新型コロナウイルスの被害を大きく受けた国のひとつ、イタリア。感染による死者数は12万人以上にもなり、現在も毎日1万人以上の新規感染者が出ています。ワクチン接種は急ピッチで進んでいるものの、接種された数は1750万回弱、1回受けた人は国民の20%強(2021年4月26日現在)で、ヨーロッパ近隣国よりは若干遅れぎみ。そこでイタリア政府は、ワクチン接種キャンペーンを積極的に進め、9月までには国民の80%が接種完了の状態を目指します。
そんな中、ファッション大国イタリアの強みを生かした、ユニークなワクチン接種が行われています。
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ワクチン接種に際し、当初、病院以外に専用の会場を新設する予定でしたが、首相の交代により、建設費用の観点から却下になったため、現在あるスタジアムやサーキット場、ミラノの旧エキスポ会場などの巨大スペースをはじめ、教会やミュージアム、そしてヴェネチアではヴァポレット(水上バス)など、いろいろな場所が臨時接種会場になっています。
そんな中、最近、ファッションブランドがワクチンの接種場所として自社所有施設(本社やショー会場となるシアターやガーデンなど)の提供を始めました。
そんな活動に、真っ先に名乗りを上げたのが、カシミアのニットが人気のファッションブランド「BRUNELLO CUCINELLI(ブルネロ クチネリ)」。同ブランドは本社のあるウンブリア州のソロメオ村とその周辺地域を美しい公園として蘇らせるプロジェクトの一環として、「パルコ・デッラ・ベッレッツア」という自然公園を建設。今回、そこをワクチン接種の特設会場として提供しています。ここでは、同社の社員を始め、この地域の人たちのために週に1200本のワクチン接種が行われています。
「ジョルジオ アルマーニ」は、ミラノの本社にある「アルマーニ|テアトロ」をワクチン接種会場として開放すると発表。これは、日本を代表する建築家・安藤忠雄氏が設計したスタイリッシュなスペースで、普段はファッションショーやイベントなどに使われている場所です。
ほかにも、グッチやプラダ、フェラガモなども、スタイリッシュな自社施設を社員の予防接種のために開放するとのこと。
また、モンクレールは、毎日約1万回分のワクチンが投与される予定のワクチン接種会場「パラッツォ・シンティッレ」内の備品を全額負担し、接種に携わる80名以上のスタッフにかかる費用も支援。
イタリアのコロナ禍において、当初からマスクや白衣の無料提供や多額の寄付を行ってきたファッション業界は、ワクチンにおいてもいち早くアクションを起こしているのです。
文/田中美樹