「デンスブレスト」─聞いたことがない人もいるかもしれませんが、乳房内の乳腺組織の割合が高く、マンモグラフィーで白く映る「高濃度乳房」のこと。乳がんが発見されにくいタイプとして問題になっています。このたびデンスブレストの人では磁力を使う画像診断装置であるMRIを使うと、がんの検出率が上がる効果があるとの研究結果が報告されました。
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「極めて高濃度乳房」の4万人以上で調査
デンスブレストは触診で判断するものではなく、マンモグラフィーで見た乳腺組織の厚さで決まります。特に乳腺組織が厚いケースは「高濃度乳房」と呼ばれています。いちばん厚いタイプが「極めて高濃度」、次が「不均一高濃度」となります。デンスブレストの人は乳がんになりやすいという研究結果が出ているうえ、通常のマンモグラフィー検査では乳腺組織も乳がんも白く映るせいで乳がんが見つかりにくくなります。
超音波やMRIを使った検査なら、デンスブレストの人でも見つかりやすいと指摘されることもあります。とはいえ、こうした検査を追加した場合にどれほどがんをうまく発見できて、生存率の上昇につながるのかまだはっきりしません。
そんななか、今回オランダの研究グループは、マンモグラフィーで異常がなかった「極めて高濃度乳房」の女性4万人以上を対象にMRI検査の効果を調べました。
MRI検査は磁気を使って体の内部を調べる画像診断装置による検査。4分の1にあたる約8000人には、2年ごとのマンモグラフィー検査の合間にMRI検査を受けてもらい(実際に受けたのは4800人ほど)、「中間期がん」の発見率についてマンモグラフィーだけの場合と比較しました。中間期がんというのは、前の検診ではがんが見つからず、次の検診までの間に自覚症状などで発見されるがんのことです。がんをマンモグラフィーとMRIで適切に発見できれば、中間期がんが見つかるケースは減る可能性があります。
「中間期がん」を早期発見
そうしてわかったのは、MRI検査を受けたグループは、マンモグラフィーのみのグループに比べて、次の定期検診までに中間期がんと診断されたケースが少なかったこと。MRI追加グループの中間期がん検出率は検診1000件当たり2.5件、マンモグラフィーのみのグループでは5件だったのに対し、リスクが半減しました。MRI検査で疑わしい異常が見つかったために減った可能性などが考えられます。
デンスブレストの人で、MRI検査が乳がんの早期発見につながったという結果ですが、本当に乳がんの「生存率」を高めるほどの効果があるのかはさらに調べる必要も。公式にMRIが推奨されるには、生存率が上がるかどうかがポイントになるのです。研究グループはMRIで早めに見つける意味は大きいと推測。今後、効果が証明されれば、乳がんの検査にMRIの活用が広がるかもしれません。
<参考文献>
Supplemental MRI Screening May Benefit Women With Extremely Dense Breasts
https://www.breastcancer.org/research-news/supplemental-mri-benefits-extremely-dense-breasts
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1903986