最近よく老後のための資金形成のひとつとして話題にあがる「iDeCo(確定拠出年金)」。お得だから始めたほうがいい!と聞くけど、本当にそうなのでしょうか? 今回は「iDeCo」のメリットや注意点について、ファイナンシャルプランナーの横川楓先生にお話を伺いました。
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「iDeCo」とはどんな制度?
会社員でもフリーランスでも、みなさんすでに年金を支払っていますよね。20歳以上の人は、すべての人が国民年金、会社員であれば厚生年金を必ず支払わなければなりません。
不況や少子高齢化で、私たちの老後にもらえる年金が少なくなってしまうかもしれないという不安もある中、そういった必ず支払わなければいけない年金に加えて、さらに老後にもらえる年金を個人で積み立てていける制度が、iDeCoです。自分で毎月将来の年金のための掛け金を払って、投資商品を選び、運用していきます。
「iDeCo」は税金がお得になるって本当?
「iDeCo」には、いくつかの税金面でのメリットがあります。
まずひとつ目が、普通の投資であれば運用して得た利益に対して20%の税金が引かれますが、iDeCoはその税金がひかれません。これはつみたてNISAも同じですね。つまり、利益はそのまま将来受けとることができます。
また、将来受けとる際にも控除を受けることができます。受けとり方によっていくらまで非課税というのが決まっているので、最終的に自分のiDeCoの金額がいくらかによって考える必要があります。
これらは将来受けとるときのメリットですが、今現在、受けられる恩恵もあります。毎月の掛け金が全額所得控除となるということ。年末調整や確定申告で控除証明書を提出することで、税金が還付されるかもしれません。将来だけでなく、掛け金を払う今もメリットがあるというのはうれしいところですよね。
「iDeCo」を始めるのに注意しなければならないことは?
まず、毎月の掛け金は原則として60歳までは引き出せないということ。厳密にいえば、途中で解約しても「脱退一時金」をもらうことができるのですが、厳しい条件があります。そして、毎月の掛け金は最低でも5000円から。つまり、最低でも年間6万円、60歳まで引き出せない流動しない資産を持つことになります。必ずしも払っている分、すべて税金でお得になるというわけではなく、年収によっては年間で払っている掛け金よりも今所得控除になる金額のほうが少なくなることにも注意が必要です。
将来のためにもなるし今も税金面でのメリットがあるし、せっかくなら毎月たくさん運用していきたいという人も中にはいるはず。iDeCoは専業主婦、会社員、公務員など、どのような属性か、勤め先ですでに企業型確定拠出年金に加入しているかによって、毎月の掛け金の上限が決まっています。会社員であれば毎月1、2万円程度の上限です。一方で、自営業で国民年金保険料を支払っていなかったり、企業型確定拠出年金に加入している場合にはiDeCoの加入が認められない場合もあります。
手取りがとても少ない中で最低でも毎月5000円というのが苦しいのであれば、まずは自由に使うことができないiDeCoよりも、収入を増やしたり、貯金をしっかりして普通に生活していくための余裕資金を調えることが大切です。
とはいえ、なかなか老後のためだけにといってお金を貯めるのは難しいもの。そういった意味では、毎月必ず決まった額を老後の掛け金とすることができ、60歳まで引き出せないという仕組みは、貯金が苦手な人にとってもちょうどいいはず。まずは自分の資金状況を考えて、ぜひ始めてみてくださいね。
イラスト/うつみ ちはる