多くのオフィスワーカーにとって書類を書くことから電子メールのやりとりなど、一度に複数の処理をすることは一般的です。今では人手不足だったうえに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の問題も重なって、ひとりが手がける仕事が一層多岐に及んでいる面があるかもしれません。職場環境の心理状態を調べたところ、作業がたびたび中断してしまうことで、悲しみや恐怖の感情につながってしまうとわかりました。ストレスの対処を考えるうえで気にしておくとよいかもしれません。
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マルチタスクは表情にどう影響?
ひとりでさまざまな種類の仕事をこなしていくマルチタスク。もともと最近まで企業は効率を追求してきた結果として、人手不足が顕著になっていました。そうして一人当たりの仕事量が増える傾向がありました。一度に多くの種類の仕事をこなすのは大変です。それはメンタルに悪影響を及ぼすことがあるのでしょうか。
このたび米国カリフォルニア大学を中心とした研究グループは、ワーカーの表情の分析をして、マルチタスクの影響について調べました。2つのグループをつくり、ひとつのグループは文章を書く仕事をしてもらい、最初だけメールによって作業を中断。もうひとつのグループは文章を書く仕事をしてもらうのですが、頻繁にメールにより作業を中断するようにして、文章を書く仕事を邪魔したのです。そのうえで、2つのグループの表情の違いを比べました。
職場の雰囲気を無意識に変えているかも
こうしてわかったのは、メールによる作業の中断が1回だけの人では表情がほぼ自然なままだったのに対して、何度もメールで中断されたグループでは表情に怒りの要素が現れるということ。1回ですべてのメールの処理を終えたほうが、表情への影響はないわけです。
もっともメールに返信することによる表情に見られた嫌悪感は長続きしないということ。研究チームはメールに返信すれば解決されるといいます。問題は通常のオフィスなどでは可能というわけではないとも。
研究グループは、マルチタスクを強いられると、悲しそうな表情が見られるといいます。さらに、集団でこうしたマルチタスクを強いられると、悲しみと恐怖の表情が混じり合ってくるといいます。マルチタスクを強いることで、精神的にプレッシャーが加わって、ストレスを上昇させるというのです。マルチタスクによって、こうしたネガティブな感情が続く問題を示しているわけです。職場の雰囲気を悪くする原因にもなり得るようです。
今は在宅勤務が一般化してしましたが、これから出勤する人も増えてきて、たまった仕事を次々とこなさなければならない人も増えそう。マルチタスクによって起きてくる、職場の雰囲気を悪くするという面は、気をつけておくとよいかもしれません。研究グループは、こうした変化が無意識に広がる可能性があると注意を促しています。
<参考文献>
Multitasking in the workplace can lead to Negative Emotion
https://uh.edu/news-events/stories/2020/may-2020/05112020-multitasking-in-workplace-and-negative-emotions.php
Emotional Footprints of Email Interruptions(CHI ’20: Proceedings of the 2020 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems)
https://dl.acm.org/doi/abs/10.1145/3313831.3376282