ここ数年、生活が一変し、心に余計な心配や不安を感じるようになったという人が増えています。起こりそうもない現実に対して、あれこれと不安になっているのなら、心を整理してみるときかもしれません。今回は、NY在住、禅とマインドフルネスの橋渡し的存在として活動する臨済宗妙心寺派佛母寺住職、松原正樹さんの『心配ごとや不安が消える 「心の整理術」を1冊にまとめてみた』から心を安定させる考え方をご紹介します。
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感情や思考にとらわれず、“ありのままに”
人間は不安とは無縁でいられない生き物ですが、その感情にとらわれれば、“苦しみ”となってしまいます。そういうときに心に置いておきたいのが、「Let it go」。 “ありのままに”という意味です。
「感情に執着することが苦を生むので、日々湧き上がる感情に対しては“ありのままで”の姿勢がいちばんです。感情や思考が湧き上がってくるのを止めることができませんが、その感情や思考にとらわれないことが、心を安定に近い状態に保つためには必要です。そのための“ありのままで”なのです」(松原さん)
あぶくのように湧き上がってくる感情は、本来はすぐに消えてなくなるもの。そこに執着せず、ありのままに自然に流しましょう。
「最初は無理やりでも、習慣にしていくうちにこれが自分の思考の癖として定着していきます。体の筋トレと一緒で、習慣化させることが大事です。そうすることで“心の免疫力”も上げていくことができます。
何が起きても動じず、他人に振り回されない生き方をしている人は、心の免疫力が高い人ともいえるでしょう。心配や不安といったネガティブな感情にとらわれそうになっても、心の免疫力がついていれば、手放すことが容易になります」
人間も森羅万象の一部
“ありのまま”を体現しているのが、庭に咲く花や小鳥たち。眺めていると、気持ちが穏やかになりますね。
「森羅万象が先生である。これを仏教では“法身説法”といい、森羅万象のすべてがそのまま説法であると教えています。植物に限らず、空から落ちてくる雨、小鳥のさえずり、自然界の現象に限らず、人との出会いもこの世に存在するすべてのものから私たちは気づきを得ます。森羅万象が教えであり、答えである。まるで禅問答のようですが、みなさんも庭園を眺めたりするうちに心のモヤが晴れて、清々しい気分になったというような経験がないでしょうか。どんなに弱っているときでも、人は自然から気づきをもらうことができ、自分で答えを見つけることができる。人間は森羅万象の一部であると実感できたとき、本当の安心感を抱けるのかもしれません」
心に不安があるときは、海でも山でも公園でも、自然に目を向けてみましょう。
つらいときは自分の心の様子を見つめて、そっと守っていきたいですね。不安や心配にとらわれそうになったら、こうした禅の教えを思い出してみてください。
次回は、悩みのもととなるしがらみから自由になり、ふっと心が軽くなる禅の教えをお伝えします。
参考書籍/
『心配ごとや不安が消える 「心の整理術」を1冊にまとめてみた』(アスコム)
文/庄司真紀