老いや孤独にまつわる不安、こうしたことはどうとらえるか、心模様しだいで大きく変わります。何があってもよいも悪いもないと思うと自然と心も落ち着くのかもしれません。今回は、NY在住、禅とマインドフルネスの橋渡し的存在として活動する臨済宗妙心寺派佛母寺住職、松原正樹さんの『心配ごとや不安が消える 「心の整理術」を1冊にまとめてみた』から、漠然とした将来の不安に対する禅の考え方をご紹介します。
Contents 目次
老いることのとらえ方
海外から見ると特に日本の文化は若者中心の文化といわれます。若さをもてはやすのは日本だけかもしれません。
「時を超えて、力強さと気品を備えたアンティークのように、 丹精込めて作られたものを大切にする心を私たち日本人は持っていたはず。ですが、古いものでも手入れが悪く、雑に扱ってヒビが入っているようでは価値も半減してしまいます。人間の生き方もまさしくこれと一緒で、自分をないがしろにしていれば脳も体も錆びつくでしょうし、ただ突っ走るだけでメンテナンスを怠れば体のあちこちに故障が起こります」(松原さん)
日本刺繍が美しい着物や帯、繊細な木工細工の施された戸やふすま。人生の一瞬がそんな美しい絵柄を完成させるひと針であるかのように、年齢を重ねていきたいものです。
「人の手によって生み出されたものは既製品にない表情をたずさえ、手にとるだけで作り手の心や思いが伝わってくるようです。そんな人生の積み重ねが、アンティークこそが美しいという生き方を叶えてくれるのです」
孤独は決して寂しいことではない
老いることも美しいと思えると心がラクになっていきます。同じように孤独も決して悪いことではありません。
「禅では孤独感もまた心配や不安と同じように、湧き上がる感情のひとつととらえます。つまり、自分で消していくことができるのです。孤独感の解消に必要なのはひとりの時間を大切にすること。ひとりの時間を大切にし、自分の心に聞いてみる必要があるのです。孤独という曖昧な感情の原因が何なのかわかったとき、すでに孤独はあなたの前から消え去っています」
高齢化社会となり、ニュースなどで近年取り上げられることの多い孤独死にしても、寂しいことではないのです。
「それはひとつの形態であって、そこによい悪いは無いのです。それまでどう生きたかも関係しませんし、どの人もそうした最後の縁をコントロールすることはできません。その形態にこだわるよりも、人生をまっとうしたと思えるように、生かされている今に焦点を当てて精一杯生き、あとは人生最後の縁に身をまかせましょう」
お釈迦様は“生老病死は人生の四苦”と説きましたが、それ自体が苦しいのではなく、抗い、それらをコントロールしようとすることが苦しみのもとになるという意味だそうです。そうした恐れから自由になることで気持ちがラクになりそうですね。
文/庄司真紀
参考書籍/
『心配ごとや不安が消える 「心の整理術」を1冊にまとめてみた』(アスコム)