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実は日本の対策は進んでいる!?「食品ロス(フードロス)」の実態と私たちができること

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実は日本の対策は進んでいる!?「食品ロス(フードロス)」の実態と私たちができること

日本における年間の食品ロス(フードロス)は、612万トンにものぼります。これは、日本人一人当たり、茶碗一杯分の食べ物を毎日捨てているのと同じ量。とても“もったいない”ことだと思いませんか?

誰にとっても身近で、一人一人が考えなければならない食品ロスの問題。今回は、食品ロスを専門に研究する愛知工業大学経営学部・小林富雄教授に、日本の食品ロスの現状や、削減するために私たちができることなどを教えていただきました。

Contents 目次

そもそも「食品ロス(フードロス)」って何?

現状を知る前に、まずは「食品ロス」の意味をおさらいしましょう。国によって、その定義は異なるそうですが、今回は日本における食品ロスについて教えてもらいました。

「日本では、食品廃棄物を可食部と不可食部に分けて考えています。食品ロスとは、そのうちの可食部のこと。例えばバナナで言えば、実=可食部、皮=不可食部、にあたるので、廃棄された実の部分が『食品ロス』になります。つまり、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品のことを、食品ロスと呼ぶのです。

日本で食品廃棄物が問題視され始めたのは、2000年に循環型社会形成推進基本法が制定されたことがきっかけです。その基本法によって、食品を含むさまざまなもののリサイクルが進み、2001年には『食品リサイクル法』が施行。日本が取り組むべき課題として、大きく取り上げられるようになりました。

しかしその頃は、『食品廃棄物をリサイクルすること』にスポットが当たっていて、『食べ残しを減らす』ことには、あまり積極的に取り組まれていませんでした。食べ残しを減らすには、人々の生活様式そのものから変えなくてはならないため、とても難しい問題だったのです。

『食品ロス削減』に注目が集まるようになったのは、2015年に国連で採択されたSDGsが一つの大きなきっかけです。当初日本は、ヨーロッパに比べるとそれほど熱心ではありませんでしたが、『食』は誰にとっても身近でわかりやすいテーマということもあり、学校教育などで徐々に取り上げられるようになりました。さらに2019年には『食品ロス削減推進法』が制定。日本でも本腰を入れて取り組もうという気運が、ますます高まっています」(愛知工業大学経営学部・小林富雄先生、以下同)

日本の食品ロスの現状と、これからの課題

SDGsの採択によって、世界的に注目されるようになった食品ロス問題。日本の食品ロス問題の現状やこれからの課題についてもうかがいました。

「まず知っておいてほしいのは、国際的に見ると、日本は企業も個人も食品ロス削減のために頑張っているということ。アメリカやイギリスと比べると、日本の食品ロスは2~3割少ないというデータもあります。その中で課題を挙げるとするならば、食品ロス削減のための取り組みが“一企業”や“一個人”単位にとどまっているところ。個別の取り組みだけでは、できることにどうしても限界があると思っています。

かつての日本では、畑でたくさん収穫した野菜を近所の人に分けたり、もらったりするような文化や習慣がありました。個人でも企業でも、このように人と人の関係性やコミュニケーションの中で食品ロスを減らすための方法を、SNSを使うなど、今の時代に合ったやり方で実践していければ良いのではと感じています」

コロナ禍で、家庭内の食品ロスが減少傾向に

現在コロナウイルスの影響で、私たちの食生活にさまざまな変化が起きています。食品ロス問題においても、何か変化は起こっているのでしょうか。

「実はこのコロナ禍で、家庭内の食品ロスが減っているというデータがあります。家で過ごす時間が増えたことで、何を食べるかじっくり考えたり、丁寧に調理をしたり、時間をかけて食事をしたり……より真剣に“食”と向き合うようになったという人も多いのではないでしょうか。また、家族や近しい相手と少人数で食事をする機会が増え、身近な人とのコミュニケーションに、再びスポットが当たるようにもなりました。このように、食べ物に関する関心が高まったり、一緒に食事をする人への愛情や心遣いの気持ちが強くなったりしたことが、食品ロスが減った要因ではないかと、私は考えています。

一方、外食店は、時短営業を余儀なくされ、テイクアウトに対応する店などが一気に増えました。その影響もあってプラスチック容器包装が増加しているのは、マイナス面だと言えます。しかし、プラスの変化として挙げた『時間をかけて食と向き合うこと』が定着すれば、コロナウイルスが収束したのちの外食産業にも、良い影響を与えるのではないかと期待しています」

食品ロス削減のために、今私たちができることは?

食品ロスの現状を踏まえ、私たちが今、できることは何なのでしょうか? さまざまなアプローチ方法を教えてもらいました。

1.「買いすぎ」を防ぐ

買い物するときに、必要以上に買ってしまったり、家にまだあるものを買ってしまったりした経験は誰にでもあるはず。少しの心がけで、そんな“買いすぎ”を防ぐことができます。

「その日の商品の値段や自分自身の気分によって、食べ物の消費行動は大きく変化します。このことをあらかじめ自覚しておくことで、無駄な買い物を減らすことができるはずです。さらに『2日以内に食べるものだけを購入する』などルールを決め、こまめに買い物に行くようにするのもおすすめ。また、家では食材をできるだけ一か所にまとめて保存し、何がどのくらいあるのかを把握しておくようにしましょう」

2. いつもより少し「良いもの」を買う

野菜や果物など、いつも買っているものより少し値段の高い“良いもの”を買ってみることも、私たちにできることの一つ。「食品ロスの削減だけでなく、生活を豊かにすることにもつながります」と小林さんは言います。

「良いものを買うと、より『大切に食べよう』という気持ちになりますよね。食べ物を大切に扱うことを習慣化できれば、食品ロスの削減にもつながります。月に1回などできる範囲でいいので、自分へのご褒美のような感覚で、ぜひ良いものを買ってみてください。“良い食材”や“良い食事”に出会えるチャンスにもなるので、一石二鳥ですよ!」

3. アプリやサービスを利用する

現在、増えてきているフードシェアリングのアプリやサービス。商品をお得にゲットできたり、売り上げが寄付されたり、さまざまなものがあるので、自分に合ったものを探して活用してみてください。

・近所のお店で余剰食品がないかをチェック!

「TABETE」
無料
・Android https://play.google.com/store/apps/details?id=me.tabete.tabete&hl=ja
・iOS https://apps.apple.com/jp/app/tabete/id1392919676
TABETEは、店頭で売り切ることが難しい食品をお得に購入できるフードシェアリングサービスです。使い方はとても簡単。まずはアプリをダウンロードし、近くのお店で余った商品がないかを探します。食べたい商品が見つかったら、その場でクレジットカード決済、あとは指定の時間にお店で受け取るだけ! パンやお惣菜、キャンセルが出てしまった食事など、さまざまな食べ物を購入することができますよ。

・メーカーが参加する余剰食品のショッピングサイト

KURADASHI
https://www.kuradashi.jp/
KURADASHIは、食品ロス削減に賛同するメーカーが協賛価格で提供したものを、お得に販売する社会貢献型ショッピングサイト。食品だけでなく、日用品や雑貨なども扱っており、ロスを出したくないメーカーと、安く購入したい消費者をつないでいます。さらに売り上げの1~5%を社会貢献活動団体に寄付していることも特徴です。

「上記のアプリはもちろん、LINEやFacebookで『余っているから取りに来て!』と友人に呼びかけるだけでも、食品ロス削減のための一歩になります。ぜひできることから気軽に始めてみてください」

4. おすそ分けし合える仲間をつくる

「食品ロスで捨てられる食べ物は、あまりにも無駄でさみしい捨てられ方をしています」と小林さん。食品ロス問題を根本から解決するためには、「捨てられる食べ物を、人と人とのつながりの中で救うこと」が大切なことのひとつです。

「ニューヨークでは、例えばお店で食べきれなかった高級料理を持ち帰った人が、ホームレスに『どうぞ』と分け与える、というようなことがとてもクールな振る舞いだと考えられています。日本では、見知らぬ人に同じことをするのは難しいかもしれませんが、食べ物が余ったときにそれを分け合える仲間をつくっておくことはできるはず。食べ物を分けることで、相手が喜んでくれて、その人との関係を深めることができる、それってすごく幸せなことだと思いませんか?」

「私は、ただ食品ロスを0にすることが、最終的な目標ではないと思っています。ゴールにすべきなのは、食品ロスを減らすことをきっかけに、『自分たちが幸せになること』ではないでしょうか。その方法を考えて実現させていくことができれば、自然と食品ロスは減っていくはずです」

食品ロスは、誰にとっても身近で大切な問題。だからこそ、ぜひ“仲間”をつくって一緒にアクションを起こし、自分自身の豊かな生活にもつなげていきましょう。


Profile

愛知工業大学経営学部教授 / 小林富雄
生鮮農産物商社、民間シンクタンクを経て、2015年から同大准教授、2017年度からは同大教授として、食品サプライチェーンや食品ロスを専門に研究。ドギーバッグ普及委員会理事長、2019年からは内閣府の食品ロス削減推進会議委員なども務めている。

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