最近ちょこちょこ耳にする「ミューズリー」。ミューズリーはシリアルの一種で、イギリスやドイツ、イタリアなど、ヨーロッパでは今大人気の食べもの。じつはこれ、スイスが発祥なんです。
そんなミューズリーの本場、スイスから最新情報をお届けします!
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ミューズリーは、オート麦(オートミール)をメインに、ほかの穀物やナッツ、ドライフルーツなどが使用されていて、ビタミンB1、B2、B6、マグネシウムや亜鉛などのミネラル、食物繊維といった栄養素が一度にとれるため、とても人気があります。
考案したのは、医師のマックス・ビルヒャー・ベンナー氏。肉類が重要な栄養源だと考えられていた約120年前に、ベンナー氏は加工食品よりもローフードが栄養的にすぐれていると考え、ミューズリー(ビルヒャーミューズリー)を「リンゴダイエット食」として療養所の患者の治療にとり入れました。
その後、スイス国内で徐々に広まり、今に至ります。現在、「ビルヒャーミューズリー」という名前でスイスやヨーロッパで販売されているシリアルやヨーグルトは、主に下記のレシピとほとんど同じか、近いものになっています。
【ビルヒャーミューズリー】(2人分:1人分280kcal)
<材料>
・オートミール…20g
・水…50ml
・リンゴ…1個
・レモン汁…7.5g
・コンデンスミルク…100ml
・粉末ヘーゼルナッツ…15g
<作り方>
①オートミールをひと晩、水に浸しておく。
②リンゴを皮ごとする。
③①、②と残りの材料をすべて混ぜる。
ミューズリーは、スイスでは老若男女問わず日常的に食べられています。自分で具材をお好みで混ぜて食べるほか、コンビニやパン屋、製菓店などでも手軽に購入でき、カフェでは定番メニューとして提供しているところもあります。まさに、“国民食”といっても過言ではありません。
スイス政府が国民の朝食の実態を調査したところ(Schweizer Ernährungsbulletin 2019)、次のような結果になりました。
●パン類:パン、バター、甘いスプレッド…29%
●ビルヒャーミューズリー:ミューズリー、ヨーグルト、ナッツ、果物…27%
●加糖したシリアル:コーンフレークやグラノーラなど…23%
●塩味系:ソーセージやチーズ…21%
※18~75歳が回答
なんと、27%の人がビルヒャーミューズリーと回答。4人に1人が朝食にとり入れていることになります。
ちなみに、上記の回答の中にあるグラノーラはアメリカが発祥で、成分はミューズリーとほとんど同じですが、唯一違うのは、グラノーラはオートミールなどを加糖してオーブンで焼いてあるところ。加熱処理をすることにより歯ごたえがあり、スイスでは「サクサクしたミューズリー」という名前でも売られています。
ミューズリーが多くの人たちに支持される理由のひとつは、なんといっても種類の豊富さ! スーパーには選ぶのを迷ってしまうほど味の種類が豊富で、ミューズリーのみを扱う専門店まであるほど。チューリヒにある専門店『マイミューズリー』は、ドイツ発のフランチャイズ店なのですが、とっても種類が豊富で人気があります(スイスにも工場あり)。特に、オーガニック素材を使用した品質へのこだわりと、カラフルなパッケージデザインが支持されているようです。大豆フレークを混ぜてプロテイン量を増やしたミューズリーや「アナと雪の女王2」をイメージしたミューズリーもあり、うまくトレンドも入れつつ、つねに進化させています。最近同店でおすすめなのは「脳フィット」味なのだとか。オート麦、小麦、キヌア、ヒマワリの種、アプリコット、サワーチェリー、ピスタチオなどをミックスしたもので、100g中に鉄分を2.9mg含み、認知機能の働きを促進し、集中力をアップさせたり、疲れにくくさせたりするのをサポートしてくれるそうです。現在コロナ禍でテレワーク疲れの人たちが多いので、とり入れてみるのもいいかもしれませんね。
また、最近ではスイス航空(スイス・インターナショナル・エアライン)でもミューズリーが提供されるように。今春から、チューリヒ発着とジュネーブ発着の短・中距離路線の機内で、エコノミークラスの軽食に老舗製菓店『シュプルングリ』のビルヒャーミューズリーが登場(ただし有料)。シュプルングリのビルヒャーミューズリーは、4年前にテレビの消費者情報番組で、専門家たちがビルヒャーミューズリーのヨーグルト11品を食べ比べ、1位に選ばれた逸品です。
このように、ミューズリーはスイス国民と密接な関係があり、まさに“国民食”ともいえる代表的な食べものになっています。
日本でもこのミューズリーが徐々に広まりつつあり、種類も増えているようなので、ご興味のある方は試してみてくださいね!
写真・文/岩澤里美