女性に多い便秘。慢性化し過ぎて、いつものことだからと放っておいたりしていませんか? また自分が便秘だと気づいていない“隠れ便秘”の人も少なくないそう。便秘を放っておくと腸内環境が悪くなり、命にかかわるような怖い病気のリスクが高まるなど、全身の健康に影響が及んでしまうことも。そこで、簡単かつ効果的に腸内環境を整える最新の腸活習慣について、大腸の専門医・山口トキコ先生にお話をうかがいました。
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じつは“隠れ便秘”かも! 毎日お通じがあっても油断は禁物
便秘というと、「排便が3日以上ないこと」と思っている人もいるのではないでしょうか。じつはこれは昔の話。「現在、便秘とは『本来、体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態』と定義されています。つまり、毎日排便があっても残便感があったり、便意があるのに出にくい、少ししか出ない、などという人も便秘なのです」(山口先生)
「毎日お通じがあるから安心」と思っていた人も、じつは“隠れ便秘”だったというケースもあるかもしれませんね。しかも、便秘に慣れてしまい、不調があったとしてもいつものこととやり過ごしてしまう人も少なからずいるそうですが、これは危険信号です!
便秘を一刻も早く解消しなければいけないワケは?
便秘といっても感じる負担は人ぞれぞれですが、下記のような精神的、身体的な影響は少なくありません。
●生活の質の低下
「たとえば、お腹が張って苦しい、体が重い、スッキリ感がなくてイライラする、集中力が出ない、仕事などのパフォーマンスが落ちるなどの影響が考えられ、実際に生活の質が低下してしまうことが研究データからもわかっています」
●病気、死亡リスクが上がる
「腸内環境が悪い人は、肥満や糖尿病、心臓疾患、がんなどになる可能性が出てきます。最近の研究では、便秘の人は便秘のない人と比べて15年後の生存率が低下するという報告が出ているほか、あらゆる原因による死亡リスクが上昇することもわかっています。しかも、便秘薬を使用してもその死亡リスクの上昇は変わりません」
あなたの腸内は大丈夫? セルフチェックしてみよう
便秘は腸内環境が悪化しているサイン。まずは以下のチェックリストで、自分の腸内環境を確認してみましょう。
当てはまる項目が4つ以上になってくると腸内環境が悪い状態。8個以上の人はかなり腸内環境が悪化しています。3つ以下で★マークの項目にチェックがついた人も、腸内環境を改善する生活習慣を心がけましょう。
腸内環境を整えるには、なんといっても「大腸」が大切!
“腸活“とひと口にいっても、ただヨーグルトを食べればいい、腸にいいことをすればいい、というわけではありません。効果的な腸活のポイントは「大腸」と「ビフィズス菌」です。
まずは、大腸のことからご紹介しましょう。
腸は小腸と大腸に分かれます。食べものの栄養を吸収する小腸に対し、食べものの水分を吸収し便をつくるのが大腸です。さらに病原菌から体を守る働きもあり、免疫を働かせて体内に侵入した病原菌を攻撃する小腸に対し、大腸は腸管にバリアを張って小腸を通り抜けた病原菌をブロックする、いわば最後の砦。これも大腸の腸内環境が良好に維持されているからこその働きです。
そして、その大腸の働きに貢献しているのが腸内細菌です。
「1000種類、100兆個以上いるとされる腸内細菌は主に大腸に生息し、腸内フローラを形成します。こうしたことからも、腸活で大切なのは『大腸の腸内環境を整えること』なのです。しかし生活習慣などが原因で腸内環境が乱れ、便秘になると、さらに腸内環境の悪化が進むという負のスパイラルに。こうした悪循環を断ち切るためには、早めに便秘を解消することが大切です」
大腸で活躍するのは「ビフィズス菌」!
「腸活」といえば乳酸菌を思い浮かべる人も多いかもしれませんが、特に大腸ケアに欠かせないのはビフィズス菌です。「大腸に生息するビフィズス菌と乳酸菌の比率は、ビフィズス菌が99.9%と圧倒的。しかし、年をとるごとに大腸のビフィズス菌は減ってくるので、日ごろからヨーグルトなどでとり入れることを習慣にするとよいでしょう」
ビフィズス菌がスゴイのは腸内環境を良好にしてくれるのはもちろんのこと、健康に役立つ物質(短鎖脂肪酸)をつくり出す働きがあること。ビフィズス菌が多く活発な腸内環境ほど、短鎖脂肪酸の量が多いことがわかっています。
さぁ、次からは具体的に大腸ケア・腸内環境の改善に役立つ生活習慣のポイントをご紹介しましょう。
大腸ケア習慣①:腸内環境の改善は「ビフィズス菌のヨーグルト」で!
ヨーグルトは手軽に腸にいい善玉菌がとれる食べものです。さまざまな種類の商品があり過ぎて迷いがちですが、大腸に効果的なのはビフィズス菌入りのヨーグルトです!
「ヨーグルトにはビフィズス菌入りのものとそうでないものがあるので、便秘改善や大腸ケアにつなげたい人は、ビフィズス菌入りヨーグルトを選ぶとよいでしょう。ビフィズス菌入りのヨーグルトをつくるのはとても大変だと聞いています。なぜかというと、ビフィズス菌は酸素が嫌いという性質があるため。それだけに貴重です。ビフィズス菌入りヨーグルトは、発酵食品として乳酸菌も一緒にとれるので腸全体を活性する相乗効果が期待できます」(山口先生)
食べるタイミングはいつでも構いませんが、胃酸が薄まる食後にとると、ビフィズス菌が生きたまま大腸に届きやすくなるそう。
「手軽に朝食代わりにするなら、ビフィズス菌入りヨーグルトにドライフルーツやビフィズス菌のエサになるオリゴ糖をプラスするのもオススメです」
大腸ケア習慣②:食物繊維のなかでも水溶性食物繊維をたっぷりとろう!
ビフィズス菌をとったら、大腸で活躍してもらうために、今度は育てることが大切です。
食物繊維には穀類、野菜、豆類などの不溶性食物繊維と、こんぶやわかめなどの海藻類、さといもやオクラなどの水溶性食物繊維があります。不溶性は便の量を多くし、水溶性はビフィズス菌をはじめとする善玉菌のエサになります。そこで、特に大腸の腸内環境をよくするために意識してとってほしいのが水溶性食物繊維。小腸で消化されずに大腸まで届くので、ビフィズス菌を育てるのに効果的です。
「水溶性食物繊維はふだんの生活で不足しがちなので、意識してとる工夫をしましょう。なかでもオススメなのが押し麦です。白米に混ぜたりしてとるとよいですよ。また、わかめの酢の物など副菜を1品追加したり、みそ汁に海藻をたっぷり入れたりするのもいいですね」
大腸ケア習慣③:ひと口30回を目安に、よくかむこと!
大腸ケアでは、よくかんで食べることも効果的です。
「最低でもひと口30回かむようにしましょう。よくかむことで副交感神経が優位になり、腸の動きが活性化します。また唾液や胃液といった消化液の分泌が促進されるので、消化もスムーズになります。毎日忙しいとつい食事に時間をかけなくなってしまいますが、よくかむのを心がけるだけで大腸にとってはかなりよい効果があるといえます」
そのほか、お腹のマッサージや運動をプラスしてもOK!
マッサージは大腸にそって、手のこぶしでぐっぐと押しながら時計回りに手を移動させるのがポイント。特にへその斜め左下あたりはS状結腸といって便がたまりやすいところなので、しっかりめに行いましょう。またウォーキングなど軽く汗ばむくらいの運動もオススメですが、必ず休憩をしっかりとることが大切。「そうすることで、副交感神経が優位になって、腸の動きがよくなりますよ」
いかがでしたでしょか? ぜひ、便秘の人はもちろん、便秘ではないと思っている人も大腸ケアを習慣化して、健康でイキイキした生活を送りましょう。
取材・文/奥沢ナツ イラスト/ヤマグチカヨ
提供/「大腸劣化」対策委員会 https://daicho-rekka.jp/