お金で買えないものといえば、「幸せ」もそのひとつかもしれません。お金があれば、生活に不自由はしないですから、「幸せ」とは無縁でないはず。ただ、お金があるかどうかは、幸福感が充足されるためにどれほど重要なのでしょうか。このたび海外の研究では、むしろお金のない状態のほうが、幸福感が満ちあふれる場合もあると報告しています。幸せに暮らすヒントはそんなところから得られるのかもしれません。
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幸せはお金とどれくらい関係する?
収入が増えると、好きなものが買える、さまざまなサービスを利用できるなど、生活の自由度が増します。それは幸福感を得るきっかけにはなるでしょう。ただ、一方ではお金があっても満たされないという考え方も。お金はないと困りますが、あったらあったでさらに多くを求めたり、新しい悩みごとにつながったりと、逆に不幸せを招く結果になることもあるでしょう。金銭的な充足と幸せの度合いがどのように関係するのかは、見えにくい問題といえるのかもしれません。
このたびカナダやスペインの国際的な研究グループは、世界の国々のなかでもいわゆる経済的に恵まれていない国の人々を対象に、金銭的な充足と幸福感との関係について分析しました。対象としたのは、世界的にも開発の遅れていると考えられる、漁業で日々の糧を得てほぼ自給自足の生活を送っているソロモン諸島と、もう少し経済的に進んだバングラデシュです。研究グループは数か月間、現地に滞在して、20代から50代初めくらいまでの合計700人近くに聞き取り調査を実施。気分やライフスタイル、収入などから幸福感を評価しました。
幸福感の理由は「家族」と「自然」
こうした現地調査からわかったのが、調査対象となった大半の人々が経済的に恵まれていなくても高いレベルの幸福を感じていたことでした。特に幸福感が高かったのは自給自足の漁村に住む人々でした。その水準は世界でもトップランクの幸福度を保っているとされる北欧のスカンジナビア半島の人々並み。理由として見えたのは、家族と一緒に過ごす時間が長いこと、自然とふれ合うことです。逆に、魚の取引などでお金のやりとりをするバングラデシュの町では、幸福度は低めになる結果となりました。
これらの結果から研究グループは、最小限の貨幣経済を営んでいるような、経済発展から遅れたような地域でも高い幸福感を得ることが可能であると結論づけています。収入のあるなしにかかわらず、安全、快適で、人々が強く結びついた地域社会で自由に暮らしを楽しむことができれば、幸福感につながるという結果です。こうした発見は、日本であっても、幸せを得るためのヒントになるのかもしれません。
<参考文献>
Happiness really does come for free
https://www.mcgill.ca/newsroom/channels/news/happiness-really-does-come-free-328342
Miñarro S, Reyes-García V, Aswani S, Selim S, Barrington-Leigh CP, Galbraith ED. Happy without money: Minimally monetized societies can exhibit high subjective well-being. PLoS One. 2021 Jan 13;16(1):e0244569. doi: 10.1371/journal.pone.0244569. PMID: 33439863; PMCID: PMC7806144.
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0244569
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33439863/