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職場で不正行為が増える背景には何がある…? 負のスパイラルを断ち切るために知っておきたいこと
職場でのストレスには人間関係が原因となるものが多いのではないでしょうか。職場でのいじめも明らかにそのひとつ。いじめの被害者は、怒り、恐怖、悲しみといったネガティブな感情にさいなまれるもの。いじめのターゲットにされた人は健康状態が悪化。さらにそれにとどまらず、職場での素行にも悪影響が出てくるようです。職場がイヤな雰囲気になっているとしたら要注意。悪循環には早めに終止符を打つのが大切です。
Contents 目次
ネガティブな感情が悪意に?
職場でのいじめや暴力は、職場環境の「赤信号」。日本でも厚生労働省で「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」がまとめられたことがあります。職場のパワハラ予防や解決についての取り組みを整理したものでした。職場でのいじめは、被害を受けた人の心を傷つけ、幸福感や自尊心の低下、欠勤、健康上の問題、燃え尽き症候群の発症などにかかわるとされます。職場でのいじめやそれが原因の精神的苦痛によって、睡眠障害や頭痛といったような身体的症状が起こることも。さまざまな職場の問題を引き起こしかねません。
そんななか、英国イーストアングリア大学の研究グループが職場でのいじめのターゲットとされネガティブな感情(怒り、恐怖、悲しみ)をもつと、職場で不正行為が生じやすくなる現象を調べています。調査の対象としたのは、欧州労働安全衛生機構が暴力被害の多い職場と指摘した医療現場です。なかでも患者やその親族に加えて、職場の同僚からの被害も発生する看護職員を調査しています。研究グループは855人の看護師を対象に職場でのいじめや心身の健康被害についてアンケートを実施。さらに、同僚を批判したり、ほかの人の物を盗んだりするといった非生産的な行為のほか、患者を拘束したり、医師の許可なく投薬を変更したりする医療における不正行為の発生頻度も回答してもらっています。
怒りと恐怖心が不正行為を引き起こす
これからわかったのは、職場のいじめによって、被害を受けた人の「怒り」や「恐怖」の感情を高め、プロフェッショナルとしての倫理を希薄にさせて、不正行為に走らせてしまうこと。いじめのターゲットにされると、被害を受けた人にはストレスがたまり、怒りの感情が芽生えます。それが衝動的、攻撃的な反応を招いて、仕事の質を低下させるのです。「恐怖」と「怒り」については、被害者の心身の健康を悪化させるばかりではなく、不正行為の増加につながっていました。「悲しみ」の感情は、不正行為とは関係していませんでしたが、健康には最も強く影響を及ぼしていることがわかりました。
対策として研究グループは、「怒り」「恐怖」「悲しみ」といったネガティブな感情がこうした問題を引き起こすことの理解を職場で深めるのが大事だと指摘しています。今回の調査は医療現場でしたが、そのほかの職場においても職場環境が悪くなっているなどの問題が存在するときには、早めに手を打つことが大事だといえそうです。
<参考文献>
Aggression at work can lead to ‘vicious circle’ of misconduct
https://www.uea.ac.uk/about/-/aggression-at-work-can-lead-to-vicious-circle-of-misconduct
Fida R, Tramontano C, Paciello M, et al. ‘First, Do No Harm’: The Role of Negative Emotions and Moral Disengagement in Understanding the Relationship Between Workplace Aggression and Misbehavior. Front Psychol. 2018;9:671. Published 2018 May 11. doi:10.3389/fpsyg.2018.00671
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2018.00671/full
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29867649/