり歯医者でホワイトニングをすることには抵抗があるという人は、まずは歯磨きで着色汚れを落としてあげましょう。
着色汚れ自体は、ホワイトニング用の歯ブラシもドラッグストアで簡単に手に入れられますし、最近は手軽に歯の着色を落せるような専用のスポンジも販売されています。かといって、神経質になり過ぎてしまったり、常用したりするのは、歯科医からするとそんなによくないことではあるのですが、「私の歯ってもともとこんな色だったんだ」と知るには手軽にできていい方法だと思います」
プロが行い短期間で白くなるオフィスホワイトニング
ワンランク上のキレイが手に入るホワイトニング。イマドキの主流は、クリニックで行う「オフィスホワイトニング」と自宅で行う「ホームホワイトニング」の2通りがあるようです。予算や期間、施術法に違いはあるの? それぞれの違いや最近のホワイトニング事情について伺いました。
「クリニックで専用の薬剤や機械を使ってホワイトニングするのが「オフィスホワイトニング」です。一般的に施術を行うのは、歯科医師や歯科衛生士など国家資格をもつプロ。口の中の状況をチェックしながら施術を進めてくれる安心感は、最大のメリットかもしれません。
また、1回のホワイトニングは、1~2時間程度。高濃度のホワイトニング剤を使うので1回の施術でも効果が出やすいですが、3~6回程度通うのが一般的です。ただし、薬剤が高濃度なぶん健康な歯の場合でもしみることがあります。心配な人は、事前に相談してみてくださいね」
自宅でじっくり白い歯を目指すホームホワイトニング
「一方、自宅で行うのが「ホームホワイトニング」です。専用のマウスピースにホワイトニング剤を流し込み、毎日決められた時間だけ歯に装着して行います。クリニックで行うホワイトニングに比べて薬剤が薄いため効果が出るまでには1~2か月かかりますが、セルフケアで時間をかけて白くするぶん、年単位で白さをキープできるのがメリットです。
ほかにも「オフィスホワイトニング」と「ホームホワイトニング」を併用して高い効果が期待できる「デュアルホワイトニング」やサロンなどに行き自分でホワイトニングを行う「セルフホワイトニング」などが、最近では出てきています。ただし、後者はトラブルが起きても自己責任のため、歯科医としてはなかなか推奨しづらいところがあります。
また、ホワイトニングは、すべて保険適用ではありません。価格はクリニックによって差がありますが、効果が定着するまでで「オフィスクリーニング」なら約2万円、「ホームホワイトニング」なら2~3万円はかかるつもりで初めてみてくださいね」
ホワイトニングを断られてしまう人がいる!?
「ただし、人によっては希望するタイミングでホワイトニングができない人がいます。例えば、虫歯がある人。ホワイトニングに使う薬剤は、虫歯があるとしみてしまいます。万が一、痛みをガマンできてもホワイトニングで透明感が増した歯に虫歯の黒色が透けて見えてしまったり、ホワイトニング後に虫歯治療を行うことでよけいな出費が増えたりするケースがあります。
そのため、一般的な歯科医では、ホワイトニングの前に虫歯治療を行うようにしているのです。
また、ホワイトニングは本来の歯の色を基に白くしていくため、ホワイトニング前に詰め物の色を変えたり歯垢除去などのクリーニングをして本来の歯の色を確認しなければなりません。誰でもクリニックへ行ったその日にすぐ歯を白くできるわけではないということを覚えておいてくださいね」
健康的な歯茎は引き締まっていてピンク色
健康的な口もとというと唇や歯のケアばかりを考えてしまいがちではないですか? 毎日見ているつもりで、じつは見落としてしまいがちなのが歯茎の状態です。歯茎は健康状態が見た目に表れやすく、なかには自分の健康的な色がどんな色だったのかもわからなくなっている人もいるかもしれません。そこで、歯茎が変色する原因や美しい色をキープするためにできることを聞きました。
「まずは、改めて歯茎の色をじっくり鏡で見てみてください。イメージしていた色とは印象が違う!という人もいるのではないでしょうか?
健康的な歯茎とは、充血していないピンク色。腫れていたり、プクっと膨らんでいたりする様子はなく、歯と歯の間はキレイな三角形をしていて適度に硬さがあり引き締まっている状態です。ほかにも、歯を磨くときや固いものを食べたときに血が出る人は歯肉炎や歯周病になっているということなので1度クリニックへ相談に行きましょう」
暗紫色や黒く見えるのは差し歯や被せものが原因だった
「次は、ピンク色以外の歯茎の色について解説しましょう。
歯茎が暗紫色や黒ずんで見えた人は、2通りの原因が考えられます。そのひとつが、差し歯や被せものが溶け出している場合です。
神経の治療をしたあと、差し歯をするときは、メタルコアという金属製の土台を歯茎に入れることが多いのですが、金属の銀イオンは少しずつ歯茎に色移りしていくのです。見た目を考えて被せるものや差し歯はセラミック製のものを選ぶ女性もいると思うのですが、土台や裏打ちまでセラミック製のものにするという人は多くはありません。保険診療内で使用される銀歯も同じく銀イオンが溶け出していきます。同じ金属でもゴールドにすれば、色移りはしないのですが、費用もかかりますし、前歯であれば見た目的にもハードルは高いですよね(笑)。
また、歯茎を暗紫色や黒ずんで見せるもうひとつのケースが喫煙です。タバコに含まれるタールやニコチンなどの有害物質が歯茎に染み込んで歯茎の色を悪くしていくのです。クリニックによってはレーザーで焼き取ることもできるのですが、喫煙習慣が改善されなければ結局また歯茎の色は悪くなってしまいます。歯茎のことを考えるのであれば、タバコはやめるのが1番ですね」
赤紫色に見える人は歯周病の可能性アリ!
「歯周病は、歯茎を腫れさせるだけでなく色も変えます。初期の歯肉炎のときは、赤く腫れ、放置して症状が進行すると紫色や黒ずんで見えるようになっていきます。
歯周病は、歯と歯茎の境目にたまった歯垢が硬くなり歯石という物質になり、周りに歯周病菌が集まることで進行していきます。ですが、そもそも歯石がたくさんたまっている人は、歯茎の下に歯石の黒やグレーが透けて見えています。
歯茎のピンク色をキープするためには、歯磨きをするときに歯だけでなく、歯周ポケットに歯ブラシを当てみがきましょう。また、フロストや歯間ブラシ、ワンタフトブラシなどのサブアイテムを必ず使うこと。それだけで歯垢除去率はかなり上がり、キレイな見た目も保てます。
ただし、歯石は歯ブラシで取ることができません。2、3か月に一度はプロフェッショナルケアとして、クリニックでスケーリング(歯垢・歯石除去)をしてもらうようにしましょう」
ヘッドの薄い歯ブラシで奥歯の歯垢を除去
歯磨き粉のように味や効果などで選びづらい歯ブラシや歯間ブラシ、どんな選び方をしていますか? やわらかさや硬さ? それとも値段がお手頃だったから? でも、日々のオーラルケアを未来のキレイにつなげたいならアイテム選びも適当じゃダメ。使いやすくて、正しくセルフケアができるものを選んで使いこなしましょう。
「おすすめの歯ブラシといえば、ライオンから出ている「クリニカアドバンテージ ハブラシ」です。極薄ヘッドで隙間が狭い奥歯でも磨きやすく、歯垢や食べかすの除去率がグンと上がるんですよ。しかも、手で持つ部分が細くて握りやすいので口が小さい女性でも使いやすく、タフトブラシみたいに奥歯の側面も1本ずつ磨くことができます。
この歯ブラシが出るまで、奥歯まで磨きやすい歯ブラシというと、輸入雑貨店で海外の歯ブラシを買うか、ヘッドが小さい子供用の歯ブラシを使うしかなかったんですよ。それが、この品質のものをドラッグストアで手軽に買えるようになったということは、歯科医たちの間でも話題になったんですよ。それぐらい、画期的でおすすめの歯ブラシです」
水流だけで汚れは落ちない!? 奥歯に電動歯ブラシは要注意
「一方、キレイに磨けているような気がしても注意が必要なのは電動歯ブラシです。先ほど紹介した歯ブラシとは対照的に、電動歯ブラシにはヘッドが大きいものが多くてなかなか奥歯まできちんと磨けるものがなかなかありません。とはいえ、電動歯ブラシがまったくダメというわけではありません。歯面にブラシがしっかり当たれば除去率は高いので、前歯の研磨や歯ブラシあとに表面を整えるのにはぴったりだと思います。
ただし、覚えておいてほしいのは、水流だけで歯垢(プラーク)は落ちないということ。歯垢は、こびりついた鍋の汚れみたいにしっかりこすらないと洗い流すことはできません。電動であれ、手動であれ、ブラシの毛先を歯面や歯と歯茎の間に当てて磨いてあげないと取れません。人気商品だからと性能を過信せずに時間をかけてていねいに磨くことが大切ですね」
歯間ブラシは極細タイプから始めること
「歯間ブラシは、誰もが毎日行えばいいものではありません。年齢や歯肉炎・歯周病のせいで歯茎が下がってきて歯の根もとにブラックトライアングルができている人にこそ使ってほしいアイテムで、歯間が詰まっているならデンタルフロスで十分です。
歯間ブラシには、針金タイプやゴムタイプなど、いろんな種類がありますが、選ぶポイントは素材よりも自分の歯間にサイズが合うかどうかです。自分の歯間よりも太いものを選ぶと歯茎を下げてしまう原因になったり、歯茎を傷つけたりすることがあります。
歯の健康に神経質な人ほどギリギリを攻めて歯間がスカスカになっていくというケースも少なくありません。1度下がった歯茎はもう戻ってきません。ムリをしないで小さめサイズからスタートさせましょう」
毎日歯ブラシと一緒に行うならフロスが無難
「歯間ブラシは、ブラックトライアングルがよっぽど大きな人ではない限り、毎日行う必要はありません。週2回ぐらいでいいと思います。むしろ、毎日行ってほしいのは歯茎や歯を傷つける心配のないデンタルフロスです。
デンタルフロスは、持ち手がついているタイプと必要な長さのフロスを指に巻きつけて使うロールタイプがあります。使いやすいほうを選べばいいのですがコスト的にはロールタイプのほうがいいと思います。
使い方のポイントは、歯面にパチンと差し込むだけでなく歯の側面に沿って意識的に汚れをそぎ取ってあげることです。特に利き手側の歯の側面には、汚れがたまりやすい傾向があります。利き手側の小臼歯のあたりは角度が変わって汚れがブラシでも取り切れないことが多いのですが、その点、特定の面を磨きやすいのもフロスのいいところですね。
どのアイテムを選んでも大切なのは、1本ずつをていねいに磨けるのかということ。自分の口腔内の状態や持ちやすさ、使いやすさなど、どのアイテムなら歯垢や汚れをしっかり落とせるか意識しながらあなたセレクトのベストな組み合わせを見つけてくださいね」
硫黄のようなニオイの原因は歯周病
どんなにオシャレをしてもヘアメイクに気合を入れても息が臭かったら台無しですよね。だからこそ、ご飯のあとには歯磨きをしたり、気になったらタブレットやガムを食べたり。でも、自分では気づけないニオイはどうしたらいいのでしょう。
「食べかすや食べ物によるニオイは、歯みがきや時間とともに消えていく口臭です。自分が食べたもの、歯みがきの有無が原因なので自分でまったく気づけないということはほとんどないはずです。
一方、自分で気づかず慢性的にニオっている原因は歯周病です。ちょっと硫黄っぽい独特のニオイがして、普通の歯の磨き方で自然とよくなっていくことはまずありません。まずは、歯肉炎などの歯周病にならないようにセルフケアで丁寧にブラッシングを続けることが重要ですが、定期的にクリニックへ行き、歯のクリーニングを行いましょう。
また、普通の歯磨きではよくならないと説明した歯周病ですが、現在市販されているオーラルケアグッズで唯一歯肉炎などの歯周病を解消することができるのが「コンクールシリーズ」です。マウスウオッシュなどもあるのですが、特におすすめなのはジェル状の歯みがき剤「コンクールジェルコートF」です。普通の歯ブラシ後にプラスして磨けば、細菌をやっつけてフッ素コーティングもできます。プライベートでも人にすすめているおすすめアイテムですよ」
口臭をセルフチェックする方法はあるの?
「なかなか自分で気づくことができない口臭ですが、自分でチェックするならマスクをして息を嗅ぐなどしか方法がありません。最近は口臭のチェックメーカーなども市販されていますが、正確性を考えると歯科医としておすすめできる商品は今のところありません。
というのも、病院の口臭外来には感応検査という口臭をチェックする検査があるのですが、検査方法は古典的。患者さんが板に息を吐き、板の裏にいる3人ぐらいの医師がそのニオイを嗅いで診断結果を決めるんです。ニオイを数値化したり、機械や装置でニオイの種類を診断する方法は医療の世界にもまだなく、人間の鼻に頼るしかありません」
口臭が大きな病気の発見につながることもある?
「例えば、胃でピロリ菌が悪さをしているなど内臓疾患があるときは口臭がきつくなりますが、あまりに普通じゃないニオイがあるときは大学病院を紹介することがあります。
病気の種類でいえば、のどの病気や扁桃腺が炎症を起こしているとき、呼吸器や消化器、糖尿病なども口臭に出ることがあり、ニオイのタイプは、糖尿病なら甘酸っぱいニオイ、腎臓病ではアンモニアのようなニオイ、肝臓病では腐った卵のようなニオイなどそれぞれ特徴もあります。
クリニックで医師がニオイに気づき、大病が発見できることもあります。口のニオイが気になる人は、クリニックに行って歯周病予防、口臭の相談をしてみてくださいね」
後悔しない歯医者を見極める3つのポイントとは?
あなたはどんな基準で歯科医を選んでいますか? 自宅や職場に近いから、遅い時間まで開いているからなど生活スタイルに合わせて選ぶ人もいるかもしれません。でも、同業者である歯科医から見た“いい歯医者さん”ってどんなところなのでしょう。
【ポイント➀】歯の状態や治療の目的、段階を説明してくれる
「生活スタイルに合わせて通いやすい歯医者さんを選ぶことも、通い続けるためには必要なことです。でも、それ以上に大切なのが、患者さんにきちんと説明をしてくれるかどうかです。
治療前に「今、必要な治療は何か」ということや歯の状態、今後の治療方針についてわかりやすく話してくれる歯医者さん、治療中も「どういう段階で何を行っているのか」をきちんと話してくれる歯医者さんは、診断や治療に責任感がある証です。なかには、初回の診察は質問や会話ばかりでなかなか治療に入ってくれないケースもありますが、それは正しい診断に必要な情報を得ているからです。「早く治してよ!」と思うかもしれませんが、患者さん自身もきちんと向き合うことで最良の結果につながります」
【ポイント②】実際に通っている人の口コミがいい
「患者さんからの評判がいい歯医者さんは、ていねいな治療で納得できる仕上がりになっているということ。さらに、ドクターなどスタッフの対応やアフターケアもしっかりしている可能性が高いと考えられます。
その評判を確認するなら、虫歯のないときに歯科検診やクリーニングをしてもらえばクリニック内の雰囲気やスタッフの対応を確認することができます。
また、今はネット上で診察予約を取ることができる歯医者さんもありますが、もし電話でもいいなら直接話すことをおすすめします。いい歯医者さんかどうかは患者さんとの相性もあるので、最初に電話で話した印象が口コミよりも意外と当たっているというケースも少なくありません」
【ポイント③】目的とする治療についての専門医かどうか
「歯医者さんのホームページなどを見るとドクターのプロフィールに「〇〇専門医」などと書かれているのをみたことありませんか? これは学会などの団体が設けた制度をクリアした医師であるということです。
現在、さまざまな「〇〇専門医」を育成する学会がありますが、ホームページ上に掲載できるのは、厚生労働省が認可している学会の専門医のみ。「口腔外科専門医」「歯周病専門医」「歯科麻酔専門医」「小児歯科専門医」「歯科放射線専門医」の5つの資格です(2019年5月現在)。
資格取得の難しさは学会によって異なりますが、専門知識や技術をもっているという点では、歯医者さんを選ぶ基準のひとつに加えてもいいのではないでしょうか。
ただし、専門医だからといって絶対に名医というわけではないので、そのほかのポイントも考慮して選ぶようにしましょう。歯の悩みやトラブルは、生きている限りずっと続きます。相談をしやすいかかりつけ医に巡り会えるといいですね」
歯の健康を取り戻す食べ物ってあるの?
加齢とともに少しずつ若さが失われていく歯や歯茎。歯磨きや定期健診だけでなく食べるものに気をつけることで劣化を少しでも食い止めることはできるのでしょうか? 健康的でキレイな口もとをキープするために効果的な食べ物はあるのでしょうか?
「残念ながら、歯には肌や髪の毛のようにターンオーバーがありません。どんな治療を施しても1度虫歯になった歯や歯周病によって下がってしまった歯茎が元に戻ることはないのです。つまり、食べ物によって歯の健康が戻ることもないのです。
一方で虫歯になりにくい口内環境を作るといわれている成分はあります。キシリトールです。天然の甘味料であるキシリトールには、歯垢(プラーク)の中にある虫歯の原因菌のひとつミュータンス菌を減少させて、虫歯の原因となる酸を作らせないはたらきがあるといわれています。キシリトールが含まれるガムやキャンディを食べることで唾液の量が増えることも虫歯になりにくい口腔環境を作ることにつながります」
間食をするなら噛み応えのあるナッツやフルーツがオススメ
「ただし、注意したいのはキシリトールではなく糖分についてです。歯にくっついて口腔内に残りやすい糖分や糖質は、一般的に歯や歯茎には悪いといわれています。例えば、ジュースなどの清涼飲料水や粘着しやすいキャラメルやチョコレートを食べたあと、こまめに歯みがきをする習慣がなければ虫歯になりやすくなってしまいます。
もし、仕事や家事の合間に間食をするなら糖分たっぷりの甘いものよりナッツ類などかみ応えのある固いものをおすすめします。固いものを食べたり、かんだりすることは、口の清掃に役立ちます。ナッツだけじゃなく、フルーツや野菜でもお菓子を食べるよりは歯にはいいですね。また、食べたあとは、歯みがきはできなくても水か緑茶を飲んで口の中をスッキリさせるようにしましょう」
ミントタブレットで虫歯になる可能性も
「また、多くの人が持ち歩いているミントタブレットも要注意です。デートや打ち合わせ前などの口臭予防的にはいいですが、糖分が口に残るので歯のためを思えばよくありません。ミントタブレットを食べるたびに歯みがきをする人はめったにいないですし、日常的に食べるクセがある人は虫歯に気をつけたほうがいいですね。とはいえ、口臭ケアとしては手軽で効果的ですし、絶対にやめたほうがいいものともいえません。虫歯予防と口臭ケア、どっちを優先させるかはその場に応じて判断しましょう。
特定の食べ物を食べているからといって健康的な歯が絶対にキープできるということはありません。食事や間食に気をつけることもいいですが、食後の歯磨きや定期的なクリニックでのケアも忘れずに美しい笑顔を作るオーラルケアを心がけてくださいね」
「歯科医が教える即効1秒小顔」(主婦と生活社)
取材・文/浜田彩