ガツガツして、うぬぼれが強く、不公平で、不誠実。そんな「イヤな人」とはできるだけかかわりたくないものです。しかし職場などでは「なぜこんな人が?」と思わせるような人がどんどん出世していくケースも。そこにはいったいどんなトリックが隠されているのでしょうか。答えは、巧みな社交スキルにあることがドイツから報告されています。
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職場の同僚と上司からの評価を分析
イヤな人ほど出世していくといわれることがあります。その背景にある要素として、社交性があるようです。社交スキル自体、職場での人間関係をスムーズにするのにとても役に立つもので、他人との壁をとり払い、日常生活で余計なストレスをためないためには大事。一方で、相手をだましたり、裏切ったり、不誠実を覆い隠したりするのも、社交スキルがなせる業という側面もあります。
このたびドイツのボン大学の研究グループは、いくつかの職場でインタビューを実施し、こうした職場での社交スキルと評価との関連性について分析しました。参加者に対して匿名によるオンラインの調査を行い、他人と比べた「正直さ」「謙虚さ」を自己評価してもらいました。次に同僚に参加者の社交スキルについての情報を提供してもらい、それから上司に参加者の仕事を評価してもらいました。研究グループは、このような参加者+同僚+上司の3人1組からなる203組のデータを収集しました。
だますのがうまい?
研究グループの調査からわかったのは、嫌われ者でも、同僚から社交じょうずだと思われている人は上司から有能と評価され出世しているという事実です。調査の結果で見えたのは、性格診断テストにおいて、有害な影響があると判断されていた人は「正直さ」「謙虚さ」のスコアが低いことでした。研究グループは「このような性格の人は、常に自己中心的に物事を考える傾向がある」ことを指摘。「すぐれた社交スキルをもつことで、他人を欺くことができる」といいます。
一方で、根っからの正直者で謙虚な人はチームの一員として歓迎されていることも確認されました。誰にでも公平な態度をとり、自分の成功をほかの人と共有しているのです。
そのうえで、上司の評価を併せて見ていくと、イヤな人とみられている人は、不誠実さや傲慢さを社交スキルでカバー。逆に、誠実で謙虚な人は、社交スキルの低さをまわりからの評価でカバーしているという分析結果に。社交スキルは「人をだますこと」「真実をごまかすこと」を隠す側面があるわけで、ある意味で「両刃の剣」になるようです。職場のパフォーマンスを正当に評価するうえで、こんな研究結果は参考にできるのかもしれません。
<参考文献>
Why dark personalities can get ahead: Extending the toxic career model
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0191886919307317
“Toxic,” but still successful professionally?
https://www.uni-bonn.de/news/065-2020