世界中に猛威を振るう新型コロナウイルス。#Stay Homeが世界共通のキーワードになる今、世界各国のみなさんの「おうち時間」をのぞいてみたい! ということで各国、各都市のライターさんにレポートしていただく連載をスタートします。1回目はヨーロッパにあるベルギーからの素敵なおうち時間の過ごし方です。
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春の楽しみ、畑仕事にますます精が出る毎日
コロナ猛威にさらされる欧州。筆者の住む小国ベルギーも例外ではありません。最近では、単位人口あたりの死亡者数が不名誉な単独トップとなり(4月23日現在、人口100万人あたり560人)、世界の注目を浴びるようになってしまいました。だが、これは介護ホームで亡くなる方々の大半を「コロナの疑い」として広く勘定に入れているためとして、政府も国民も落ち着き払っています。むしろ、いよいよ5月4日からスタートとされる段階的解除に向けて人々の心がうきうきはずみ始めています。
というのも、ベルギー人がこよなく愛する「おうち時間の過ごし方」の筆頭は、なんといっても「庭仕事」。4~5月は最も大事な季節。近隣欧州国と比べて、手頃な価格で都市郊外の庭付き一軒家に住むことのできるベルギーでは、イースターの頃は、老若男女、誰もが一斉にぼろぼろの服に長靴のいで立ちで野良仕事を始めます。季節ごとの花々を庭一杯に咲きほこらせる人もいれば、コンポストやミツバチまで用意して無農薬野菜作りに励む人もいます。
そんな国民性だから、封鎖解除に先立って、18日から園芸ショップ・ホームセンターの開店が許可されると瞬く間に行列ができました。Social Distancing(社会的距離)を守った長い長い行列は今も続いています。
わが家の夫もそんなベルギー人の一人。数年前から、それほど広くもない庭はすっかり野菜園と化し、トマトやキュウリなどの夏野菜を育てるためのグリーンハウスも所狭しと並んでいます。おかげで毎年11月頃までは、野菜を買う必要がありません。
封鎖措置ですっかり自宅軟禁となった今年は、農夫ぶりに拍車がかかる。家の中は、どこもかしこも種から発芽させた苗だらけ。「野菜作りマスター」の資格までとる入れ込みぶりの夫は、「今回の猛威が去っても、野菜の自給は死活問題になる」とぶつぶつ言いながら、コロナ禍で与えられた時間のすべてをうれしそうに野菜作りにつぎ込んでいます。
さて、そんな夫を助けながらも、私自身の「おうち時間マイブーム」は、もう一言語へのチャレンジ。ベルギーは英語の通用度も高いですが、正式な国語は蘭語、仏語、独語の三言語。筆者はこれまで英語と仏語で切り抜けてきましたが、在住30年を迎え、仏語より話者人口の多い蘭語も学ばねばと思っていました。突然、社会から遮断されてできた自分の時間を前に、「今やらなくていつやるの」と覚悟を決めました。娘ほども年の違う若い先生を相手に、Google DocumentとWhatsApp などのアプリを駆使しながら、さび付いた脳を刺激する快感。コロナ後のクアトロリンガル・デビューを夢見て。
写真/©Taz 文/佐々木田鶴