将来に対してどれくらい楽観的、あるいは悲観的か──。もちろん個人差があるでしょうし、人生ではいろいろな出来事に見舞われますから、状況しだいで変わるはず──そう思いがち。ですが、このたび、どうやら人間は、おおむね将来を楽観して人生の大部分を過ごしているようだとの研究報告が。自然に任せ楽観的にいるのがトクかもしれません。
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3か国7万5000人近くの調査
人によって楽観的な人と悲観的な人がおおまかに分かれている印象はあるかもしれません。いつも笑っている人、いつも顔をしかめている人、まわりにも当てはまる人はいるのではないでしょうか。今回、人格(パーソナリティ)心理学の専門誌『ジャーナル・オブ・リサーチ・イン・パーソナリティ(Journal of Research in Personality)』で報告されたのは、米国のほか、オランダ、ドイツで16〜101歳の合計7万5000人近くを対象に行われた大規模調査の結果です。
米国やカナダの国際的な研究グループは、人々が人生においてどれくらい楽観的か、また大きな出来事(結婚、離婚、新しい仕事、引退、健康上の変化、パートナーや親、子どもを失うなど)に応じ、そこからどれくらい影響を受けるかを調べました。
悲劇的な出来事があっても立ち直る
ここから見えてきたのが、15歳くらいから60〜70歳になるまで、人々はしだいに楽観的になっていくということ。ドイツでは少し時期に違いが見られたものの、おおむね将来に対して楽観的な傾向は若い成年期を通して強まっていき、中年期に着実に横ばいに。その後、老年期に低下するというパターンとなっていました。大方の予想を裏切り、驚いたことに、近親者の死や離婚といったつらい出来事も、将来に対する見通しに本当に影響するというわけではなかったのです。
老年期に入ると、楽観的な傾向は弱くなるのですが、これは主に健康上の心配と、人生の大部分がすでに過ぎ去ってしまったという認識によるもの。引退したあとは、旅行や趣味で生活は充実するというより、人生の見通しが見えづらくなるのかもしれません。それでも、人々は人生のかなりの部分を楽観的に生きているというのが研究のまとめです。
研究グループは、病気になったり、悲劇的な状況に陥ったりしても、人々が根本的に変わってしまうわけではなく、「人生をポジティブに捉え、将来に期待している」と説明しており、今回の研究では「人々の立ち直る力が証明されたことがもっとも重要」と述べています。現在はいろいろつらい状況でもありますが、悲観的になることがあっても、将来に目を向け、明るく生活するのがおトクといえるかもしれません。
<参考文献>
STUDY SHOWS HUMANS ARE OPTIMISTS FOR MOST OF LIFE
https://msutoday.msu.edu/news/2020/study-shows-humans-are-optimists-for-most-of-life/
Oh, Jeewon & Kim, Eric & Schwaba, Ted & Krämer, Michael & Richter, David & Smith, Jacqui. (2020). Changes in optimism and pessimism in response to life events: Evidence from three large panel studies. 10.31234/osf.io/sc9dh.
http://dx.doi.org/10.1016/j.jrp.2020.103985