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「してあげたこと」は「してもらったこと」の35倍覚えてる! 期待しがちな親子関係をスムーズに保つ方法は?
「私は他人のいいところを見つけるのが得意なの」という人でも、自分の子どもとなると、そうは言っていられないことも多いのではないでしょうか。欠点ばかりに目がいったり、あるいは相手の能力に過度に期待してしまったり。逆に、自分に理解を示してくれない親の存在に悩まされていることもあるでしょう。親子という身近すぎて悩ましい人間関係。どんな距離感が“ほどよい”のでしょうか。著書累計220万部のビジネスコンサルタントで、外資系教育会社時代に世界142カ国中2位の成績を納めた女性営業のカリスマ、和田裕美さんにうかがいました。
Contents 目次
親子関係は親の期待値が上がりがち
前回はパートナーとの関係についてお話ししましたが、今回は親子の関係について考えてみましょう!
親子関係は、パートナーに対するよりもさらに期待度の上がる関係です。特に、親の子に対する期待がとても強いですよね。
アメリカの心理学者、トラフィモウ・アーメンダリッツが400人の大学生を対象に行った調査があります。簡単に言えば、「人にしてあげた親切な行動」と「人にしてもらった親切な行動」を書き出してもらい、その割合を調べるというもので、その結果、人は「人にしてもらったこと」の35倍も、「人にしてあげたこと」を覚えていることがわかったそうです。
子育ての中では、親が子どもにしてあげることって本当に多いですよね。それをまた、親はさんざん、覚えているわけですよ、子どもの35倍(笑)。育ててあげた、あのときこうしてあげた、大学まで行かせてあげた……、してあげたことを事細かに覚えている分、子どもが恩返してくれるんじゃないかと、つい期待値が上がってしまいがちです。そこで、子どもにはこういう仕事をしてほしい、こういう結婚をしてもらいたいというように、子どもの人生に介入しやすくなります。
お互いが自由になったとしても愛情は切れない
そういう背景がありますから、自分の思い描いた人生を子どもが歩まなかったら、「期待通りに育たなかった」「世話したかいがなかった」と思ってしまう。それは親にとってはものすごくつらいことだと思いますが、裏を返せば、子どもが自分の個性を生かし、自分の人格を持って自立し、自由に生きている、という喜ばしいことなんです。
親子とはいえ人間は個人個人の存在だ、という気持ちをどこかで持っていないと、コントロールしようと執着したり、依存したりする関係になってしまいます。そういう影響かどうか、大人になって、親が嫌いだ、苦手で距離を置いている、という人って案外、いますよね。
子どもが親を敬遠し、親は子どもを見るたびに「期待はずれに育ててしまった自分」と向き合うことになり…そのような親子関係になってしまうと、お互いが不自由になり、ぎくしゃくする時間も増え、結局、親も子どもも損をするハメに陥ります。
そうではなく、お互いが自由な存在でいるほうが、恩着せがましさもなくなり、感謝が生まれます。親が「子どもはいたけど、あまりガマンせず自由に仕事もして、けっこうほったらかしだったな」と思うと、子どもの行動にも寛容になり「あなたも自由にしてね」という気持ちになれますし、子どものほうでも「いろいろ好きなことさせてもらったから、お母さんももっと自由にしてね」という気持ちが生まれます。
「あなたのため」と子どもの世話をし、その分見返りを求める親と、自分の本意ではないけれど親の言いつけに従っているうちに、誰かの指示がなければ決められない人間になってしまった子ども、これはお互いに依存し合った関係です。親と子が一定の距離を保ち、自立し合って自由でいるほうが関係性はラクだし、最終的に幸せになれると思います。お互いが自由になったとしても愛情は切れないということに確信をもてるといいですね。
また、自分が子どもの立場として、親との折り合いがどうしても悪いという場合。「親にはこうあってほしい」という期待を抱きがちですが、ここでも「人間は個人個人の存在だ」という気持ちが大切です。たとえ親が変わらなくても、親は親として別の人間なんだから、親に対する執着を外そう、自分の人生を楽しもう、というふうに考えるほうが、関係はほぐれていくように思います。
子どもが人間関係で悩んでいる? どうしよう……
子育てをしていると、子どもが人間関係で悩んでいるようだがどうしたらいいかわからない、というときもあるかもしれません。
たとえ学校でいじめられていたり、人間関係で悩んでいたりしたとしても、子どもはなかなか本音を言いません。子どもとはいえ、物ごころがついたころには大人と同じような感情を持っていますから、迷惑をかけたくないとか、心配させたくないとか、そんなことは言えないとか、いろいろ考えています。
そういうことにまったく配慮せずに、「最近、元気がないけどいじめられているんじゃないの?」などと、真正面からずけずけ言っても子どもは心を開きません。ムリに言わせようとすると、よけいにかたくなな気持ちになってしまう可能性だってあります。
理解し信用して解決策を探る
子どもに悩んでいる様子があれば、周りの人から情報を集めるなどし、子どもにはたとえ話や「こういうことがあったらこんなふうに考えるといいかもね」といった仮説で話をふってみるのがいいかもしれません。「自分の子どものころはそんなこと当たり前だったんだから、もっとしっかりしなさい」などと経験値から説教をしても、昔と今では学校も環境も変わっていますから、意味がありません。
先ほどもお話ししたように、子どもと一定の距離を保つのは大切です。でも一方で、子どもの逃げ場を作ってあげるのは、親として大切な役割であるように思います。子どもの外側の言動だけを見てしまうと「自分がきつく言って立ち直らせないと、一生、このままなんじゃないか」といった不安のエネルギーが膨らんでしまいがちですが、頭ごなしにあれこれ言う前に、「この子は自分の力で立ち直れる」「立ち直って元気になれる」と、自分の子どもを信用し、「そのための基地になってやろう」という姿勢で見守ってあげると、子どもとの間に信頼関係が生まれるのではないでしょうか。解決策を探るのは、それからでいいと思います。
取材・文/寺田千恵
参考書籍
『人の心を動かす話し方』(廣済堂出版)