ふつう「ナルシスト」といえば、いわゆる「自分大好きな人」をちょっと揶揄して使ったりしますよね。このたび、そのような人は選挙の投票やさまざまな嘆願書の署名などの行動が活発だという海外からの報告がありました。SNSなどではクラウドファンディングのような活動のほか、逆にネガティブな炎上のような動きもありますが、背景にはそんな個性の違いもあるのかもしれません。
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ナルシストは協調性に問題?
このたびのコロナ禍による混乱がきっかけのひとつになって、SNSなどでもいろいろな議論の火種が増えているように感じます。いわゆる「炎上」のような動きも見てとれます。
建設的な話し合いならいいですが、ケンカになると問題です。そうした社会派の活動と関係しているのが「ナルシシズム」あるいは「自己愛」という特性だといいます。心理学では「利己的、権利意識が強い、他者への共感が欠如している、賞賛を必要とするなどを併せた特性」をいうようです。ナルシストというと、人を少しからかっていうこともあるかもしれませんが、ナルシストのレベルが高くなると、主張が強くなり、協調性や寛容さが減り、対立や争いが増えるのではと指摘されることも。
今回、米国のペンシルベニア州立大学とデンマークのコペンハーゲンビジネススクールの研究グループは、両国の合計5000人近くからさまざまなデータを集め、ナルシシズムと政治的な活動との関連性を分析しています。
「自足感」が強いとあまり政治参加しない
ここから見えてきたのが、ナルシシズムの傾向しだいで、人の行動には違いが出てくるということです。まず、「優越感」と「権威/リーダーシップ」といったナルシストの意識が強い人ほど政治的な行動に積極的でした。いわば意識の高さは、行動的になりやすいといえるのかもしれません。一方で、「自足感」という自分の現状に満足している感覚が強い場合には、そうした活動に消極的でした。意識の高さと、自分の状況への満足感というのは違いがあるようです。
研究グループが心配しているのは、政治的な活動が大きな人にナルシストの傾向が強い人ばかりだと、自分の利益や地位ばかり意識する人に有利な意見が世の中にはびこってしまう可能性があることです。もっといろいろなパーソナリティの人々の声が届きやすい仕組みが必要と研究グループ。人とのコミュニケーションで前に出ることが多いと意識している人は、自分自身はナルシストの傾向がないか、あるいは自分の利益ばかり主張していないか気をつけるとよいかもしれません。
<参考文献>
Higher narcissism may be linked with more political participation
https://news.psu.edu/story/633025/2020/10/02/research/higher-narcissism-may-be-linked-more-political-participation
Fazekas Z, Hatemi PK. Narcissism in Political Participation. Pers Soc Psychol Bull. 2020 Jun 4:146167220919212. doi: 10.1177/0146167220919212. Epub ahead of print. PMID: 32493116.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32493116/
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0146167220919212