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自分に合うものがわからない…と思ったら、まずは一歩踏み出すこと。行動したからこそ、咲く花がある~鈴木明子さん×Mizukiさん対談3~
ダイエット・ビューティ・フィットネス・ヘルスケア分野で活躍するオピニオンリーダーとFYTTEが選定した「2022年最注目の10のトレンドワード」のうちのひとつ、「ポジティブナチュラル」。美の基準が多様化してきた昨今、自分の個性を生かした美しさを探求する動きがあります。
過去に「摂食障害」という病を患った経験を持つ、プロフィギュアスケーターの鈴木明子さんと、人気ブロガーで料理家のMizukiさん。前回は、健やかな心身を保つために、普段から心がけていることについて話を伺いました。今回は、やりたいことを成し遂げるための秘訣、なりたい自分になるためのヒントなどを教えていただきました!
Contents 目次
勇気を出して一歩踏み出すと花開く可能性も
――鈴木さんにはフィギュアスケート、Mizukiさんにはお料理といった打ち込めるものがあって、それぞれのフィールドで輝いていらっしゃいますが、そもそも打ち込めるものがない人、もしくは模索中の人はどうしたらいいでしょうか。
Mizukiさん:まずは、何ごともやってみないとわからないってところはありますよね。
鈴木明子さん:そうですね。「仕事が忙しいから」「この年齢で今からやるのも…」「こんなことをやったら周りからバカにされそう…」など、やらない理由を自分で考えては、挑戦することをあきらめてしまっている人って結構多い気がします。
Mizukiさん:実は私も、あれこれ考えてしまって、新しいことに挑戦するのはとてもニガテで…(笑)。
鈴木明子さん:私も同じです(笑)。引退してから、スケート以外のお仕事の依頼をいただいたときに、「やったことないから無理です」って言ったことがあって。そしたら、「やったことないのに、何で無理ってわかるの?」って言われて、確かにそうだな、と思い直したんです。
少し続けてみて本当に自分に合わないと感じたらやめればいいし、合えばそのままやればいい。その断りかけた仕事が、今いちばんといっていいほどやりがいを感じている講演の仕事なんですけど、始めた頃は、言葉を使って表現するということに慣れなくて、講演後の帰りの新幹線の中では、ああ言えばよかった、なぜうまくできなかったんだろう…という反省してばかり。しまいには吐き気がしてきて炭酸水しか飲めなかったことも(苦笑)。でも、いつしかやりがいのあるものに変わって、今はあのときやってよかったと思っています。
そういうこともあるので、まずは、あまり重く考えすぎずに、一歩踏み出してみることをおすすめしたいです。講演でもやりたいことが見つからない、といった質問や相談を受けるのですが、向こう側から親切に「こんなのがありますけど、どうですか?」って(笑)、やって来てくれるわけじゃない、だから探してみましょうとお伝えしています。
昔、自分は何をしてみたかったのか。思い残していることはないか。素敵だと思えるものはないか。実際に今の自分ができるかどうかは別として、心が動くものかどうかで考えてみるのもひとつの手だと思います。
あとは、生活環境や会う人がいつも同じという人は、少し変えてみるだけでも新たな発見や興味が生まれることもあるので、試してみていただきたいですね。
Mizukiさん:おっしゃる通り、意識や行動範囲を少し変えるだけでも、全然変わってくることってありますよね。また、なんとなくやってみたことが、突然花開くことも。その一歩を踏み出してやりはじめたことをいかに継続できるかということが大事になってくるのかな、と思います。私なんて、まさにそれですから(笑)。
ブログを始めた約10年前は、今ほどSNSが盛んではなかったので、傍から見たら、1日中スマホを見て遊んでいる人にすぎなかったと思います。冷ややかな視線を感じたこともあって、自分でも恥ずかしいと感じたこともありましたし、ニートのような生活を送っていて親には申し訳ないという気持ちもありました。
その一方で、やっぱり「もう、私にはコレしかない!」という強い覚悟があったので、続けていたら花が開いたというか、今のこのお料理の仕事になったんです。
――今回の対談もまさにそうですよね。お互いに会いたいと思っている、というような話をたまたま耳にして…。
鈴木明子さん:はい。一歩勇気を出して、DMを送ったりすると…(笑)。
Mizukiさん:本当に何が起こるかわからない(笑)。
――やりたいことをたぐり寄せるためにも、まずは一歩を踏み出す。そして、それを継続させていくことが大切だと。
Mizukiさん:それは本当に実感しています。お料理とブログを続けていって、読者の方がどんどん増えていって、出版に至ったときには、ようやく「そういうことをやっていたんだ」って周りの人たちが知ってくれて、がんばってきてよかったと思いました。それこそ、今はSNS で自由に発信したり、表現できたりするので、いろんなチャンスをつかみやすくなりましたよね。
時には自分を信じ、時には誰かに頼ってみる
鈴木明子さん:あとは、Mizukiさんのように、自分にはこれしかないって思うこともとても大切だと思います。ほかに合うものがあるのかもしれないけれども、でも「これしかない」と信じて突き進んでいくとそれがものになることもある。ひとつのことを長く続けるのはカンタンではなくて、途中でやめてしまう人がいるから、芽が出てくることもありますし。
私の場合も、オリンピックに出られると思っていた人は正直少なかったと思うんですけど、周りにいる人たちがずっと「オリンピックにいけるから」と言って、信じていてくれたことで、努力し続けることができました。本当に出場できると思っていたかはわかりませんけど(笑)、みんながあきらめていたら、可能性のフタは閉じられてしまっていたと思うんです。もし誰かが、「難しいから自分には無理」っていうことがあったら、私もその人があきらめなくてすむような声がけをしたいと思っています。
Mizukiさん:確かに周りの人のサポートも大切ですよね。真面目な人ほど、自分ひとりですべてをやろうとしてしまいがちですが、たまには誰かに頼ってもいいと思います。鈴木さんが自書で、誰かが大丈夫だと言ってくれたから人はこんなにも強くなれるんです、っていうこと書いていらして、私もまったく同じことを本に書いていてとても共感したのですが、大丈夫って言ってもらえると、肯定してもらえる感じがしてすごく安心できる気がします。声をかけてくれる人が周りにいるだけでもだいぶ心強い。
鈴木明子さん:「大丈夫」っていう言葉をかけてもらっただけで、強くなれましたし、心がとてもラクになりました。
世間では、「アスリート=強い」というイメージがあると思うんですけど、アスリートは超人ではなく、究極に自分を追い込める力があるだけで、普通に繊細な部分も持ち合わせていますし、一歩踏み外せばボロボロと崩れてしまうようなもろい部分もある。テニスの大坂なおみ選手の件や、東京オリンピック・女子体操でのアメリカ代表シモーン・バイルス選手の欠場の件で、心の健康の問題が浮き彫りになり、ようやくメンタルヘルスが注目されるようになってきたように思います。そういった意味でも、この対談企画もそうですけど、メンタルヘルスが注目されるのは非常にいいことだと思います。
極端なことはせず、ナチュラルに
――今回のトレンドキーワードを考えるにあたり、トレーナーの方や管理栄養士の方などの専門家の方から「原点回帰」の流れが起きているという声をよく聞きました。最近のダイエットというと、以前のように極端なダイエット法は流行っていなくて、トレーニングをしっかり行い、バランスよく栄養もとって、健康的に各々が理想とするボディを目指す方向に変わってきています。その流れについて、お二人はどう思われますか?
鈴木明子さん:トレーニングは、次から次へと新しい理論が出てきて、めまぐるしく変わっていますよね。最先端すぎてよくわからないものもあるので、「原点回帰」の流れで、基本的なところに立ち戻れるのは、再確認する意味でもいいのかもしれないですね。
Mizukiさん:私はもう、ダイエットそのものが怖くて。ダイエットをしている人って多いですよね。でも、そのダイエットがきっかけで病気になる人もいるので、なんのためのダイエットなのかというのをもう一度考え直すという点で「原点回帰」の傾向にあるというのはすごくいいことだと思います。自分の経験も踏まえてお伝えさせていただくと、極端なことはせずに、ちゃんとバランスよく栄養をとってほしいです。
――極端なことはせずに、ナチュラルに?
Mizukiさん:はい、ナチュラルに(笑)。真面目な人ほど、ストイックになってしまうんでしょうね。そうすると、やっぱり気づいたときには戻れなくなっていることもあるので…うん、本当にバランスよく。
ちゃんと食べて、ちゃんと寝る。それがいちばん大事
――最後に、今年もしくは今後、やってみたいことや目標がありましたら、ぜひ教えてください!
鈴木明子さん:私は、とにかく今の状態を継続することですね。
Mizukiさん:私も同じです。継続することって意外と難しいんですよね。心も体も元気じゃないとできないので、去年と同じことを今年もできたらいいな、と。
――その継続するために、やっていることや心がけていることはありますか?
Mizukiさん:今年の抱負で、「このまま過ごしたい」ってことをブログに書かせていただいたのですが、維持するためには、ちゃんと食べて、ちゃんと寝ないとできないので、今年はその2つをもう少しちゃんとしたいと思います(笑)。
鈴木明子さん:わかります! その2つは、本当に基本的なことですからね。
Mizukiさん:基本的なことで、誰にでもできることだと思うんですけどね(笑)。
鈴木明子さん:でも、少し気を抜くと無理してしまいますよね。私の場合は、すぐに睡眠を削ってしまう(笑)。そのためにも、常に“自衛する”ことを意識していかないと。とにかく、ちゃんと食べて寝る。
Mizukiさん:ちゃんと食べて寝る。周りできちんとしている人ほど、きちんと食べて、しっかり寝ている気がします。特に、忙しい人ほどできている人が多いかも。
鈴木明子さん:特に…我々、年齢的なものもありますよね(笑)。
Mizukiさん:そう! 年齢も(笑)
鈴木明子さん:20代の頃は、睡眠を削って多少無理してもなんとかなりましたけど。無理をすると、すぐに肌に出ますよね…(笑)。
現状維持のほかに、やりたいこととしては、コロナがどうなるのかわからないのですが、やっぱり講演の活動をしていきたいと思っています。私が話す内容は、おそらくすでにいろんな本に山ほど書かれているようなことだとは思うのですが、自分の経験をもとにリアルに伝えたいっていうのがあって。それが少しでも誰かの役に立てたらいいな、という思いがありますし、それこそが自分のモチベーションにもなっています。
あ、あともうひとつ! 年齢的に体も変わってくるので、今年はもっと筋トレをがんばりたいと思います!
Mizukiさん:すごい!
鈴木明子さん:さすがに20代の頃の体を目指しても残念ながら戻れないので(笑)、筋力をアップさせて、今の自分にとっての“いい体”を目指します!
――お二人とも、自分らしく“いい状態”でありたいという、まさに今年のトレンドキーワード「ポジティブナチュラル」を体現されているようで素敵です!
鈴木明子
1985年生まれ、愛知県出身。6歳からスケートを始め、高校1年のときに全日本選手権で4位となり注目を集める。大学入学後に摂食障害を患い、休養を経て2004/05シーズンに復帰。10年バンクーバー五輪で8位に入賞し、多くの感動を呼んだ。11年GPファイナル銀メダル、2012年世界選手権銅メダル、13年全日本選手権では悲願の初優勝を果たし、ソチ五輪では2大会連続となる8位入賞。現在は、プロフィギュアスケーターとして活躍する傍ら、解説や振付家、講演活動を行うなど活動の場を広げている。
Mizuki
1986年生まれ、和歌山県出身。高校生で摂食障害を患い、23歳で体重が23kgに。20代半ばで病を乗り越えてから料理家の道へ。調理師免許のほか、スイーツコンシェルジュの資格をもち、月間300万PVを誇る人気ブロガー。身近な食材で誰でも作れる、簡単でおいしく、華やかなレシピに定評がある。企業のレシピ開発、雑誌、テレビ、WEBメディアで活動中。レシピブログアワードを2016年から3年連続で総合グランプリ受賞。◎LINEブログ「Mizukiオフィシャルブログ ~奇跡のキッチン」
最新刊『今日のごはん、これに決まり! Mizukiのレシピノート決定版! 500品』(学研プラス)は11万部と大ヒット中。
写真/我妻慶一 取材・文/鈴木啓子