今の時代は幅広くコンプライアンスが求められますが、それは会社関係だけではありません。一見、無法地帯に思える恋愛においても、そうなのです。「自分の常識ではセーフだとしてもアウトだと思う人がいる、そして法律でもアウトなことがある」と弁護士の菊間千乃さん。著書の『いまはそれアウトです! 社会人のための身近なコンプライアンス入門』(アスコム)からお伝えしていきます。
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【ケース1】出張先のホテルで不倫相手と会う
【出張の宿泊先に不倫相手を招き入れたのを取引先に見られ、会社に苦情が来て大問題に。とはいえ逢瀬は仕事を終えたあと。不倫はプライベートのことですし、問題ないですよね?】
→ 「不倫」が会社の懲戒処分の対象になる可能性もあり!
「不倫は社会的に許されるものではなく、法的にも損害賠償責任を生じさせる行為です。とはいってもあくまでもプライベートの問題。しかも労働時間外であれば、問題ないと考えるかもしれません。しかしながら、このケースでは、取引先に不倫現場を目撃されており、会社にも苦情が来ているため、会社の名誉・信頼への影響が否定できません。
使用者である会社は、労働者の職場外における職務以外の行為であっても、企業の社会的評価の低下につながる恐れがあるものについては一定の限度で就業規則上規制し、懲戒事由とすることができると考えられています。私生活上の行為と思っていても、会社からまったく責任を問われないとは限りません。プライベートな行為が、会社に損害を与える可能性があることを認識する必要があります」(菊間さん)
【ケース2】同棲を一方的に解消する
【同棲5年、財布も共有する恋人に別れを告げたら、慰謝料を請求されました。結婚を意識してはいましたが、具体的に約束したわけでもないのに、納得いきません】
→ 内縁関係の不当な破棄で 慰謝料請求の可能性あり!
「同棲中の男女の関係が内縁関係にあたる場合、一方からの不当な関係の破棄は、不法行為となり慰謝料請求が認められる可能性があります(民法709条)。
内縁関係とは結婚の意思をもって夫婦として共同生活をし、社会的にも夫婦と認められているものの、婚姻届を提出していない関係のことをいいます。婚約していた、同棲が長期にわたっていた、家計をひとつにしていた、親族に婚約者として紹介していた、冠婚葬祭に夫婦として出席していたなどの事実があると内縁関係にあったと認められやすくなります。画一的な判断は難しいですが、この例よりもっと短い、2年から3年の同棲に、ほかの事情を考慮して内縁関係を認めた裁判例もあります」
【ケース3】夫婦ゲンカでつい手を出してしまう
【ここ数年、妻とはケンカばかり。あまりの罵詈雑言に感情的になってしまい、つい一発、手が出てしまいました。DV(ドメスティック・バイオレンス)で訴えられないかと心配です】
→ 傷害罪や暴行罪が成立し得る!
「DVに明確な定義はありませんが、一般的には配偶者や恋人など親密な関係にある、またはあったものから振るわれる暴力、という意味で使用されます。この暴力とは、身体的暴力だけでなく、人格を否定するような暴言などの精神的暴力も含まれます。
このケースのような場合、手を出したのはたった1回と思うかもしれませんが、配偶者や交際相手に暴力を振るう権利は誰にもありません。1回といえども、身体的暴力の場合には傷害罪 (刑法204条)や暴行罪(同法208条)が成立し得ます」
このようにこれまで見過ごされてきたことも、大きな問題に発展する可能性があります。
被害者になってしまった場合でも、コンプライアンスを知っておくことで自分の権利を回復し自分を守ることができるといえそうです。
文/庄司真紀
参考書籍
『いまはそれアウトです! 社会人のための身近なコンプライアンス入門』(アスコム)